ネット販売時のクレジットカード決済リスクについて (第1回)
チャージバック発生!
ある朝、セール最終日の前日夜の注文に対し、箱詰め、出荷作業をしているところに電話が鳴った。クレジットカード会社より一昨日の注文についての問合せだった。
受注管理画面からその注文内容を調べたところ、
商品:並行輸入ブランドものバッグ
数量:2個
金額(税込):145,000円
注文者:のせせ もく
発送先:東京都新宿区△△3-2-1-KCR12345678
電話番号:090-●●●●-●●●●
少し不自然な氏名と住所ではあるが、宅配業者から連絡がないところをみると無事に商品は届けられたものと思われる。
このような注文は誰も気に留めることなく、日々の業務の中で当日か翌日のうちに発送が完了している。お客様に対しては、即日発送を謳っていることから、とにかく「スピード命」なのだ。
クレジット会社へ注文情報を伝達したところ、クレジットカード所有者本人の利用ではないとのことで、発送を止める用に言われたが、今更言われてもできる訳もない。とにかく宅配業者へ連絡するも、お客様に遅滞なく配達済みとの返答。念のために注文者へ連絡してみたが、電話口ではパケット通信専用とのアナウンスが流れるだけで、今後連絡を取ることは困難ということがわかっただけであった。
嫌な予感が的中。他人のクレジットカードを使った不正注文だ。カード会社へ送付した売上は「チャージバック」というシステマチックな事務手続きにより、売り上げたはずの金額は入金されない。数年前にも「チャージバック」は一度あったが、それ以来起こっていなかったので完全に油断していた。
自信を持って仕入れた商品が即日で売れたことに自画自賛だったはずが、これでは全く意味がない。
今頃はどこかのブランドショップかオークションで売られていることだろう。
過去に起こった時にも思ったが、カード会社がもっと早く連絡をくれれば、いや前回は注文後二か月経って連絡があったことを考えると、カード会社の努力を感じなくもないが、それでも即日発送が当たり前の昨今、もっと早く対応してくれないと困る。
そもそもクレジットの承認依頼の時点で「OK」ではなく、「NG」をだしてくれればいいのに、なんのためにカード記載の氏名を入力させているのか全く意味がわからない。
ふつふつと湧きあがるこの怒りをどこにぶつけたらいいのか。今後もチャージバック発生時には損失として引き当てていくしかなく、結果、コストを価格へ転嫁せざるを得ず、厳しい競争の中、お客様に選ばれる店としてやっていけるのか。漠然とした不安を抱えるのみであった。
ネットショップでの不正利用によるチャージバック動向
このようなクレジットの不正利用によるチャージバックはここ1~2年でよく聞くようになりました。
一昔前までは電化製品・PCなどを取り扱っている大手WEBサイトで起こっていましたが、最近は大手のセキュリティーレベルが上がったことも一つの要因で、セキュリティーが手薄な個人レベルのWEBショップが狙われ、チャージバックが発生しているようです。
なぜこのような悪用が起こりチャージバックが発生するのでしょうか?
実は昔からクレジットカードを使った犯罪はありました。少し前までのフロードスター達(詐欺師)はクレジットカードを偽造し、盗んできたカード情報を偽造カード(生カード)へ書き込み、リアルの量販店で本人のフリをして高額商品を買い回りし、転売をしてきたようです。
近年このような犯罪は、カード業界などの対策が奏効し減少してきましたが、フロードスター達はリアルからネットへ漁場を変更してきているようです。
実際に、日本クレジット協会が発表しているクレジットカード不正使用被害額(以下)によると、偽造カード被害(リアル)よりも番号盗用被害(ネット)のほうが多くなっています。
平成26年(1~12月)のクレジットカード不正使用被害額105.9億円、対前年比134.7%
<105.9億円の内訳>
18.4億円(17.4%):偽造カード被害額
59.7億円(56.4%):番号盗用※被害額
27.8億円(26.2%):その他不正使用被害額
※「番号盗用」偽造カード等を作成することなく不正に取得されたカード情報のみで不正使用される手口
出典元:日本クレジット協会
http://www.j-credit.or.jp/information/statistics/download/inv_05_150331.pdf
なぜネットでの不正が増えているのか?今後はどうなっていくのか?どのようなネットショップが狙われてしまうのか?フロードスター達から自分のネットショップを守る手立てはないものか?
次回以降は実際に発生している不正事例なども紹介しつつ、不正対策として実践的で使える情報をお伝えして参りたいと思います。