消費者を理解してパーソナライズな目利きを実現するための各種のアプローチ

山崎 徳之 [PR]

山崎徳之のコラムはこちら
コラム#1:ECの役割 ー パーソナライズドな商品目利きの実現
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6293/

コラム#3:需要予測 - 消費者に情報提供の協力を促す2つのパターン
http://ecnomikata.com/ecnews/marketing/6433/

マーケティングの本質は消費者理解

前回の記事で、リテールの役目は消費者の立場にたった商品目利きであり、そのためにはパーソナライズが重要ということを書きました。振り返ってみると、O2O、ビッグデータ、オムニチャネル、マーケティングオートメーションとECやネット広告をターゲットにしたキーワードはどんどん出てきますが、結局のところこれらはその本質として、消費者を理解して影響を与える、つまりいかにパーソナライズなアクションを消費者にむけて行うかということを、言葉や形を変えて言っているに過ぎません。

そういう意味ではパーソナライズというワード自体もバズワードだったことがあるので、より本質的に言えば「消費者ごとに最適なマーケティングをする」ということです。これをうまく表現するワードがないこともあり、またテーマが壮大すぎることもあって、その一部をピックアップした「オムニチャネル」とか「マーケティングオートメーション」というカタカナワードが次々に登場してはバズワードになるということを繰り返しているのだと思います。

消費者感情で異なるマーチャントの立ち位置

さてどうやって消費者を理解するかですが、課題について考えるときはまず究極のケースをイメージするのが良いアプローチです。理想は消費者ごとに十分な時間をとって、消費者にも全面的に協力してもらい、顕在化している個々の消費者の趣味嗜好や需要などだけではなく、潜在的な要素までも把握するのが一番です。

例えばすごく高い買い物、家を建てたりだとか車を買ったりだとか、そういう場合には消費者も真剣そのものですから、マーチャント側にそうした情報を伝えることに積極的で、むしろマーチャント側の理解が足りているのかという不安を持ったりもします。

「マーチャントが消費者を理解すること」に対して、場合によってはマーチャントより消費者のほうが真剣という、モチベーションの高さが逆転しているケースもままあると思います。高額な家電、冷蔵庫やエアコン、洗濯機などでも、多少はそういう傾向はあるでしょう。また買い物ではないですが、幼稚園の選択とか大きな手術をする場合の病院の選択といった、人生に大きな影響を及ぼす場合でも同じことがいえます。

余談ですが、売り手側のモチベーションが高い市場を売り手市場、買い手側のモチベーションが高い市場を買い手市場と呼びます。オムニチャネルにしてもマーケティングオートメーションにしても、買い手市場、つまり買い手側のモチベーションが素晴らしく高いのであれば、マーケティングとしてはそれに真摯に向きあえばそれなりに良いマーケティング、ひいてはコンバージョンにたどり着くことが出来ます。

その場合マーチャントがするべきことは、消費者の潜在的な要素、本人が気づいていなかったり間違った認識を持っている部分について、気付きを与えてあげることです。ただ売り手市場の場合、消費者がそこまで自身に対するマーケティングのパーソナライズについて真剣ではない場合は、これはマーチャントが頑張らなければなりません。

夕食の食材を選ぶときに、いちいち「私は◯◯が好きで、家族は△△が好きで、世帯年収はこのくらいで、健康志向が高くて」というような情報提供をスーパーマーケットに対して熱心に行うような消費者はいないでしょう。

需要把握に有効な2つのアプローチ

通常は潜在的な需要を発見するどころか、顕在化している需要を正しく見極めなければなりません。そのためにはおおまかにいって2つのアプローチがあり、一つは消費者になるべく協力してもらうこと、もう一つは消費者から提供されるデータを最大限に活用するというものです。

前者はUIやUXであり、後者はビッグデータやオムニチャネル(の一部)です。ビッグデータは消費者が残す痕跡を残らずかき集めて、それらを正しく分析しようという、いわば入力側に対するソリューションです。オムニチャネルは消費者とマーチャントのあらゆる接点を活用して、消費者を正しく理解しようという入力側と、その成果をあらゆるポイントで消費者にフィードバックしようという出力側の両方のソリューションです。

マーケティングオートメーションは、消費者を正しく理解したら、それを活用して最適化されたマーケティングを行おうという出力側のソリューションです。消費者に協力してもらうには、消費者から提供されるデータを最大限に活用するには、という2つの分類と、消費者の顕在化している需要を把握する、消費者も自覚していない潜在的な需要を発見するという、この2x2の4つの分類についてはそれぞれ取り組むべきアプローチも異なってきます。

次回はこの4つについて、それぞれ個別に解説していきたいと思います。


著者

山崎 徳之 (Noriyuki Yamazaki )

青山学院大学卒業後、アスキー、So-netなどでネットワーク・サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータホテルを構築・運営の後、海外においてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現株式会社ゼロスタート)を設立、代表取締役就任(現任)。EC向け商品検索やレコメンドエンジンの「ZERO ZONE」シリーズを開発・販売している。

http://zero-start.jp/