劇的に変化?実践、売れるアパレル商品の撮影のコツ

ECのミカタ編集部

右がf.f.b.株式会社 木村 麗さん、そしてkhaju ルミネエスト新宿店のスタッフの方々

商品購入のきっかけ、画像の重要性

 あなたは、顧客がアパレル商品を購入するきっかけを作るにあたって、何が一番重要だと感じるだろうか。広告?サイトデザイン?或いは、かご落ち率を最大限抑えたショッピングカート?

 ここに気になる調査がある。それは、Criteo S.A.(以下、Criteo)が、実施した「オンライン通販に関する実態調査」である。全国のオンライン通販利用経験のある20~50代男女600名に「直近1ヶ月のオンラインショッピングの利用頻度」を質問。すると「1ヶ月に1回」が48.2%、「2~3週間に1回」が22.3%、「1週間に1回」が17.5%、「毎日」が1.3%、「まったくしない」が10.7%という回答になった。

 その中で特に、Instagramを1週間に1回以上利用するヘビーユーザー92名に関しては、「1ヶ月に1回」が45.2%、「2~3週間に1回」が14.5%、「1週間に1回」が25.8%、「毎日」が3.2%、「まったくしない」が11.3%という回答。結果、全体平均と比べて「1週間に1回」「毎日」と回答した人の割合が10.2%も高くなった。つまり、Instagramのヘビーユーザーは、オンラインショッピングの常連だったのだ。

 Instagramとは、画像・動画を中心とした、視覚的に楽しむSNSである。即ち、Instagramのユーザーが、ECを利用する際は、商品写真を重視して、商品を選んでいる可能性が高い。そう、顧客が商品購入へ至るきっかけの重要な要素の1つとして「商品写真」が挙げられるのだ。

 また、ECは実店舗と違って購入を判断する材料が少ない。実店舗は自分の目で商品を見て、触れて肌で感じ、スタッフに商品詳細を聞き、判断することができる。しかしECとなると、商品詳細説明は文章、視覚的情報は画像のみなのだ。

商品撮影の現場に、実際に行ってみた!

商品撮影の現場に、実際に行ってみた!

 では、商品を売るための写真は、どのように作るのか。ヴィジュアルアドバイザー(Visual Advisor)として活躍するf.f.b.株式会社 木村麗さんにお伺いした。木村さんは、アパレル+ITの領域で得た長年の経験と実績に基づいて、SNSを活用したオンラインマーケティングやブランディングをサポートしている。

 木村さんは、アパレルセレクトショップ「SHIPS」の女性向けラインである「Khaju(カージュ) ルミネエスト新宿店」の実店舗にて、SNS用商品写真の撮影のアドバイスを行っている。今回、その現場に記者も同行させていただいた。

 木村さんが、Khajuの画像アドバイスを始めたのは、約1年半前。スタッフの方の話によると、SHIPS系列のブログにて元々15店舗中8~10位を行き来していたが、アドバイスを受けてからは54店舗(全56店舗だが、ブログを運営しているのは54店舗)中、2位になったとのこと。商品画像の変化は、これほどまでにブログに影響を与えたのだ。

 画像の魅せ方を変えた効果は、ブログの順位だけではない。Khaju ルミネエスト新宿店が運営しているブログやInstagramを見て、掲載されていた商品を購入するために来店する顧客が増えたのだ。画像一つだけで、わざわざ実店舗まで出向いている。一方でECは、時間を問わず、購入ボタン一つで手軽に購入することができるため、顧客が「購入したい」と思ったら、購入完了までは実店舗よりもハードルが低いのではないだろうか。

 ではここからは木村さんのアドバイスを見ながら、売れる商品写真の撮影の仕方をBefore・Afterを交えてご説明していく。

 まずはこちら。

【アパレル】ハット写真Before

【アパレル】ハット写真Before

 女性用のハットだ。マネキンを使いながら、小物と合わせて撮影されている。全体的な印象としては、シック。しかし写真全体が暗いため、商品に影が掛かってしまっている。

 そして木村さんが撮影した写真がこちら。
 

【アパレル】ハット写真After

【アパレル】ハット写真After

 白い壁を背景として、全体的に明るく撮影されている。印象としては、爽やかだ。商品一つ一つの魅力も引き出されており、色や形もわかりやすい。

次のページにて、小物・アクセサリーと、人物写真の撮影の仕方をご紹介。

【アパレル】アクセサリー・小物写真Before

【アパレル】アクセサリー・小物写真Before

 お次は、こちら。

 小物アクセサリーの写真だ。小物一つとしては魅力はあるものの、大量に重ね着けしてあるため、どれを打ち出したいのかがわかりにくい。また、こちらの写真も暗い写りのため、商品の全体像が想像しにくくなっている。

 そして木村さんが撮影した写真がこちら。

【アパレル】アクセサリー・小物写真After

【アパレル】アクセサリー・小物写真After

 小物はいくつか写っているものの、個々が映えている。また、全体も明るくなっており、商品が見やすい。そしてスッキリしているため、着用イメージも湧きやすい。

 また、モデル撮影についても、コツがある。

 服の良さを引き出すために、例えば柔らかい素材のスカートだったら、わざと手に取って動きを出す。写真のようにモデルの髪が長い場合は、髪にも動きを出してみたり、全身で表現することが有意なのだ。

 木村さんが撮影した写真には、いくつかの共通点があるように感じる。その共通点、撮影の際のコツを木村さんに伺うと、「撮影の仕方に、決まりがあるわけではありません。しかし撮影場所の限られた範囲内で、いかにベストな撮影スポットを見つけ出し、素材を生かすかが重要なのです。そして、その素材を最大限活かして、商品の魅力を引き出します。」と答えていただいた。

 なるべく光が強い場所や、明るい色の壁を使い、写真を爽やかに見せる。そして小物や服も、着用イメージが着くように、動きを出した状態で撮影するのだ。

主役は商品、魅力を最大限引き出す

 今回、記者が木村さんに同行させていただいて、感じたことがある。それは、木村さんが撮る写真は、単に商品写真ではなく、商品の魅力を最大限引き出している写真であるということ。そして商品を“魅せる”写真は、もはや作品であるということ。写真一つにしても、侮れないのだ。

 ECサイトの写真においては、単に見栄えがいいお洒落な画像を作る、というよりも、商品を魅せるための写真を撮影することがポイント。なぜならECサイトは、最終的に商品を直接購入に繋げる必要があるから。木村さんの商品写真撮影のテクニックは、ECサイトにおいても学ぶところがあるだろう。


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