流通菓子市場が前年比102.0% 大人の消費がカギに【矢野経済研究所調べ】

ECのミカタ編集部

 今回は、矢野経済研究所が実施した「流通菓子に関する調査」を基に、菓子市場について考えていきたいと思う。なお、流通菓子とは、量販店やコンビニエンスストアなどの小売流通チャネルで販売される菓子類であることに注意をしていただきたい。ECに関する調査ではないが、消費者の動向は、食品通販事業者にとって有益な情報になるだろう。

好調に推移する流通菓子市場

好調に推移する流通菓子市場

 矢野経済研究所によると、2015年度の流通菓子市場規模は、前年比102.0%の1兆9841億円の見込みで、2年連続で拡大する見通しということだ。2014年に消費増税があり、嗜好品である菓子の需要衰退が懸念されたが、その影響は軽微で済んだようである。

 2014年〜2015年度にかけての市場拡大の主な要因としては、様々なメーカーが価格改定に踏み切りそれが順調に浸透したこと、チョコレートやナッツ類の健康効果が注目されたこと、訪日外国人によるインバウンド需要の増加などが挙げられる。いずれにしろ、市場は好調に推移しているようだ。

 また、製品カテゴリ別に流通菓子市場は次の図の通りとなる。

 特に構成比の大きいチョコレートは、カカオの含有量が多いハイカカオチョコレートをはじめとした機能性チョコレートの好調や価格改定が浸透したことが寄与した。ビスケットは、高価格帯商品が増加しているほか、朝食スタイルの多様化で食シーンが拡大していることが寄与したと考えられる。米菓も高価格帯商品が増加しているほか、家飲みの定着でおつまみ用米菓が好調に推移している。

 一方で、苦戦を強いられた輸入菓子は、円安が続いたことで価格改定を余儀なくされた輸入業者が多く、国内製造品と比較して価格の優位性が薄れたことが影響したと考えられる。

お菓子を扱うEC事業者が注目すべきは大人の消費

 ここまで、流通菓子市場の近年の推移を見てきた。ではこの市場がさらに成長するためには、どういった点に注目していけば良いのだろうか。一般的に流通菓子は、子供のおやつに対応した商品が数多く存在するが、少子高齢化が進む中で、最近の動向としては大人をターゲットにした商品開発に菓子メーカー各社が注力していて、こうした大人消費がここ数年の流通菓子市場を下支えしているそうだ。

 こうした大人消費の取り込みを図った商品として、ロングセラー商品の素材や製法に対するこだわりを強めたプレミアム商品や、健康機能性を切り口にした商品などがここ数年人気を呼んでいる。そして、素材にこだわった製品は、売価を高めに設定でき、なおかつ価格競争になりにくいので、市場にプラスの影響を与えているのだ。こうした製品が消費者に受け入れられていることから消費者心理としても、少々割高でも味や品質が良いものを選ぶというニーズが生まれてきているという。

 流通菓子市場において大人の需要が高まっているということは、食品を扱う通販事業者にとっても見過ごせないことだろう。そもそも、お菓子というものは、ある程度決まった定番・安心の商品を消費者が購入するものなので、定番外の商品に一定のニーズはあまりなかったのかもしれない。消費者としても、定番商品をまとめ買いするためにECを利用するということも多いだろう。ゆえに、競合事業者との差をつけにくいという問題に頭を抱えることもあったのではないだろうか。なので、現在大人の需要が高まっているということに狙いを定め、プチ高級路線を打ち出してみるなど、市場の動向に適した事業展開をすることで、競合と差をつけていく必要がある。

 また、現在は苦戦を強いられている輸入菓子に注力するというのはどうだろうか。一般流通と通販の差は、実店舗を持つかどうかということである。それゆえに、ECならば定番商品をあえて取り扱わず、特定の分野の商品に注力した専門店としての展開も可能だろう。また、実店舗の運営をする必要がない分、様々な商品を取り揃えるために時間を割き、ECならではの展開をしていく必要がある。実店舗を持たないECならではの利点を活かさない手はないだろう。

 さらに、最近の動向で家飲みの増加傾向が見られるということで、お菓子と併せて酒類の事業へと拡大するのも面白いかもしれない。このように、菓子市場一つを取ってみても、他の様々な業界と密接に関係していることがわかる。自社が商品を展開している市場のみにとらわれず、常に関連する市場にも目を向ければ、新たな切り口が見えてくることもあるのだ。そして、実店舗ではなく、EC事業だからこそできる事業展開を改めて考えてみてほしい。実店舗ではできないことで差別化を図りつつ、他のEC事業とは一味違ったユニークな事業展開を行えば、自ずと結果が付いてくるはずである。


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