ヤフーショッピング広告 売上が前年同四半期比2倍超のワケ
EC店舗にヤフーの広告が歓迎される理由は・・・
早速だが、気になったデータがある。ヤフー株式会社(以下、ヤフー)は、ショッピング広告の売上高が大きく伸びていて、2015年の第一四半期が13億円だったのに対して、2016年の第一四半期は、29億円である。それは、前年同四半期比2.2倍というレベルである。勿論、利用する店舗の数や金額が増えてこそ、売上高が伸びているのだから、ECサイトが歓迎するそれだけの理由があるに違いない。
なぜ、そこまで伸びているのか。それだけ、そこに大きく貢献しているのが、PRオプションである。「PRオプション」は、2015年の12月頃から提供を順次開始したもの。「Yahoo!ショッピング」に出店しているストア自身が、「Yahoo!ショッピング」の 商品検索結果リストおよび「カート」に出せるという広告商品だ。
PRオプションの中身
つまり、PRオプションは、入札型の広告商品であり、入札は(商品価格の)0.1%刻みで1~15%の料率で設定できることになっている。原則、料率が高いものが、検索結果の上位にくるようになっています。この際、「広告」といった表示はされない。
ここでポイントとなるのが、ヤフーのビッグデータだ。重要なのは、最もコンバージョンされやすいユーザーや場所を自動的に計算して、掲載位置を決め、そして広告を出すというところにある。
しかも、良心的なのは、実際にPRオプションを通じて、商品が売れたときのみなのである。購入しない限りは支出するお金が発生しない。また、ECサイトは広告用に何か別ページを作ったりする必要はないので、この広告を活用するにあたってのコストは最小限に抑えることができるだけでなく、先行投資の必要性もない。
成果報酬だから資金の持ち出しがない
成果報酬だからこそ、ECサイトにとっては、PRオプションを出稿していると、実際に商品が売れなくても、検索結果の上位欄を通じて、利用者にストア名の認知ができるわけであり、考え方によっては、無料で露出面を確保できるという意味であり、ECサイトにとっては、歓迎されるといっていいだろう。
さらに、このPRオプションの仕組みは、Yahoo!ショッピングのみしか実施することができず、その理由は、これをヤフーが特許として取得しているからなのだ。
以前、ヤフーが「コマース21」を買収したときに、代表取締役の宮坂学さんが「ヤフーショッピングでは、ショピングモールを購入する人のデータは蓄積できるが、独自ドメイン店舗の顧客の購買データなども蓄積したい。今回の買収で、コマース全体のビッグデータを集めたい」と話していたのをふと思い出した。広くインターネットで物を購入するというコマースのデータはおそらくPRオプションでも生きてくるだろう。その意味で、ヤフーの着眼点はECサイトにとって、メリットをもたらす、非常に良いものだと思う。
まだ、利用できる店舗に限りがあり、1万店舗程度の利用にとどまっているが、今後、この動きがヤフーショッピングとして新たな動きを生むかもしれない。
eコマース革命は門戸を開き、細かな仕掛けで挑戦を促し、店舗を伸ばす
ヤフーが「eコマース革命」を実施し、出店料を無料にしたことで多くのECサイトが出店の機会を得て、今ではその出店数が42万店舗にも及んでいる。最近は、テレビCMやセールにも積極的であるが、それだけを求めているわけではない。
ECサイトがショッピングモールに抱く切なる願いは、明日の私たちの店舗運営をどう変えてくれるのかという話ではないか。別に、ECサイトが受け身と言っているわけでなく、モールとして、ECサイトとどう向き合い、それに答えるための施策を用意して、一緒に盛り上げようという姿勢を見せてもらえるかが、そのショッピングモールと付き合う意味であり、ECサイトの現場で今求められていることなのだと思う。
様々なECサイトがいるのも事実だ。多額な先行投資をすることなく、きちんと自らの商品を売り込み、戦略的にマーケティングして、売り上げにつなげていけるこの仕組みは、秀逸だと思う。戦略を考えるだけの素地を作っている。無料ということで高い志を持っていても、挑戦できなかったECサイトに門戸を開いたが、その志を具現化するためのベースも今整えようとしている。こうした店舗目線に立ったメニューは必ずや効果をもたらすに違いないと思う。僕は、その姿勢に拍手を送りたいと思ったし、だから記事にさせていただいた。
一度、小澤さんや宮坂さんに、「ヤフーショッピングの未来をどう考えているか」、本当のところを、聞いてみたいものである。