化粧品ECに必須、対面を超えるベルメゾンの配送施策

ECのミカタ編集部

 先日、株式会社千趣会(以下、千趣会)が開催した「化粧品通販」のセミナーを基に化粧品EC市場についての記事を掲載した。今回は同セミナーから、千趣会 法人事業部 フルフィルメントチーム 吉田敬氏の話を基に、顧客にとって最も良い化粧品ECとは何か、千趣会が運営する「ベルメゾン」が実施しているサービスと共に紹介していく。

通販物流で大切な3つの要素

 通販企業が物流面から顧客満足度を向上させるためには「Quolity」「Cost」「Delivery」の3つの要素が大切である。これらは要するに、顧客が希望する時間に品質が良い状態で商品を届け、かつ、送料を抑えるということだ。そのために、千趣会が他社の通販物流を受託する際には以下のチェック項目を設けている。

【品質チェック】
〇汚損・破損
・梱包手順の中で汚れを防ぐ工程はあるか、運用手順が守られているか
・顧客のレビューに汚損・破損についての記載はないか
〇過剰梱包
・資材の種類は適切か
〇ギフト対応
・マニュアルで対応可能なサービスから開始する(ラッピング、包装、メッセージカード等)

【コストチェック】
〇出荷拠点
・届けの多いエリアに近い拠点となっているか(顧客のエリアに対して最適なロケーション)
〇資材の種類
・資材の大きさは適切か(配送会社に渡すサイズの意識)
例:60サイズの運賃→400円/個
  80サイズの運賃→500円/個
〇ボリュームディスカウントの可能性
・運賃タリフは比較できているか(配送会社間の比較、3PL業者の見積もり)

【配送日チェック】
〇日時指定
・指定日履行率が高い状態になっているか
〇当日出荷
・当日出荷が可能か

【今後必要となるチェック項目】
〇受け取り方法
・コンビニ受け取り、受け取りロッカーなどのサービスが利用できるか

販促計画で発送遅延問題を解決に導く

 直接肌に触れる化粧品は、購入の際に特に慎重になり、対面販売を望む場合が多いという事情はある。しかし、ECで化粧品を購入する顧客も確かに存在し、満足度も高まりつつある。それにはやはり「ベルメゾン」のように、顧客が抱くであろう不安や課題を1つ1つ解決し、逆にECだからこそできる提案をしていくことが大切だろう。

 前回の記事ではECならではの接客の例を挙げたが、ECで顧客が不安を抱きやすい点として、出荷遅延問題がある。特に新規顧客獲得の可能性が高い繁忙期は通常の発送フローが回りきらず、出荷遅延が起きやすくなる。そこでベルメゾンが実行した解決方法は、受注傾向を見ながら販促計画を立てていき、イベント等から必要作業人員を分析し、手配するという方法だ。ベルメゾンの過去3年の化粧品出荷件数によると、カタログ発刊やCMが流れた際に出荷が高まり、逆に夏は減るという傾向がある。各種情報の取得・分析をし、適切な作業人員を確保して出荷遅延を防いだ。

対面販売と同様なサービスを求める顧客に応える

 問題を解決するだけでなく、顔の見えないECだからこそ、対面販売以上の丁寧なサービスを実施していくことで、顧客満足度のさらなる向上に繋げる試みも必要だ。

 例えば、ベルメゾンではギフト需要も比較的多く、包装紙6種、ギフトバッグ3種、定型メッセージカード6種、フリーメッセージカードなど自由に選べるギフトサービスを実施している。また、複数商品をラッピングサービスで購入した場合、中身が分かるように商品名記載シールを貼付しているが、そのシールを剝がしやすいように右端を折るという工夫をしている。その他、注文画面でメッセージを打つことができ、それをメッセージカードとして封入するサービスも行っており、文字フォントの選択やお祝い場面に合わせた例文集も揃えている。
 
 これらのサービスは、対面販売で全て行おうとするとなかなか難しいかもしれない。つまり、ECならではの顧客想いのサービスと言えるのではないだろうか。

運送会社と協力して定期的に会議を開催

 本セミナーの最後に、クレームを軽減するための対策についても語られた。それは、運送会社と「定例改善会議」を実施することだという。クレームには様々なものがあるが、その中でも多いのが配送関係のクレームだそうだ。その問題を解決するために、ベルメゾンでは、定期的に運送会社との会議を実施し、共に問題を解決していくという取り組みを行っている。

「対面販売を超えるサービスを目指すために、自社の物流業務を再点検してみませんか?」
 吉田氏はそう言って、セミナーの幕を閉じた。

 化粧品は直接肌に触れるものであるため、実店舗で購入したいというニーズは少なくない。だが、特に多忙な女性にとっては、いつでもどこでも都合の良いタイミングで購入ができるECの利便性は魅力だ。提案の方法次第で、化粧品EC市場はまだまだ盛り上がる可能性があるのだ。そのためには、そのECサイトの信頼度が重要になってくる。

 顧客との信頼関係を築くためには、顧客が抱える不安を解消し、安心感を持ってECで買い物できるように導く必要がある。前回紹介した接客の施策に加え、ECでは「商品が無事に届くのか」といった配送関係の不安も多い。そのためには、自社だけでなく、千趣会のように運送会社との協力も必要だ。さらに、今回例としてあげた「ギフト」サービスなど、対面販売を超えるECならではのサービスを実施することで、顧客に喜んでもらい、“ファン”へと繋がることだろう。

 デリケートな商材だからこそ、通常以上に、顧客を安心させ、喜んでもらうためには何が必要なのか、そこを第一に考えることが化粧品ECに求められているのではないだろうか。


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