楽天/ヤフー人気店も表彰!EBS15周年イベント〜竹中平蔵氏の講演も
一般社団法人イーコマース事業協会(通称:EBS)は、4月8日、大阪の毎日オーバルホールで、15周年記念イベント「ネットショップカンファレンス2017」を開催した。EBSはネットショップ同士が自らの経験を通して、ECに必要なノウハウを共有しつつ、知見のある人たちから勉強会を通して学ぶことで、自らのショップ運営に必要な知識をつける場。2002年5月に産声を上げた同協会は、いまや200店舗を超える大きな組織となった。
冒頭、理事長の添田優作氏は、壇上にたち、挨拶の中で、「15周年の締めくくりに相応しく、15年の変化を思い、また、今後を考える上での指針となるイベントにしたいと一同、準備してきました」と語り、店舗に対しての日頃の感謝と、来てくれた人へのおもてなし精神を強く感じささせるものとなった。
今回の内容としては、毎年恒例の「ネットショップ大賞」の授賞式が開催されたほか、慶應義塾大学名誉教授で東洋大学教授の竹中平蔵氏によるセミナーとオラクルひと・しくみ研究所代表の小阪裕司氏によるセミナー、EBS加入店舗によるディスカッションなど、盛り沢山な内容となった。
ネットショップ大賞受賞者は・・・・
今回の「ネットショップグランプリ」の受賞店舗は下記の通りだ。
◆大阪府知事賞:大阪の味 ゆうぜん (http://yuuzen.net/)
◆中小機構理事長賞:レディース黒い服の専門店 ロンデルブラック(http://www.rakuten.co.jp/iyashi-no-su/)
◆ネットショップグランプリ
準グランプリ:タキシード販売フォーマル専門店 ノービアノービオ(http://www.rossonero.jp/)
準グランプリ:aimerfeel(http://shop.aimerfeel.jp/pc/)
◆ネットショップ グランプリ:澤井珈琲 beans&leaf(http://www.rakuten.co.jp/sawaicoffee-tea/)
ショップ一つ一つに試行錯誤がある。
タキシード販売フォーマル専門店 ノービアノービオが「燕尾服を着る機会はあまりないように思われたけど、それでも、地道にやってきた」と話していたことからも分かる通り、どこも最初から成功のストーリーがあるわけではなく、試行錯誤の中で、店舗運営を模索していることを実感した。
他にも、「aimerfeel」では、「長らく実店舗主体で、ECは素人集団ではあったが、だからこそ、商品をただ説明することなく、そこに広がる世界観を大事に」とブランディングの意味を説いた。また、実は、壇上に立った玉山順さんは、弊社の漫画コーナーにも出ていただいていて、そんな彼女は、壇上「花束をもらうべきは私ではなく、スタッフ。スタッフなしにはこの結果はなかった」とスタッフ思いの素敵な一面を見せた。この賞の受賞が、スタッフ同士のより良い絆を構築することにも貢献してくれそう。この大賞の意義を感じる。
玉山さんが4コマ漫画に出ちゃいました「楽天スーパーSALEあるある?」の巻
竹中平蔵氏、今年のダボス会議を一言「楽観論の中での戸惑い」
他、セミナーの内容についても、実に店舗に何らかのヒントを与えるものとなっていて、中でも竹中氏のセミナーがECの未来を予感させるものとして、非常に、印象深かったので、紹介したい。
竹中氏は、冒頭、自ら経済の専門家らしく、世界的な経済の話から切り出した。「毎年、スイスでダボス会議という2500人の経済的なリーダーが集まる機会があり、ここに私は理事として参加しています。今年の内容をひとことでいうと「楽観論の中での戸惑い」です」と話した。
これが、どういうことを意味しているのか。「経済成長率は全世界的には去年の3.1%から3.4%となり、日本でも1.3%成長から1.5%成長と緩やかに回復の兆しをみせているが、イギリスのEU離脱とトランプ大統領就任と続き、ポピュリズムが起こっている」としており、アメリカでは、この状況を言い当てている衝撃的な本がある、とある本の名を挙げた。それは「FAULT LINES」。
「FAULT LINES」とは断層を意味し、ここでは、人々の間に、所得格差が生まれて、分断された人たちがポピュリズムを生むという分析している。EU離脱、トランプ大統領もそうだが、フランスでは9月に選挙があるが、12年もの間、首相に就き続けてきたメルケル氏の地位をおびやかすほどに、世界的なポピュリズムの波は広がっている。そうした一連の世界情勢を氏は「楽観論の中での戸惑い」と表現しているわけだ。
そして、氏は話題をECのことへと近づけて来た。氏が強調したのは、第四次産業革命という言葉だ。
技術の進歩で、世の中のルールが変わる
まず、話題にあげたのは2012年、アメリカではビッグデータに関する法律が整備され始めた、という話。「アメリカでは、ビッグデータはどこにあって、どう使うのかという議論が始まっていました。そして、画期的な技術の進歩は、自分で自分を学習させるディープランニングという考え方がでてきて、最近では囲碁の知識を搭載した人工知能が、その勝ちパターンを人間が休む間も学習し続け、人間に勝ってしまうということが起こり始めました。まさに、日本よりも4年先を行く中で生まれたことなのです」。
実際、人工知能、AIには二つあって、一つはロボティクスといってロボットに組み込み、二つ目は機械に組み込むというもの。日本はこの機械に組み込む事を得意としており、ここで実績を作ることが日本に課された使命なのだとして、日本が進むべき未来を氏は、示唆した。そのために、世界での大きな構造改革の流れをつかむ必要があるとしている。
竹中氏が、ここで、堀江貴文さんの言葉を挙げた。「スマホの最大の功績は、表向きは電話ですよといいながら、実は、みんなに小さなデジタルの入り口をもたせたことに意味がある」。竹中氏はこの言葉に納得し、まさに、このスマホの登場によって、ビッグデータの到来に拍車をかけているというのだ。
「確実に世の中のルールが変化していきます。例えば、私(竹中氏)の出身である和歌山で、移動するときに、車で移動しようとすれば、タクシーを当たり前に使いますが、これができるのは、タクシーがインフラとして国からのお墨付きをもらっているから、です。つまり、国からも保護されている社会の制度なのです。」
ビッグデータも、変化を拒む人がいてはマイナス
ところが、ビッグデータが集まってくれば、その状況が変わってくる。例えば、普通の人が乗っている車であっても、「何人くらい乗せたのか」がビックデータとして蓄積されていれば、別にタクシーを使うことなく、運転手を探せばいい。乗せようと思う人は、過去、何人乗せて来たのか、などの情報を開示することで、そこに信用が生まれ、頼まれる、という現象が起こる。例えば、運転手は何かの移動のついででもいいし、乗る側はそこに便乗していけば、そのコストは最小限にまで抑えられる、というわけだ。
「まさにこの発想こそがUber Technologiesの原点。この会社の企業価値はなんと7兆円です」と。それだけ世界が、Uberに可能性があると見ているわけだ。中国ではさらに、Uberから株を買ったDidi Chuxing(ディーディー チューシン)という会社が同じサービスをやって急拡大している。中国では、交通インフラが整っていないので、そういうライドシェアが急速に発展するのもうなづける。しかしながら、そういった新しい時代の可能性を持つこの企業が、なぜか日本では普及していない。これをタクシーの企業たちがあまり歓迎していないから、ということもあるのではないだろうか、と氏は、推測する。
「ここで効率化がはかられれば、地下鉄で12000円払っていたという人が、月額8000円でそういうハイヤーを使って出勤というのも、現実的になってくるわけです。まさに、これをルームという概念で行うのが、Airbnbになります。これは必要な段階に来ていて、例えば、大阪のホテルが約5万5000室と言われる中で、Airbnbが登録している部屋数は1万2000室だといいます」。ビッグデータを活用するだけで、社会の構造は大きく変わってくる。まさに、新しい産業革命はすぐそこまで来ているのかもしれない。
EBSで作り上げた一体感は組織の強さでもある
竹中氏の話を聞いていて、何気なく生活する全てがデジタルで蓄積されて、それがビッグデータ化されることで、そこには今まで以上に、人と人とが直接に、そして、近いところでお互いの思惑を一致させて、結びつく時代がやってくるように思えた。ネットショップも僕が思うに他人事ではない。お客様との関係で築かれたその一つ一つのやり取りは、まさにその店をシンボリックに映し出す個性であり、こういうやりとりを通して、いかに、お客様との間に密な関係を築き、ビッグデータを蓄積するかが、重要なのではないか、と思うからだ。その意味で、新たな気づきを与える講演だったように思う。
まさに、15周年らしく、店舗の功績を過去を振り返りながら、讃えつつ、未来への指針を提示する、意義のあるイベントであったと思う。20周年イベントではどんな店舗がどのようにして、脚光を浴びているのだろうか。ここで示唆された未来にどれだけ近づき、どのような店舗がこうした栄光を手にしているのか。次に脚光を浴びているのは、あなたかもしれない。
人数は多くいたものの、心が通いあう仲間たちが集まったという感じで、笑顔が絶えない。上の写真は、このイベントを盛り上げた、EBSの各委員。パネルディスカッションでも気心知れた仲間であることは伝わって来た。苦しみも分かち合って、心を開いて来たこの仲間たち同士なら、きっと次なるステージでまた次なる成長をやり遂げる力を発揮できるに違いない。仲間とともに、胸を張って、明日の一歩を力強く踏み出したいものだ。