ヤマトHD、LIONと「トラック納品時の待機時間」解決に向け、実証実験

ECのミカタ編集部

 急激に成長を遂げてきた物流において、様々な課題があるが、ヤマトグループ総合研究所は、トラック納品時の「待機時間」の問題に着目した、LIONとの実証実験も(7月3日から)行いながら、解決策となりうる新たなスキームを開発したと発表したが、ECにも関わる話なので取り上げたい。

 ヤマトグループ総合研究所は、名前の通り、ヤマトホールディングスの傘下にある一般社団法人で、物流を切り口とした新たな技術などの研究開発などを行っている。

 同研究所は、トラック納品時に発生している長時間の待機時間を短縮させるべく、「RFID」を活用した納品業務と車両予約システムなどを連動した新たなスキームを開発したのだ。ちなみに、RFIDとは、電波の送受信により、非接触で IC チップの中のデータを読み書きする技術だ。

ヤマトが分析〜納品に長時間の待機時間が要する理由

 今回のトラック納品時の「待機時間」の問題の解決にあたっては、シャンプー・歯磨き粉・石鹸といった、日常商品を扱うトイレタリー業界の各メーカーと、ヤマトロジスティクスと連携した。

 そもそも、納品に長時間の待機時間が要する理由を考えてみよう。まず、トラックは、先着順に納品を行うため、納品開始時刻の数時間前から多くのトラックが待機し、結果として 納品までに長時間の待機時間が発生しているという事象があるようだ。

 続いて、入庫検品時においても、目視や手書きなどアナログ作業が多く、時間を要している。また、入庫作業を荷受け場で行うため、入庫スペースが限られている場合は、先に納品された商品の処理が終わるまで次の作業を開始できず、待機時間が更に延長するといった問題も引き起こしている。

 また、納品先が必要な荷物を優先的に受け取れないトラックから商品が納品されるまで、「どの商品」が「どのトラック」の「どのパレット」に積まれているか把握できていない。それゆえ、当日優先的に入庫したい商品があった場合でも、優先することができず、結果として庫 内での作業遅延などが発生している現状もある。

どう解決しようと言うのか

 これらの要因を考えると納品時の受け入れ態勢の問題と、また、それに伴い連鎖して、問題が発生していることがわかる。

 そこで、今回開発したスキーム はどんなものなのか。まず、発送元・ドライバー・納品先が携帯端末で相互に入庫スケジュールの確認や連絡ができるアプリを活用することになった事前に納品時刻や納品口の予約が可能になれば、問題は解決する。

 そして、発送元と納品先の双方の拠点において、RFIDを活用した入出庫検品業務を行うのだ。RFIDとは、先ほども触れたが、電波の送受信により、非接触で IC チップの中のデータを読み書きする技術のことを言う。

 出庫作業 時に、RFID タグが添付されたパレット、商品、トラック情報を紐付けた ASN データ(事前出庫明細データ) を作成し事前に納品先に送ることで、納品先では RFID タグの読み取りのみで検品作業が完了するわけだ。

出庫検品時の業務負荷を軽減し、人的作業によるミスを削減

 最後に、ASNデータ(事前出庫明細データ)を事前に納品先に送ることで、どのトラックを優先的に納品させるかといった車両の入庫スケジュールの調整が可能になりるのである。

 これにより、発送元・運送会社 ドライバーは事前に予約した時刻に納品口に到着すればよく入庫検品もスムーズなので、施設周辺で 長時間待機する必要がなくなる。言うまでもなく、生産性の向上と労働環境の改善が実現するわけだ。

 また、RFID の活用によ り、出庫検品時の業務負荷を軽減し、人的作業によるミスを削減する。納品先 RFID の活用により、入庫検品作業の生産性を向上させることができれば、必要な商品を優先的に入庫することとなり、全体として、出荷作業がスムーズになり、顧客満足度の向上につながるわけだ。

LIONとの実証実験

 ライオンとの実証実験は、 2017 年 7 月 3 日~9 月 29 日に、ライオン西日本保管倉庫(大阪府茨木市)~ライオン小牧流通センター(愛知県小牧市)間で実施される。内容についてあげると、RFID の活用による納品業務の効率化の検証、および予約システムの活用による待機時間 短縮の効果検証をしていくということになる。

 今後の方針としては、2017年12月までに実証実験の効果を検証、実用化に向けて調整していくという。このスキームをライオンの自社内拠点間の物流に適用するだけでなく、トイレタリー業界全体に展開し、さらにはトラック運送会社やトラック運送業務を伴う様々な企業・業界に向けたプラットフォームとして提供することを目指していく。こうした一つ一つの解決が、配送に関わる全ての業種にとってのサービス向上であり、また、ヤマト内の職務改善にも繋がっていくだろう。


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