返品率驚異の4%。オーダーメイドシャツのOriginal Stitchは日本の市場をどう変えるのか

利根川 舞

日本のアパレル市場で大きな問題になっている”過剰在庫”。その結果、コストと在庫との間で頭を抱えるアパレルメーカーが非常に多い。それ以外にも様々な課題を抱える日本のアパレル市場にオーダーメイドシャツをECで販売しようとシリコンバレーからやってきた企業がある。

コストのかかるオーダーメイドを低価格で販売できるそのワケはどこにあるのか?そしてアパレル業界はどんな未来を歩むのか。『Original Stitch』のCEOジン・コー氏にその答えを尋ねた。

 ファストファッションのシェア拡大にも見られるように、低価格の商品を短いスパンで購入していくというスタイルも増え、メーカー各社は大量の在庫を抱えている。その結果、アパレル店舗の相次ぐ閉店やリストラに至ってしまう。

 そうした日本のアパレル市場の中に、あえて参入したOriginal Stitchはシリコンバレー発のブランドで、オーダーメイドであるにもかかわらず1着5,500円からという破格の値段でサービス提供を行っている。なぜそのような状況の日本に進出したのか?そして低価格を実現した仕組みはどのようになっているのか。ジン・コー氏は次のように語る。

 「日本のスーツ市場は縮小をしていますが、その一方でシャツ市場は拡大しており、今や2,800億円にまで伸びています。そして、我々はグローバルカンパニーですから、米国に留まらず世界を”支配”したいのです。」

 ”支配”という強烈なキーワードが飛び出したが、そこには次のような意図がある。

 「ファストファッションが増えてはいますが、我々はオーダーメイドを世界中の皆さんに提供したいのです。オーダーメイドシャツというと、高価なイメージがあり、なかなかチャレンジしにくいでしょう。だからこそ、日本のメンズシャツの平均価格である5,500円と同じ価格で購入のハードルを低くしています。我々が欲しいのは、目先の利益ではなくマーケットシェアです。現在、2,800億円の市場のうちのほとんどは既製品ですが、近い将来既製品とオーダーメイドの割合を転換させたいと思っています。」 

 Original Stitchを利用する90%はオーダーメイドシャツ初心者で、まずは1着、と購入するユーザーが多い。そしてその多くがリピーターとなりリピート率は毎月の売り上げの68%を占めているというのだがら驚きだ。

返品率4%、顧客満足度92%という驚異の数字が表すもの

 「通常アパレルECでの返品率は25%ですが、Original Stitchは4%。インターネット上でオーダーメイドシャツを作る際、他社様ですと自分のサイズの測り方を動画で見ながら測る場合もあるのですが、Original Stitchは簡単な質問に答えていくだけで、サイズを測ることができます。そして届いた商品が自分にピッタリなのを体感すると、リピーターになってしまうわけです。シャツを購入するような男性は仕事が忙しく、実店舗に買い物に行く時間がないという場合もありますからね。サイズは初回で測ってしまえば、次回の購入はさらに簡単になります。」

 8月には「Bodygram」という、好きなシャツをA4サイズの紙と一緒にデジタルカメラやスマートフォンで撮影し、Original Stitchのサイト上にアップロードするだけで、任意のシャツと同じサイズ・シルエットを再現できる移動採寸機能も提供を開始した。利便性はますます向上するばかりだ。

 もちろん、満足度の高さは利便性や時短だけでが理由ではない。ジン・コー氏曰く”男性は色合いや柄など、そう言ったものの組み合わせを想像するのが苦手”。そのためOriginal Stitchでは気に入った柄や形を選ぶとクリック1つでデザインが反映されるようになる。また、完成パターンは10億通りもあるため、アシスタント機能の搭載なども予定している。

 また、通常実店舗でシャツを購入すると、ビニール袋に入れられているわけだが、Original Stitchで作ったシャツは黒いシックな箱に納められおり、5,500円とは思えないほどの高級感を醸し出しているのだ。
 
 「顧客満足率は92%という数字も出ています。世界での日本製品の評価の高さからも想像できますが、日本のお客様は品質に非常に厳しくもあります。”スタンダード”が高いのです。そんな日本に早い時期から参入し、日本人からフィードバックを受けているのも大きいと思います。」とジン・コー氏は言う。

オーダーメイドシャツ1着5,500円の裏側

 さて、ここで気になるのがそこまでの満足感を消費者に与えながらも、1着5,500円からという低価格で商品が提供できるのか、という部分だ。

 「店舗を持っていないというのが理由の一つです。オーダーメイドなので、在庫を保管する倉庫も必要ないですし、接客する店員も必要ありません。アパレルメーカーでは数百の店舗を持ち、数千人の店員を抱えていますが、Original Stitchの運営自体は8人で行っています。」

 10億通りのパターンを織り成す生地たちにも無駄がない。基本的には工場との直取引と自社で作った素材のみで、日本であまり選択されない生地はアメリカで販売してみるというように、一つひとつの取り組みが5,500円を実現している。

Original Stitch、そして日本のアパレル市場の未来

 「冒頭に、我々はオーダーメイドシャツのシェアを増やしていきたいとお話ししましたが、Original Stitchだけでそれを実現しようとすると、時間がかかってしまいます。だからこそ、オーダーメイドシャツのプラットフォームとして、いろいろなブランド様と提携をしながらオーダーメイドの市場を広げていきたいと思っています。OSのAndroidと同じです。今や多くの企業がAndroidを搭載したスマートフォンを販売していますよね。」

 実際に今年7月には日本国内でのワイシャツ売上高1位を誇る山喜株式会社との提携を発表しており、アメリカの最新技術と半世紀以上の歴史を持つ日本企業のタッグだけに、期待は大きい。

 最後に日本のアパレル市場の今後について尋ねてみた。

「アパレルジャンルでもオンラインのトランザクションは広がり続けるでしょう。店舗はショールームの役割を持ち、店舗でタブレットなどから発注することになります。

また、ECの未来は『パーソナライズ』が鍵になると思います。ユーザーの情報使ってさらなる購入につなげる。アパレルはカスタムしやすい商材でもありますから、自分らしくカスタマイズする人々が増えるでしょう。」限られたスペース、そして手間をかけない。オンラインの強みがアパレルでも発揮されるとのこと。

 たっぷりとOriginal Stitchについて、そしてアパレル事情について語ってくれたジン・コー氏の袖には「Domination(支配)」という文字が刺繍されている。シリコンバレー発の企業が発信する日本のクオリティが日本だけでなく、世界中に届けられる日も遠くないだろう。


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

ECを活用した地方創生に注目しています!
EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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