東南アジア、ECが急速に普及/ニールセン調査
東南アジアで普及が進むインターネットショッピング
ニールセンは8月26日、世界60の国と地域の消費者3万人以上を対象に実施した「Eコマースに関するグローバル調査」の結果を発表した。
調査によると、映画、ライブ、展覧会やスポーツの試合といったイベントのチケットと共に、旅行サービスが東南アジアで最も広く購入されている商品であることがわかった。
とくにシンガポールでは、航空券やツアー・ホテル予約のオンライン購入意向が世界で最も高く、イベントチケットでも2位にランク入りした。シンガポール人の10人中約7人が今後6カ月の間にオンラインでの航空券購入(70%)とツアー・ホテル予約(69%)を予定している、という。
シンガポールは、707㎢の狭い国土に540万人の人々が住む都市国家である。1㎢あたりの人口密度は7558人。日本は341人であるから、桁違いの密集度だ。1人当たりのGDPは5万2141ドルで、日本の4万6838ドルを超え、経済的には相当豊かだと言える。ネットショッピングの発達は、その豊かさを背景としたものだろう。
マレーシア人のオンライン購入意向も高く、ツアー・ホテル予約で2位、航空券とイベントチケットで3位となった。
マレーシアはかつてイギリスの植民地だったが、1980年代から1990年代にかけて首相を務めたマハティールの指導下で急速に発展した。マハティールは日本を見習う「ルックイースト政策」を掲げて、三菱自動車の協力を得て、プロトン社で国産車の生産に乗り出すなど、日本の技術を導入。日本との交流は、今でも活発だ。
中国系、マレー系、インド系の3民族から成り、豊かな層は中国系住民に多い。おそらくインターネットを活用しているのも、中国系住民が中心となっていると思われる
そのほか、タイの消費者の10人に約4人、またインドネシア、フィリピンとベトナムの消費者の約半数も、航空券やツアー・ホテルをオンラインで購入する意向を示している。
ネットで情報収集して、リアルの店舗で買い物の傾向
インドネシア、マレーシアとタイでは購入よりも閲覧のためにインターネットにアクセスする傾向があり、ネットを実際の店舗で買い物をする際の情報収集の手段として捉えているらしい。
話としては、どことなくインターネット黎明期から普及期にかけての日本を思い起こさせるが、豊かな都市国家シンガポールでもこの傾向は強く、一方でフィリピンやベトナムでは購入傾向が高いことから見て、必ずしもインターネットの普及度や経済的豊かさの問題ではなさそうだ。国民性や買い物の習慣などがからんでいると推測される。
たとえば安売りのクーポンをインターネットで受け取って、実際の店へ駆けつけるというようなモデルは日本でもあるが、東南アジアではとてもさかんだ。
また、クレジットカード利用の際のオンラインセキュリティは、東南アジア地域全体で主要な懸念事項となっており、カード情報をネット上で提供することに関する懸念の度合いは東南アジア6市場のうち5市場において世界平均(49%)を超えている。この問題も、「ネットで下調べ、リアルの店舗で買い物」という傾向に拍車をかけているだろう。
デバイスとしてはパソコンが主流だ。しかし、携帯電話の利用も増えており、タブレットも人気だという。所得格差のある東南アジア諸国でも、やがてはスマホでの買い物が主流になっていくのではないだろうか。