逸見氏・川添氏・藤原氏が語る。オムニチャネル推進者が知っておくべきこと

利根川 舞

ネッパン協議会のセミナー内で『企業のデジタル化を進める推進者が知っているべきこと』と題し、オムニチャネルコンサルタントの逸見氏、メガネスーパーの川添氏、コメ兵の藤原氏がパネルディスカッションを実施。オムニチャネル展開をする際に推進担当者を阻む課題など、オムニチャネル展開の最前線を歩んできた3名ならではのディスカッションが繰り広げられた。

実店舗の弱みを強みに変える、LINE@活用

実店舗の弱みを強みに変える、LINE@活用

モデレーターはオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎。またパネリストとしては株式会社ビジョナリーホールディングス 兼株式会社メガネスーパーの川添隆氏と株式会社コメ兵 執行役員の藤原 義昭氏が登壇した。

それぞれが自己紹介とともに、昨今の自社での取り組みを紹介していく。

ビジョナリーホールディングスでは最近、LINE@の活用を進めているという。メガネスーパーを含む、ビジョナリーホールディングスではメガネだけでなくコンタクトレンズを取り扱っているが、コンタクトレンズはメーカーの種類もさることながら、人によって度数やカーブ数が異なるため、パターン数は莫大な数になってしまう。

そのため、すべての店舗がすべての在庫を抱えることは難しく、お客様が購入しに来ても、販売することができないという状況があった。そこで、LINE@により一度在庫確認をしてもらうことにより、該当する在庫のある店舗を提案するという仕組みを作り上げた。

「店舗のいいところは、すぐに受け取れることです。ただその一方で、今すぐに欲しいというニーズに対応できなかったため、LINE@で対応することにしました。」と川添氏は語る。

コメ兵のオムニチャネル、4つのポイント

コメ兵のオムニチャネル、4つのポイント

そして「コメ兵は高い商品ばかりなので、ECでそんな簡単に売れるわけじゃないんです。」と語るのはコメ兵の藤原氏。「コメ兵のECはオムニチャネルECです。コメ兵ではWEBで見て、お店で商品を確認して、人に接客をされて買ってもらう。という仕組みができています。」と続けたが、その仕組みには4つのポイントがあるという。

「1つ目は『接客教育』です。中古品を扱っているため、全店舗が共有在庫ですし、名前は一緒だけどユニークが違うんです。しかも高級品なので店舗には大量の在庫を置いておくこともできませんから、実店舗でもECサイトを見ながら接客をしています。そのため、タブレットを持ってロープレを行っています。

2つ目が『組織横断型オムニチャネル推進担当の設置』です。店舗にもオムニチャネル担当を必ず置き、オムニチャネルを推進しています。

3つ目は『組織改革』。オムニチャネルという横櫛が指しやすい組織へと変えていきました。最後は『KPIと評価制度の一致』です。個人のKPIは立てますが、チーム制に重きを置いているため、個人の売上は評価には入れていません。」

逸見氏は補足として次のように語る。「オムニチャネルの話なのに、店舗の話が多いなと思った方も多いんじゃないでしょうか?しかし、デジタルで集客をしても実店舗がダメだと上手く行きません。いかに実店舗をデジタル支援ができるかが大切です。今までオムニチャネルが上手くいかなかったのは、組織を横断した評価がしっかりと出来ていなかったから。ECと実店舗、部署は違うけど一緒に売上を上げればどちらも評価を上げるべきです。」

デジタル化推進を阻むものとは?

デジタル化推進を阻むものとは?

 川添氏、藤原氏の直近の取り組みが語られたあと、セミナーはディスカッションへと進む。ここでは、3つのお題を元にディスカッションが展開。3名がどのようにデジタル化を阻む壁を乗り越えてきたのかが語られた。

ーー企業のデジタル化を阻むものは?

逸見氏:抵抗勢力じゃないでしょうか?変わるのが怖いだとか、漠然とした不安もありますが、わからないものって怖いですからね、不安を取り除いてあげる必要があるのではないでしょうか。

川添氏:優先順位じゃないですかね。実店舗では多いところですと60個程の何かしらの”施策”を抱えていて、重要視されるのが6個くらいです。そういったものができないと、デジタル施策まで行かないので、できる店舗から、できる人か進めていけばいいんじゃないでしょうか。お客さんのデジタル化は圧倒的に進んでいますが、そのスピードは変わるものの流れは変わりませんから、準備をしておくことが大切です。

逸見氏:必要なものは準備してあげて、できるようになった店舗から武器を渡してあげるっていうことですね。

藤原氏:経営者がデジタル化されているかですかね。ガラケーを使いながらもiPhoneを使っているだとか…。デジタルの担当者がデジタルをやると思った時、非デジタルを否定することになりますから。


ーーデジタル化の推進に必要なものは?
藤原氏:店舗担当の役員と同等に話せるCMO(Chief Marketing Officer、最高マーケティング責任者)かCMO的な人が必要です。もしくはマーケティング担当者の地位を上げてあげるべきです。

逸見氏:過去には財務諸表で上を説得したこともありました。ECでやるとこのくらいが売上が出るんです、っていうように半年間いろいろな視点から売上を見せ、説得していました。

藤原氏:「KPIを立ててPDCAを回して・・・」っていうようなIT用語を使いがちですが、相手が普段使っているような用語に置き換えて、わかりやすく説明してあげることが必要です。

川添氏:大前提として、経営者で決まると思うんです。経営者は戦略立てるのではなく、会社経営をしっかりやってくれればいいんです。うちは地方キャラバンのホテル予約はWEBを使って社長自らやっていますけど、デジタルの方はわからないって言いますよ。


ーー参加者に伝えたいこと

藤原氏:私も小売業に従事していますが、AIによって無くなる職業の中に販売業が含まれていますよね、新入社員が入ってくるときに『君たち、10年後には仕事ないから。』って言ったんです。でも仕事が変わっていくだけで、職業としては無くならないと思うんです。
情報をキャッチアップして、自社にどう伝えていくことが大切です。自分一人じゃ無理ですから、他社の人とネットワークを広げ、情報のインプット、アウトプットをしたほうが良いと思います。
10年後にリストラなんて話ほど不幸なことはありません、デジタル化は進んでいくにつれて推進する人の責任も大きくなってくるでしょう。

逸見氏:『こんなことで困ってます』って社外で情報共有できる人を増やすことは、何か困った時に強みになりますよね。

川添氏:こういうセミナーは増えていますが、登壇者は増えていないですよね。この5、6年で小売のデジタル化が進んだかというと、実際はほとんど進んでいないんです。みなさん、実践してください。オムニチャネルの答えはお客様の近くにあります。実践して、わからないことはいろんな人に聞けばいいと思います。

藤原氏:実施、Amazon Payの導入は川添さんにFacebookで話を聞いて決めました(笑)

情報のインプットとアウトプットが担当者を救う

オムニチャネル推進の先駆者とも言える3名のディスカッション。”相談できる人を作る”ことに対して念を押しているが、そこには先駆者ゆえの苦労が伺える。

自分の立場と役割を把握してオープンにし、同じ立場の共感できる人から貪欲に知識を吸収することは、それだけ大きな意味があるということなのかもしれない。

もちろん、以前よりオムニチャネルに関する情報はウェブ上にも増えてはいるが、現実的な、生の情報を持っているのはやはり担当者なのだ。

オムニチャネルが様々なチャネルで顧客との接点を持つように、それを実施する担当者自身も様々なチャネルでの情報収集が必要なのであろう。


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

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EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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