海外品の輸入への同意と反論、消費者の本音はいかに?【ECのミカタリサーチ】

ECのミカタ編集部

イーベイ・ジャパン株式会社による国内EC事業者向けの意識調査( https://www.ebay.co.jp/news/pressrelease/pr_20170307/)によると、越境ECに興味を持つ日本国内の事業者は着実に増えてきており、事業者側の越境ECに対する抵抗は少なくなっていることが分かります。しかし、その一方で消費者の越境ECに対する意識はどうでしょうか。
越境ECに対する日本人の考え方の傾向を辿っていくと、その反対の立場である、海外から日本の商品を購入したいと考える人々の考え方も理解できるのではないでしょうか。日本の一般消費者の越境ECに対する意識調査から紐解いていきたいと思います。

一般消費者の越境ECに対する意識調査

一般消費者の越境ECに対する意識調査

まずは、一般消費者を対象に海外から商品を購入した経験と購入意思の有無について質問をしてみました。

Q1.海外の商品を取り寄せたことや、もしくは取り寄せたいと思ったことがありますか?
1位 取り寄せたいと思ったことはない 39%
2位 取り寄せたいと思ったことがあるが、取り寄せたことはない 33%
3位 海外から商品を取り寄せたことがある 28%

<「取り寄せたいと思ったことはない」と答えた人のコメント>
・送料が多くかかってしまいそうなイメージがあるからです。(滋賀県/男性/31歳)
・海外の商品には興味がないし、購入する方法もよくわからないし不安も多いので購入は考えません。(北海道/女性/53歳)
・日本で手に入らない海外の商品を欲しいと思ったことが無いから。(山梨県/女性/22歳)

<「取り寄せたいと思ったことがあるが、取り寄せたことはない」と答えた人のコメント>
・欲しいブランドのバッグが安く手に入りそうだった。でも、怪しく感じてやめた。(福岡県/女性/31歳)
・アンティークの家具を直接海外から購入しようと思いましたが、言葉の問題もありメールでやりとりするのが難しく手続きをあきらめました。(東京都/男性/50歳)
・欲しいものがあっても、取引や言葉に不安を感じるので、難しいと思ってやめてしまいます。(栃木県/女性/40歳)

<「海外から商品を取り寄せたことがある」と答えた人のコメント>
・国内よりも海外メーカーのコスメが安かったので(東京都/女性/30歳)
・日本国内では市販されていない医薬品で海外以外に選択肢がなかった。(茨城県/男性/44歳)
・海外(タイ製)のダイエットサプリを輸入した。(長野県/男性/25歳)

一般消費者を対象としたアンケートでは、「海外から商品を取り寄せたことがある」と答えた方は全体の3割程度でしたが、「取り寄せたいと思ったことがあるが、取り寄せたことはない」と答えた方も含めると、全体のおよそ6割の方が海外商品の購入に興味を持っていることが分かり、潜在的な需要の高さが窺えます。

一方で「取り寄せたいと思ったことはない」と答えた方の中には、海外から商品を購入することに対する抵抗を感じている方だけでなく、そもそも海外から購入したいと思える商品がないという方も含まれている事実も見逃せません。

海外輸入品の購入をためらってしまうハードルとは

海外輸入品の購入をためらってしまうハードルとは

海外からの輸入品を購入することに抵抗を感じるという方は決して少なくないのが実情です。続いては、海外から商品を購入する際に感じる心理的なハードルとして、どのようなものが挙げられるのか聞いてみました。

Q2.海外の商品を取り寄せる上でハードルとなるのは何だと思いますか?

1位 商品が本物かどうか、偽物でないか 28%
2位 言葉の壁 25%
3位 商品が届くか心配 24%

<「商品が本物かどうか、偽物でないか」と答えた人のコメント>
・日本なら安心安全だと思いますが、国が違うと文化も違うので。(愛知県/女性/33歳)
海外の輸入品は知らない店舗から送られてくることが多いため不安
(東京都/女性/22歳)
・よくニュースなどで偽物をつかまされると聞くことがあるので。(新潟県/男性/27歳)

<「言葉の壁」と答えた人のコメント>
・日本語しか話せないので商品の詳細がわからないからです。(滋賀県/男性/31歳)
・まず言葉もわからないし、何が書かれているのかまったくわからないため、購入するにはかなりのハードルがあると思う(北海道/女性/53歳)
・日本語しかわからないので、何かあった時に対応できないから。(群馬県/女性/22歳)

<「商品が届くか心配」と答えた人のコメント>
・商品にもよるけれど、注文をしてから届くまで時間がかかる事が多く、その間は不安しか無いから(茨城県/女性/30歳)
・途中で紛失などのトラブルがある事が不安。(埼玉県/男性/41歳)
・国によって郵送状況が違い、日本ほど正確ではないと思うので、確実に届くかどうか心配になるから。(滋賀県/女性/51歳)

アンケートの結果、海外から商品を取り寄せる上でハードルとなっている内容としては、「商品が本物かどうか、偽物でないか」、「言葉の壁」、「商品が届くか心配」の3点に票が集中しているのが分かります。

また、特に回答の多かったこれら3点に関しては、年齢や居住地域の偏向も見られず、幅広い老若男女がこれらの理由から海外から商品を購入することに抵抗を感じていることが分かります。

以上のことから、これら3点を改善されれば、海外から商品を購入する人の数は大幅に増える可能性があると言えるでしょう。「商品が届くかどうか、本物かどうか」といった問題は、購入者の口コミなどの情報を入れ、ECサイトの信頼性を担保することで改善が見込めるでしょう。「言葉の壁」がネックになっている場合は、カスタマーサポートはもちろんの事、現地の市場を調査できるスタッフを置かなければ、潜在需要を掘り起こすことは難しいとも言えます。

消費者は輸入代行業者にどれだけの価値を感じている?

消費者は輸入代行業者にどれだけの価値を感じている?

「海外から商品を購入したいけれど、言葉の壁などのハードルを感じる」という場合には、輸入代行業者を利用するという手があります。しかし、消費者は輸入代行業者を利用する場合、自分で購入する手間と比べてどの位の価値を感じているのでしょうか。

Q3.自分で輸入する手間を考慮に入れた場合、総額が何割増しまでなら代行業者経由で購入しようと思いますか?

1位 手間をかけたくないので値段に関係なく代行業者から購入する 35%
2位 2割増しまでなら代行業者から購入する 25%
3位 送料より高くかかるなら自分で輸入したほうがよい 19%

<「手間をかけたくないので値段に関係なく代行業者経由で購入する」と答えた人のコメント>
・なるべく高くても良いものが欲しいので手数料は気にしない。(埼玉県/男性/36歳)
・輸入のやり方は全く分からないので、代行業者にお願いするしかありません。代行業者の中で良心的なところを探します。(大阪府/女性/38歳)
・自分で輸入する知識が全くないので、通常は買わないがどうしても必要だったら依頼する。(長野県/男性/57歳)

<「2割増しまでなら代行業者経由で購入する」と答えた人のコメント>
・個人輸入は手間も言語の壁もあるので、少し費用がかかっても代行業者を利用したほうが楽(東京都/女性/30歳)
・自分で輸入するのは面倒だから。ただ3割増し以上も嫌なため。(長野県/男性/25歳)
・送料が商品よりも高くなるのはバカバカしいが、2割増しなら安心料と思えるから。(東京都/女性/50歳)

<「送料より高くかかるなら自分で輸入したほうがよい」と答えた人のコメント>
・送料・手数料かなりかかります。自分でネットでやり取りができるのが理想です。(埼玉県/男性/65歳)
・送料や税金など必要な費用以外は支払いたくないから。(滋賀県/女性/51歳)
・少しでも損をしたくないので、どうしても輸入したい場合は直接取引がいいと思ったから。(群馬県/女性/20歳)

アンケートの結果、全体の7割程度の方が、自ら輸入するよりも、代行業者を利用したいと考えていることが分かりました。

代行業者を利用したいと考える方のうち、手数料の値段は気にしないと考える方が最も多く、全体の半数を占めています。これに対し、手数料の価格を気にする方の7割強は2割以上の手数料がかかることに抵抗を感じている結果から、手数料に対する考え方は「価格を気にしない」という方と「できるだけ安いほうがよい」という方に二極化されているようです。

取り扱う商品にもよりますが、商品のメリットをきちんと訴求できれば、価格競争になりにくいというのは、大きな利点であると言えるでしょう。

まとめ

日本でも約6割の方が海外の商品を購入することに興味を持っているようです。現状でハードルとなっている信頼性の担保や言語対応といった問題が解消されれば、更に多くの興味・関心を集めるようになるでしょう。

はじめにご紹介した一般消費者の海外商品の購入に対する意識調査では、「特に理由はないが、日本の商品で満足だ。」「海外商品を取り寄せしてまで買おうと思ったことがない。」といった声が目立ちました。この意識が日本で越境ECが進んでいない大きな要因であると言えるのではないでしょうか。

確かに日本でのECの購入体験は質や品揃え、アフターサービスに至るまで概ね満足できるものであり、これは日本のECの誇るべき特性であると言えます。しかし、それは単に内向きになっていて、海外商品の魅力を知らないだけだったのかもしれません。

翻って考えてみると、日本の商品を購入したい海外の消費者にとって取り扱っている商品の存在、そして魅力は十分伝えきれているでしょうか。きちんと商品が届くのか不安を与えていないでしょうか。多言語対応や対象国に合わせたローカライズは出来ているでしょうか。

PayPal社の調査によれば、日本はECの支出額においては世界第3位に付けていますが、越境ECという面で見るとまだまだ発展途中であるというのが現状です。いわば越境EC後進国です。国内の個人消費の全体額としては総人口の減少により減っていくという現実もあるため、海外在住の消費者をターゲットに据えた展開も視野に入れる必要があるのではないでしょうか。

越境ECの世界では日本はまだまだ「ガラパゴス化」されて取り残されていますが、逆に言えばそれだけ開拓できる余地が広く残っているということでもあるでしょう。


記者プロフィール

ECのミカタ編集部

ECのミカタ編集部。
素敵なJ-POP流れるオフィスにタイピング音をひたすら響かせる。
日々、EC業界に貢献すべく勉強と努力を惜しまないアツいライターや記者が集う場所。

ECのミカタ編集部 の執筆記事