「送料無料」は当たり前? ババ抜き的要素を帯び始める物流コスト

競争過熱化のEC業界 送料の有無によるユーザーと業者間での温度差

この度、日本ネット経済新聞が物流コストについての興味深い調査を実施した。40のEC企業を対象に、自社で「送料無料」制度を導入しているか否かについて回答を求めたところ、実に85.0%の企業が送料無料を実施しているとの結果が出た。また、実施したことにより半数以上のEC企業が売上を伸ばした一方で、約三割のEC企業は「売上が減った」と回答した。
また、同社が行った別調査で、「最も負担に感じている費用」について36のEC企業に回答を求めたところ、「物流費」が全体の30.6%を占める結果となっている。配送業社による運賃の値上げという背景で進む送料無料化が、EC企業にとって大きな悩みとなっていることは明白だ。
一方消費者側の視点では、大手のECサイトで送料無料制度を導入している場合が多いため、送料を自分で払ってネット購入すると損をしているような気分になることがあるのではないだろうか。始まりはEC企業サイドのサービスとして開始したであろう送料無料制度だが、どこか当たり前感が浸透している気がしてならない。だが一昔前を思い出して欲しい、例えば、デパートや家電量販店で買い物をし自宅に送る際は消費者が送料を払って送っていた。筆者が初めて送料無料でEC購入をした際、ずいぶん驚いた記憶がある。しかし気がつけば、例に漏れず送料の自己負担時、どことなく損をした気がしないでもない。慣れとはこわいものである。

送料無料の完全実施はECに必要か

EC企業の収益を圧迫している現状、一部のサイトではしっかり送料を消費者よりいただく方針を実施しているところもあるが、利益を犠牲にしてでも大手に対抗するため送料無料を実施せざるを得ないシチュエーションは多いのではないだろうか。扱う商材と金額によっては、もしかしたら送料が利益を上回り赤字になるケースも出てくるかもしれない。そうなってしまってはEC企業にとっては本末転倒ということになってしまう。消費者にとって送料無料は大きな魅力でもある。しかし、そのために圧迫を余儀なくされている現場もあることを忘れてはいけない。送料無料当たり前化は、EC企業と消費者の両サイドで防ぐ必要があるのではないだろうか。大手にはない独自の商材を扱う中小EC企業が物流コストにパンクしてしまっては、業界全体の損失といえるからだ。
「送料」を誰が持つのかは、ECにとって一つのキーとなっていくだろう。