ヤマト運輸が平成30年3月期第3四半期決算内容を公表
ヤマト運輸が平成30年3月期第3四半期決算短信(連結)について取りまとめ、その内容について公表した。
同期および連結業績
EC市場を支える物流業界。拡大を続ける市場に比例してEC分野の配送量も増加の一途をたどっており、ラストワンマイルをはじめとした物流の現場はひっ迫しているのも事実だ。そうした状況もあり、宅配業界のリーディング企業であるヤマト運輸にも大いに視線が集まっているが、同社は、平成30年3月期第3四半期決算短信(平成29年4月1日~平成29年12月31日)について取りまとめその内容を公表した。以下その概要について見て行く。
主要な数値は、同期営業収益:1,171,775百万円(4.8%)、営業利益:32,131百万円(△44.7)、経常利益:32,378百万円(△44.4)となった。
また、平成30年3月期の連結業績予想(平成29年4月1日~平成30年3月31日)は、営業収益:1,530,000百万円(4.3%)、営業利益:31,000百万円(△11.1)、経常利益:31,000百万円(△11.1)としている。
業績は回復基調、働き方改革にもフォーカス
同社によれば、当第3四半期における経済環境は、「企業業績は底堅さを維持し緩やかな回復基調が続いているものの、海外政治情勢による影響など、引き続き、先行きは不透明な状況にあり、また、消費スタイルの急速な変化に伴うEC市場の拡大等による小口貨物の増加基調に加え、国内労働需給の逼迫など、物流業界は厳しい経営環境が継続している」と分析している。
このような状況のもと、ヤマトグループは高品質なサービスを提供し続けるため、「働き方改革」を経営の中心に据え、「デリバリー事業の構造改革」、「非連続成長を実現するための収益・事業構造改革」、「持続的に成長していくためのグループ経営構造改革」の3つの改革を柱とした中期経営計画「KAIKAKU 2019 for NEXT100」を策定し、ヤマトグループが持続的に成長していくための経営基盤の強化に注力してきた。
デリバリー事業では、「社員の労働環境の改善と整備」、「宅急便の総量コントロール」、「宅急便ネットワーク全体の最適化」、「ラストワンマイルネットワークの強化による効率向上」、「宅急便の基本運賃と各サービス規格の改定」を内容とする「デリバリー事業の構造改革」を推進した。
大口の法人の顧客に対し、出荷調整や再配達削減などを要請するとともに、法人の顧客に対し、運賃の見直し交渉を進め、既に多くの顧客から理解と協力を得ているとしている。これらの結果、当第3四半期は、宅急便取扱数量が減少に転じ、プライシングの適正化により宅急便単価が上昇し始めるなど、「働き方改革」の推進などにより費用が増加する中で、業績は回復基調となった。
クロスボーダー・ネットワークの構築を推進中
同資料によれば、ヤマトグループ全体としての取組みについても詳細な記述がある。以下その内容を抜粋して紹介する。
同社によれば、ヤマトグループは、グループの原点である「全員経営」を実践するため、「働き方改革」を最優先課題とし、ヤマト運輸株式会社の「働き方改革室」、グループ各社の「働き方創造委員会」を中心に、社員がより「働きやすさ」と「働きがい」を持ち、イキイキと働ける労働環境の整備に全社一丸で取り組んでいる。また、各事業が一体となって付加価値の高い事業モデルを創出し、日本経済の成長戦略と、国際競争力の強化に貢献する「バリュー・ネットワーキング」構想を推進するとともに、事業の創出・成長の基盤となる健全な企業風土の醸成に取り組んでいるとしている。
また、 「バリュー・ネットワーキング」構想の更なる進化に向け、ヤマトグループのネットワークを活かした高付加価値モデルの創出に取り組み、国内外のユーザーの様々なニーズに対応するために、既存のラストワンマイルネットワークに加え、「羽田クロノゲート」、「厚木ゲートウェイ」、「中部ゲートウェイ」、「沖縄国際物流ハブ」、11月に稼働を開始した「関西ゲートウェイ」といった革新的なネットワーク基盤を構築し、効果的な運用に自信を示している。
海外市場に対しては、クロスボーダー物流の拡大に対応すべく、日本・東アジア・東南アジア・欧州・米州の5極間の連携と各地域の機能強化に取り組み、高付加価値なクロスボーダー・ネットワークの構築を推進中だ。この他、CSR活動についても述べられている。
拡大するEC市場への対応
EC市場への取り組みについても説明がなされている。同社によれば、消費スタイルの急速な変化に伴うEC市場の拡大等による小口貨物の増加基調に加え、国内労働需給の逼迫など厳しい事業環境が継続している中、「社員の労働環境の改善と整備」、「宅急便の総量コントロール」、「宅急便ネットワーク全体の最適化」、「ラストワンマイルネットワークの強化による効率向上」、「宅急便の基本運賃と各サービス規格の改定」を内容とする「デリバリー事業の構造改革」を推進してきた。
成長が見込まれるEC市場に対しては、小さな荷物を手ごろな料金で手軽に送ることができる「宅急便コンパクト」、「ネコポス」の拡販を進めるとともに、複数のフリマサイトと連携し、発送窓口拡大を推進している。当第3四半期においては、EC事業者様向けにオープンプラットフォームを提供する事業者と連携し、ユーザーが商品を購入した場合に、受け取り場所としてヤマト運輸株式会社の営業所やコンビニエンスストア、オープン型宅配便ロッカー(PUDO)を指定できる環境を提供するなど、利便性向上に取り組んだことを示している。
Eビジネス事業
同社のEビジネス事業は、ユーザーの業務プロセスの効率化や潜在的な課題の解決に向けて、情報機能に物流機能・決済機能を融合させたソリューションプラットフォームビジネスを積極的に行っている。また、グループの事業成長を加速させるため、従来のITにとどまらず、AIやIoTなどを用いた新技術の活用を推進しているとしている。
商品の受注・出荷業務を支援するサービスとしては、出荷情報の処理や伝票印字、荷物追跡などの業務を包括的にサポートする「Web出荷コントロールサービス」を提供している。当第3四半期においては、EC市場の成長などを背景に、既存大口の顧客を中心にサービスの利用が拡大した。
営業活動で主にパンフレット・カタログ等の販促品を使用するお客様に向けては、販促品の受発注システムや倉庫保管・管理・配送等の物流、印刷をトータルで提供する「e-オンデマンドソリューション事業」を展開している。当第3四半期においては、新たに獲得したユーザーや既存のユーザーの利用が拡大した。
営業収益は、「Web出荷コントロールサービス」の取扱い拡大や、「e-オンデマンドソリューション事業」において、利用が拡大したことなどにより351億68百万円となり、前年同期に比べて15.1%増加した。
リーディング企業の変革期
増加する物流量や人手不足などを背景に、厳しい経営環境が続く物流業界。そのリーディング企業であるヤマト運輸の今回の平成30年3月期第3四半期決算短信の内容は、激変に見舞われる市場動向に果敢に対応する姿勢がにじみ出ているように見える。
働き方改革に加え、EC需要に対応した各種の施策も展開しており、また神奈川県下では自動運転と自動配送を組み合わせたプラットフォームの実証実験も遂行中だ。
確固とした理念のもと、こうした施策を実行することを通して、今後の市場を引き続きリードして行く、そして新たな市場と業界の在り方を切り拓く同社の意志を感じる。そのフラッグのたなびきは、強風にさらされながらも誇り高く存在感を発揮していると言えるだろう。