ラザダ登壇!越境EC最前線「2018 Payoneer Forum」レポート
5月16日、クロスボーダー決済ソリューションサービスを提供するペイオニア・ジャパン株式会社(以下、ペイオニア社)はベルサール渋谷ファーストにて「2018 Payoneer Forum」を開催。国内企業だけでなくアジア、ロシアなどでプラットフォームを提供企業など9社もの企業が登壇。世界のEC市場や各国のプラットフォームなど、世界に進出する上で欠かせない情報が語られた。
「本日のフォーラムは越境ECをテーマに開催しております。数多くの海外のマーケットプレイスの方々に参加していただき、税務や商品の仕入れなどのテーマもカバーしております。また、我々の中国ユーザーであります、トップセラーの企業様にもご登壇いただきます。皆様の海外展開、成長にお役立てするコンテンツを用意したつもりでございます。」
ペイオニア社 カントリーマネージャーの根本 啓氏が語るように、今回の「2018 Payoneer Forum」では計9社による講演、加えて7社がブース出展を行っており、昨年を超える規模感とスケールの大きさ。越境ECに関心を持つ人々の胸が高鳴るのは無理がなく、会場内は熱気に包まれた。
そんな多数の登壇企業の中でも注目したいのが東南アジア最大のマーケットプレイスであるLAZADA(ラザダ)と、2016年にロシア発のモバイルマーケットプレイスJOOM(ジューム)だ。
急成長する東南アジア市場でNo.1を目指す”ラザダ”
まずラザダに関して触れたいと思う。クロスボーダー ビジネスデベロップメントチームを率いるジャスミン・リン氏は、「現在、東南アジア市場ほどワクワクする市場はないと思います。」と、そこにかける期待の高さを語った。
その言葉の通り、東南アジアのBtoC市場は急成長をしており、東南アジアへの参入も増加している。そのような状況の東南アジアにおいて、ショッピングカテゴリでのNo.1を目指しているのがラザダというわけだ。
現在、ラザダでは23カテゴリ、2億6000万もの商品を掲載しているだけでなく、親会社であるアリババとの連携により「淘宝網(タオバオ)」内の良質な商品を集めた「タオバオ・コレション」を展開。また、動画配信を行うNetflix社やUber社などの企業と提携し、ロイヤリティープログラム『LiveUp』を実施するなど、商品点数以外の部分でもユーザー満足度を高める施策を行っている。『LiveUp』では、NetflixやUberなどをパッケージし、利用できるだけでなく、無料配送や特別割引などが提供される。
また、講演の中では、ラザダが予測する2018年における3つのEC動向についても触れられた。1つ目のトレンドとしては”グローバル化により、中小企業のレベルが更に上がる”というのものだ。現在、ラザダではマレーシア政府が2017年に発足したデジタル自由貿易区(DFTZ)にある物流ハブからの商品発送を行っている。その仕組みを利用することで、越境EC参入のハードルを下げることが可能になったというわけだ。
2つ目は”ユーザーのエンゲージメントアップ”だ。近年、カテゴリー数の増加やロイヤリティプログラム『LiveUp』を実施しており、これらを要因としてリピート顧客は増えるだろうと予測している。
3つ目として挙げられたのは”ソーシャルコマース”。例えば、ラザダに掲載されている化粧品を利用したメイクの方法をSNS上に掲載し、それを見た消費者を商品ページへと誘導する施策を行っている。更にAIを組み合わせことにより、購入の意思決定や購入体験にも影響を与えるようなサービスを展開するという。
日本でもシャープや資生堂など、大手企業とも取り組みを行うラザダだが、今後もセラー向けのツールを強化することを強調。フルフィルメントやデザイン、翻訳サービスなど、セラーサポートを充実させることで、カスタマーエンゲージメントの向上につながる支援を行なっていくという。
ロシア発、モバイル特化のマーケットプレイス”JOOM”
ラザダと同様に注目したいのが2016年にロシアのモバイルマーケットプレイス事業へと参入した新進気鋭のJOOM(ジューム)だ。2016年当時、モバイル利用率がPC利用率を上回ったことを機にモバイルでの展開を決断。当初はロシア市場に注力していたが、現在はヨーロッパやアメリカなど世界展開を進め、流通総額は2018年3月時点で前年同期の53倍にまで成長している。
JOOMの特徴としては、ユーザー行動の分析を行い、パーソナライズを強化している点が挙げられる。商品のレコメンドだけでなく、広告配信においてもパーソナライズ化を進めているほか、モバイルだからこその強みと言える、プッシュ通知なども活用し、販促を進めている。
また、JOOMでは出店に際し、1社に対して1アカウントしか提供されないものの、そのアカウントで複数の店舗を作ることができるという特徴を持っている。そのため、自社が持つ商品を分類して販売することができるのだ。”専門店”という見せ方をすることで、お気に入りショップに追加される可能性が高まり、そのユーザーに対してプッシュ通知を送ることで、売上増加につながるのだという。
講演の中でエラノフ氏は日本のセラーに向けて、「日本の製品は品質、デザイン、優れた顧客サービスで知られている。そういった強みを持つ日本のセラーには是非参加して欲しい。」とコメント。
というのも、現在はセラーとしては中国企業がメインだというが、低価格な強みを持つ中国製商品に加えて、品質の良さを誇る日本製商品の取り扱いも拡充していく意向なのだという。
そのため、日本製品へのトラフィックを増やすために、ユーザーが日本製品が販売されているのだとわかるように、特設ページを設けたり、広告キャンペーンを実施するなど、日本セラーへのサポートも充実させていくという。
今後も海外展開、特にヨーロッパ、アメリカへの展開を強化し、ヨーロッパ50%、アメリカ30%、ロシア20%の利用割合を目指す。ロシアで3,000万ドルの売上に寄与したテレビCMや路地の強化、動画の活用により、「2018年の指標である1日の取引数100万件を達成することができると思う」と語っており、まだ日本では耳にする機会は少ないものの、今後の動向が気になるプラットフォームであるといえよう。
越境ECの今を集めた「2018 Payoneer Forum」
ラザダやJOOM、イーベイなどのプラットフォーム提供者以外にも、欧州への越境ECの際には注意しければならない欧州VAT税や中国商品の仕入れ方法などの講演も。いずれも具体的な例を挙げて語られ、実際に越境ECをする際にどのようなハードルがあるのか、そしてそれをいかに解決すべきなのかなど越境ECに取り組みたいEC事業者には学びの多い時間となった。
また、越境ECを支援している企業だけでなく、世界中のプラットフォームを活用し、月商3億円を売り上げる中国トップセラー三态速递の講演もあり、同社が成功に至るまで、そしてさらに売り上げを拡大するためのチーム作りまで赤裸々に語られ、注目を集めた。
昨年に比べても幅広いテーマをカバーし、越境ECの魅力を伝えるだけなく、その上で発生するだろう課題解決のきっかけを提供した「2018 Payoneer Forum」。
消費者にとって、簡単に海外サイトで商品を購入することができるようになっているが、今回参加したプラットフォームや越境EC支援サービスは、EC事業者にとっての参入障壁をも下げる功労者となるだろうか。世界で活躍する日本のビジネスを当たり前に目にする日は遠くないかもしれない。