ZOZOSUITにキャッシュレス。iProspect的場氏が語る、国内ECの実態とこれから【前編】

利根川 舞

アイプロスペクト・ジャパン株式会社 CCO 的場 啓年氏

日本国内のBtoC-EC市場規模は16.5兆円、前年比9.1%増という勢いで成長をしている。しかしそれらの数値も世界規模で見れば、市場規模世界ランキング1位の中国の約12分の1程度と、決して大きいものでは無い。

では、今後日本のEC市場が拡大するためには、もとい、各EC事業者が成長するためには何が必要なのか。
マーケティングビジネスとそのトレンド予想をまとめた「Future Focus 2018」を発行するアイプロスペクトの日本支社、アイプロスペクト・ジャパン株式会社 CCOの的場 啓年氏に、これからのEC業界の未来とEC事業者が対策すべきことについて話を伺った。

2005年にチャットを実装。早すぎた“顧客体験”の提供

ーー的場さんもアパレルECサイト運営のご経験があると伺いましたが、どのようなサイトを運営されていたのでしょうか?

的場 2005年、当時私はアメリカに衣料品を仕入れるルートがありECを実施することになりました。ECサイトは、制作会社で30万くらいで作りました。意外と売れまして、そこからECサイトの運営にのめり込みました。どうしたら売れるんだろうと考えたり、独学でいろいろ施策を行ったり、HTMLを覚え始めたりしたんですけども、面白くて面白くて。でも、その30万円で作ったサイトというのを、リニューアルする為に途中でやめたんですよ。

リニューアルの内容としては、自分は顧客体験というところを非常に重視していまして、ページ遷移というのが購買を阻害するだろうなと思っていたので、Ajaxを実装してドラックアンドドロップで商品を買い物かごに入れることを可能にして、ページ遷移をすることなく、最短で購買出来る仕組みを作っていました。また、サイズも購買の障壁になると思っていましたから、店頭に来たような体験をしてもらうために、チャットもつけていたんですよ。ちょっと早すぎたんですけど(笑)

また、地元神戸が読者モデル全盛期だったこともあり、ソーシャルコマースのようなこともしていました。ブログを併設して、アフィリエイトの仕組みをフルスクラッチで作り、ステルスマーケティングにならないように自分たちで買ったものを紹介してもらえるような仕組みを作っていたんですよ。

SEOでは扱っているブランドはほぼ上位に表示されていたんですよ。ただ、僕らが仕入れられる商品は、他の人たちも仕入れられて、結果価格競争に。もうどこまで行っても価格競争なんですよね。オリジナリティを出すことができなくて、ビジネスも頭打ち感があったので、僕は勉強しに社会に出ようと思ったわけです。

そこで僕はサイバー・コミュニケーションズ(CCI)っていう会社に入りました。なぜメディアレップに入ったかというと、当時のCCIは、様々な媒体社と一緒にコマースサイトを運営してたんです。ですから、今考えるとコマースが自分の人生を作りあげたみたいなところがあります。今でもコマース事業者が大好きですし、コマースの情報見るのも好きです。

ーー2005年だと”チャット”と言われて連想するのは、メッセンジャーのようなものですよね。

的場 時代背景でいうとmixiとかが出てきた時代ですよね。あとは東京ガールズコレクションの前身である、ファッションウォーカーが全盛期だったんですよ。あとは、イマージュネットとかがすごい勢い良かった気がしますね。僕は個人事業主だったので、競合視する立場でもないんですけど、個人事業主であっても、この人たちと自分は戦っているというイメージでサイトを運営していました。

「当たり前」はもう目前。これからの買い物の仕方

アイプロスペクト・ジャパン株式会社 CCOの的場 啓年氏

「Future Focus 2018」には様々な未来予測が記載されているが、EC黎明期とも言える2000年代初頭からEC業界を見てきた的場氏自身は、どのような未来を予想しているのだろうか。

ーーECの台頭をきっかけに、買い物の仕方は刻一刻と変化しています。今後、どのような「買い物の仕方」が常識になっていくのでしょうか?

的場 20年近く前からECがある中で、”買う”ということは普遍的です。ただ、何を通じて買うか、どのような買い方をするかは変わってくるかなと思っています。

例えば、定期的に購入するような商品、私であればペットを飼っているので3ヶ月に1回はペットフードが切れるんです。そうなると、Amazon Dash Buttonのようなボタンを押すだけで商品買ったりとか、最近ではAmazon Alexaのような音声デバイスに変わってきているんですよね。『Alexa、あれを買ってよ』というだけで商品を買える時代はもう来ているんです。

アパレルECで言いますと、自分がサイトを運営していた時からずっと思っていたのですが、僕はTシャツとかはECサイトで買えるけど、サイズがわからないものはなかなか手が出しにくい。でも今はZOZOSUITが登場しましたね。ZOZOSUITなどは、一つのツールであったり買い方の一つかなと考えていて、そういうZOZOSUITのようなツールが出てくることによって、ユーザーの買い方は加速的に変わってくるだろうなと。

じゃあZOZOSUITなどが出てくることによって、僕ら消費者がどうなるかというと、サイズを考える必要がなくなるんです。例えば、渋谷にある実店舗で気に入った商品があったとして、その場で商品を買うかというと、いずれは買わなくなると思うんですよね。ショールーミング化はより一層広がっていくんじゃないかなと思っています。

あと一つは、音声デバイスでものを買うときがくると思います。例えばZOZOSUITと音声デバイスが組み合わさった日には、僕はもう何も見ずに、そしてサイズを気にすることなく商品を買うかもしれません。

ーーそういったツールは市場の拡大を後押ししそうですね。

的場 あとはキャッシュレス化も変化の一つかなと思っています。僕も今、日常生活の中ではほとんど現金を使わない生活をしています。タクシーに乗ってもスマートフォンで支払います。ほとんどキャッシュレスになってきている時代で、物質的なトランザクションというのが減っていくんじゃないかなと思っています。それが近未来の話なのか、まだ2、3年後になるのかは置いておいて、買い物の仕方であったりとか、流通だったりというのは変わっていくんじゃないかなと思います。

一つだけ、まだ買い物の仕方として普遍的に残るだろうなと思うのは、生鮮食品です。最近クックパッドがAmazonフレッシュと連携する、というニュースがありました。あれも画期的だと思うんですけど、生鮮食品だけはデジタルシフトするかといったら、しないんじゃないかなと思うんです。スーパーでは商品を売り切るために夜9時からタイムセールをしたりしますよね。そうすると、安くなったタイミングで買おうかな、と考える人もいる。ただこういう風にトランザクションの成り立ちがいろいろ変わってくる中で、危惧しているのが事業主が割引主義の施策をしてしまうことです。需要が乏しいもの、廃棄しなくちゃいけないものは、それをマネタイズするという意味で安くするのはいいと思うんですが、正しいプライスコントロールをした上で、このトランザクションの進化を捉えていかなければいけないんじゃないかなと思います。

変化するEC業界で、どのように対応していくのか

ーー「ZOZOSUIT」や「キャッシュレス」まさにタイムリーな話題ですね。そういった環境変化の中で、EC事業者はどのよう対応すれば良いのでしょうか。

的場 やはりデジタルの世界だけでは伝えきれないことって絶対的に存在すると思うんです。僕もECサイトを運営するクライアントさんを多数担当していて、定期的に調査を入れてるんです。商品を購入する経路だったりとか、何故買ったのかなどを調べています。

例えば、商品が靴だったとしますよね。何が購入のきっかけだったかというと、”はき心地”って回答があるんです。でもそれってECで伝えきれますかっていうと難しいんですよね。なので、ECでできることを考えつつも、アナログなことも考えていく必要があるかなと思います。

分かりやすい例でいうと、カーテンを販売されているEC事業社さんは、お客様に生地を送ったりしますよね。何かしら、体験の場というのは、必要だと思います。それがデジタル上で疑似体験させることができるのであればいいと思うんです。しかし、なかなか全ての業種・商材で疑似体験させることは難しいと思うので、僕はECという型だけでなくて、やはりタッチアンドトライの場所を何か提供する、ショールーミングの話じゃないですけど、小さい場所でもいいですから、重要なファンクションというのを伝えた上で、ECコマースに戻ってもらう、という流れを作っていく必要があるかなと。『いや、アナログじゃないですか』と言われるかもしれませんが、そういったことも重要なことのような気がします。

やはりただ、予算的制限とかもあると思うので、ご自身なり、事業の大きさによってやれることは変わってくるとは思いますが、何か工夫を凝らしたようなチャレンジというのはECをやる上では必要になるんじゃないかと思います。

ーーオムニチャネル展開に本腰を入れるとまではいかなくても、何かしらの接点を持つことが大切なんですね。

的場 そうなんですよね。この間、グループインタビューに参加して、そこで10代から30代の方の発言を聞いていたんです。絶対に意図していないと思うのですが、参加者はオムニチャネル的なことを言うんですよ。『店舗に行かずに在庫があるのかが見たい』や『店舗で買ったものを通販みたいに宅配してくれたらいいよね』『ネットで買ったものを店舗で受け取れたらいいよね』みたいな話が自然と出てくるんです。

やはり、オムニチャネルももちろん重要だとは思うんですけど、全部やればいいってものでもないと思っています。ちゃんとユーザーニーズを把握した上でオムニチャネルをやらないと。もちろん、先進的なことをやるにはリスクは必要だと思いますが、あまり大掛かりなことをやるというよりは、常にベータ版のような形でやっていく方が、オムニチャネルには向いているかもしれないですね。


中編では、EC業界のみならず、アパレル業界としても様々な課題を抱えるアパレルジャンルの可能性について話を伺った。「アパレルはすごい難しいと思うんです。」そう語る的場氏はどこに光を見出すのか。


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

ECを活用した地方創生に注目しています!
EC業界を発展させることをミッションに、様々な情報を発信していきます。

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