楽天 新プラン発表「経営者向けサポート制度」ECを取り巻く環境が変わる〜被害を抑える補償 税理

石郷“145”マナブ

この制度に取り組む楽天のフィンテックの精鋭達

 ネット通販が産声を上げてから、20年が経過して、ネット通販において、意識すべきことが変わってきているように思う。

 リアルと変わらないくらいの備えが必要になってきたし、また、以前にもまして店長というよりは経営者として資産の適切な運用といった感覚も求められるようになったと言える。

楽天市場店舗限定に経営者向けのサポート制度を開始

 今回、楽天グループの楽天インシュアランスプランニング株式会社は、楽天市場の出店店舗を対象に、保証制度「楽天市場店舗限定 経営者向けサポート制度」を提供開始したのだ。
 
 そもそもこうした保険などのジャンルは、楽天経済圏を補完する存在であり、日頃楽天を利用するユーザーたちにとって、お得に自分たちのライフスタイルを向上させるための手段であったわけだ。今回の制度はそれらの知見を集めて、ユーザーではなく、楽天市場に出店する事業者にとってのメリットを生み出そうというものである。

 その中身は何か?具体的にはまず、2つの団体保険商品「サイバー(情報漏洩)保険」と「PL(生産物賠償責任)保険」を開発し、事業者向けに販売する。「サイバー(情報漏洩)保険」は個人情報が漏洩した際に、賠償金やその後の対応にかかる費用を補償するもの。「PL(生産物賠償責任)保険」は例えば、食中毒を起こしたり、出荷した商品が爆発したなど、販売した商品が誰かに障害を与えた場合の補償である。

 制度自体は事業者をサポートするものではあるが、その事業者が複数のモールで出店している店舗を持っていて、例えば、他のモールでのトラブルだとしても、この保険は経営者との保険契約なので、それらは対象となる。

楽天のスケールメリットとグループの知見を生かす

 全店舗ではなく希望する店舗に限った話だが、楽天には4万以上の店舗があり、そのスケールメリットを各店舗のこれに当たる保険料に生かすことで、それを価格帯に反映して、手が届きやすいものにしている。具体的には、「サイバー(情報漏洩)保険」が年間12000円から、「PL(生産物賠償責任)保険」は年間6000円から、といった具合。

 その他、生命保険をベースに、資産を有効活用するサポートも行うとしている。例えていうなら、生命保険は経費に入れられ、法人税の対象外とさせることができることわけで、それを契約後3〜5年で解約すると、その分お金も戻ってきて、それを雑収入として、税金分を繰り延べできるというわけだ。こういった知識も取り入れ、資産を有効活用することで、より店舗での事業に打ち込め、新規への投資もしやすい環境を作っていく。

 また、どうしても中小企業にありがちな問題ではあるが、自分が日頃依頼している税理士が正しいのかということについても、弁護士ドットコム株式会社と連携して、税理士ドットコムというコンテンツを礎に店舗向けの相談窓口を用意して、法務や税務の専門家の無料紹介もおこなっていくという。

後回しにされがちな補償、資産の活用などで、100年続くEC企業の土台を

後回しにされがちな補償、資産の活用などで、100年続くEC企業の土台を

 冒頭にも書いたが、誰にとってもECが身近なものになった分だけ、どこで思いがけずトラブルに巻き込まれるかはわからず、そのリスクヘッジを必要とするようになっただけでなく、また競争も激しくなり、資金を適切に運用していくその必要性も高まっていることから、楽天はその部分のケアもまたショッピングモールとして提供しようというわけである。

 ショッピングモールが売る場所だけを提供すればよかった時代とは変わってきていることを象徴する動きであり、EC業界もそれだけ違うフェーズに来たように思う。

 ただ、楽天に一言言うなれば、これらは日頃、楽天のECコンサルタントらと店舗との日常的な親身なやりとりと信頼関係をベースにした上で提供するサービスであり、楽天市場としての信頼なくしては、机上の空論となる。その部分をしっかり構築して、店舗にとってより、ECを安心して快適に運営できる環境を作ってもらうことを切に祈りたい。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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