DELISH KITCHEN等で培ったエブリーの企画力とKDDI Wowma!の商品力がライブコマースで一つに

石郷“145”マナブ

 スマホから広がる世界は無限大だ。様々な趣向でユーザーに様々な情報を訴えかけて来て、行動へと駆り立てる。それは今までにない新しい伝え方だから、全く新しいマーケットを作る。作り出したその企業は勢いに乗って、新しいフィールドに次々チャレンジをしているという環境がある。

 とある一社に注目した。それは株式会社エブリー(以下、エブリー)。DELISH KITCHENを提供している企業といえば、わかるだろうか。様々な料理のレシピを動画で表現し、それがSNSで拡散され、誰もが簡単に料理を作れるイメージが描けて、一年で1,000万ダウンロードを達成させた。タイアップ企業もサントリーなど有名企業がずらり。このエブリーはわずか設立三年であり、DELISH KITCHENを含め、4つの動画メディアを運営しているのだ。

エブリーがKDDIとの化学反応でECに新たな価値を

 彼らにとっての次なる成長は何か。新たな可能性を模索したといえるのが、今年3月のKDDIとの業務資本提携だと言え、それが「ライブコマース」で形となった。株式会社エブリーはKDDI株式会社(以下、KDDI)と共同で、ライブ動画で商品の紹介と販売を実施するライブコマースアプリ「CHECK(チェック)」の提供を開始した。

 エブリーは言う。最近、ライブ配信の機会は増えていて、それらがエンターテイメントとして定着し始めている。エブリーは数々の動画メディアで培ってきたノウハウを企画力という形で再現し、それをライブコマースのプラットフォームに乗せて、様々な商品を紹介、販売していくというのだ。動画が浸透している反面、それらは自撮りであったりとクオリティ面においてはまだ高いものが多いとは言い切れない部分もある故、こうしたところに一石を投じ、彼らの番組制作力で動画の質を保証し、新たなマーケットをまた築こうというわけである。

 番組の時間は30分を想定しており、キャスティングに始まり、番組制作は勿論、最初はエブリーが自ら仕入れと販売を行う。ここで、KDDIグループの価値が加わって、伝える商品の幅を拡大していく。今後、商品に関して「Wowma!」での商品の登場も予定している。出店者からそれを受け付け、どれを取り上げるかは番組の構成を考慮し、エブリーが決める。店のスタッフが出演する事があるが、番組を作る必要性はない。手数料をエブリーに支払うだけで、ライブコマースの配信に乗る。

 動画制作では強みのあるエブリーの良さと商品力で強みのある「Wowma!」の良さを生かして、この番組の価値を上げていくのである。今後は、ライブ動画の中で行われるアンケートやクイズに回答することで、クーポンやポイントが付与される機能や、動画の同時視聴者が多く集まるほど、お得に買い物ができる企画の実施など、ショッピングがより楽しくなるサービスの提供を予定しているという。

「Wowma!」の出店者にとっては、自ら番組を作ることなく、高い制作力に支えられて、商品を提供するだけで、自らの商品を新しい販売チャネルを作り、新規顧客開拓ができる。また、エブリーにとっては大手企業に対して、これらのライブコマースの番組を枠ごと買ってもらい、独自コンテンツとして各社で育てられれば、エブリーが培ってきた動画の世界がこのプラットフォームを契機に広がることになるだろう。非常に期待が持てる内容で、両社にとって発展性もある。

ライブコマースの未来とは?

 ただ、ライブコマースはインタラククティブの要素に価値がある。それは番組の出演者と視聴者が織りなすコミュニティが確固たるものであればあるほど、活性化されるものだと思っている。

 一見すると、有名なインフルエンサーを立てれば、なんでも売れるように思えるが、インフルエンサーが大事なわけではなく、インフルエンサーとお客様との間に共感があって、そこに深い関係性があってこそ活性化するのが、ライブコマースの真骨頂であると思う。この番組自体にどれだけのコアユーザーができるかというところに、このライブコマースの未来があるような気がしている。

 いずれにせよ、ライブ配信の浸透と共にそれらとコマースの結びつきも、各社本腰を入れるようになってきた。エブリーとKDDIがもたらす“ハーモニー”はEC事業者の扱う商品に新たな可能性をもたらし、どんな新たな価値を提供するのか、その成り行きを期待を持って見つめていたい。

 ECノウハウ


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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