経産省が「農林水産物・食品輸出促進合同チーム」を結成し、海外向け販路開拓支援などの方針を決定
経済産業省は、同省と農林水産省による農林水産物・食品輸出促進合同チームの第2回会合が開催され、「(1)海外の現地需要に応じたマッチングの強化、(2)ECを活用した販路開拓の取組強化、(3)輸出支援策ガイドブックの作成、(4)農政局と経済産局との連携のベストプラクティスの共有」に取り組むことを決定した。
海外展開支援の4つの柱
経産省は農水省と連携した上で、「農林水産物・食品輸出促進合同チーム」を結成し施策実現のための方針を打ち出した。経産省が公表した同チームの第2回会合で策定された内容は次の通りだ。
◆1.
海外の現地需要に応じたマッチング強化
従来、農林水産省では、国内の農林水産物・食品の輸出商社と生産者・製造業者とのマッチングを支援してした。輸出商社109社から、海外の現地需要に応じた産品を提供できる生産者・製造業者を探しているか聴取し、その情報を都道府県の農政部や輸出促進のための事業者団体などに伝えることで、この1年8ヶ月で279件の現地需要情報を提供した。
また、(独)日本貿易振興機構(JETRO)でも、海外の現地需要を国内の食品関連事業者に伝えて、輸出に係るマッチングを支援してきたところだ。今後、これらの個別のマッチングの取組を一体化させるとともに、海外現地の需要情報を、経済産業省の地方支分部局である経済産業局、(独)中小企業基盤整備機構にも提供することとし、より幅広い生産者・製造業者に伝えることでマッチングの成功件数の増加を目指す。
◆2.
ECを活用した販路開拓の取組強化
海外のEC事業は、日本の農林水産物・食品の輸出・販売ルートとしてますます存在感を増している。これらのEC事業者の中には、日本国内の生産者・製造業者から商品を買い取り、自ら輸出して販売するところもある。
そこで、こうした海外のEC事業者で新たな販売商品を求める者と国内の生産者・製造事業者とのマッチングを強化する。具体的には、JETROが海外のECサイトに「ジャパンモール」を設置し、日本の食品を国内買い取りして海外消費者に販売する取組を行っているところであり、農林水産省、経済産業省のネットワークを通じて、生産者・製造業者などに募集案内などの情報提供を行う。
また、(独)中小企業基盤整備機構がECサイト『Rin++』(仮称)を設け、日本酒や緑茶などの加工食品をPRするとともに、ECを活用して販路開拓を目指す中小企業者とEC事業者とのマッチングを図る場として「EC Camp 2018」を開催することとしているところ、両省のネットワークを活用して、中小企業者などに情報提供していく。
さらに、こうした情報提供に関する連携を、今後『WASHOKU Treasure』、『J's Agri』、『EVERYTHING FROM JP』、『JapanPage』、『JAPAN POINT』等のEC事業者にも広げていく。
◆3.
輸出支援策ガイドブックの作成
今後、両省が行っている輸出促進に向けた支援策を一つのサイトで確認できるようにする。また、全国の農政局・経済産業局の様々な会合なども活用し、本ガイドブックを配布・説明するほか、両局が連携して、輸出に関心のある事業者を積極的に訪問し、支援策の利用を促していく。
◆4.
農政局と経済産業局との連携のベストプラクティス共有
農政局と経済産業局とが農林水産物・食品の輸出に向け連携した取組を強化することとし、その連携の取組の優良事例を集め、全国の農政局・経済産業局に紹介するなどにより、全国の農政局・経済産業局の優れた取組の実施を引き出していく。
ECでの流通促進も盛り込まれる
目を引くのは、やはり「2.ECを活用した販路開拓の取組強化」だろう。食品関連のECは、国内での流通シェアがまだまだ少なく、全体の1割以下とするデータもある。総じて品質が高いとされる日本の農水産品は、日本国内のみならず、世界において通用し得る潜在的な価値があるとの声は以前より各方面から聞かれてきた。
こうした現状を前に両省の合同チームは、中央官庁として有する情報やネットワークを広く活用し、EC事業者と生産者とのマッチングを実現した上で、EC市場における食品など産品の流通促進に取り組む方針を明らかにしたのだ。
EC市場そのものも、まだまだ伸びしろがあるとされているだけに、地方の活力を引き出すという文脈の上でも、付加価値の高い産品を広く流通させるべく、国として枠組みを構築し、施策を実行することは、大きな意義があるだろう。今後いかに両省が、EC事業者と生産者と連携して成果が上げられるか、その点にも注目していきたい。