中国ECを牽引する京東集団(JD.com)が次世代型生鮮スーパー『7FRESH』の展開を加速 不動産16社と提携し5年以内に1,000店舗の出店を目指す
中国市場を牽引するECサイト「京東商城(JD.com)」を運営する中国・小売業No.1の大手EC&小売インフラカンパニー京東集団(代表:劉強東 本社:中華人民共和国 北京市 NASDAQ:JD)傘下の生鮮スーパー「7FRESH」は、2018年9月19日、商業施設内での「7FRESH」出店加速を目指し、「保利」「大悦城」「万科」「越秀」「緑地」等の不動産企業16社と業務提携契約を調印した事を公表した。
また、京東は5年以内に、中国で1,000店舗の次世代型生鮮スーパー「7FRESH」の出店を目指していくとしている。
リアルとネットを統合した新型生鮮スーパー「7FRESH」
「7FRESH」は、京東が2018年1月より展開中の、オフラインとオンラインの購買体験を統合した、全く新しい生鮮スーパーだ。京東初のオフラインの生鮮スーパーとして1号店が北京で開業し、現在2店舗を運営している。
調達する商品は品質に関して厳格な基準を設けており、全世界からの直接調達品が全体の20%を占め、生鮮類商品では70%、生鮮類独自ブランド品では60%を占める。1店舗当たりの在庫販売可能な商品数は5000品目を超える規模で、様々な京東ならではのショッピング体験を提供している。
例えば葉物は24時間を超えたら棚から下ろす等新鮮さの徹底した管理、中国料理、西洋料理は店内で購入しすぐに店員が加工・調理しその場で食べられる“グローサラント”型のイートイン施設、またQRコードを活用したトレーサビリティシステム、顔認証による無人レジなど、最新テクノロジーを多数採り入れた次世代型生鮮スーパーとなっている。
中国全土への店舗拡大に向けた布石
さらに、配送面においても京東の持つ中国随一の物流能力により、店舗の半径30km以内には注文から30分以内の配送を実現している。倉庫・貯蔵の面においても、京東物流が持つ中国全土の10の主要都市における18か所の生鮮冷蔵倉庫を活用しており、冷蔵輸送チェーンは全国の300都市をカバー。
今回提携を結んだ不動産企業16社は、中国国民から高い知名度があるブランドで、その商業施設を足し上げると中国全土のあらゆる地域をカバーする規模となる。「7FRESH」は今回の提携による店舗拡大を中国全土への布石として、さらなる出店加速を目指す計画だ。
また、今回の提携によって「7FRESH」側からも、京東のビッグデータを活用した商業施設近辺の消費者情報を分析し、不動産企業が策定する施設設計・店舗募集・集客プランをより精度の高いものとするため協力を進めていくことにしている。
消費者の潜在的なニーズを掘り起こす
京東集団 高級副総裁 王笑松氏は、今回の施策に際して次のようにコメントしている。
「7FRESHはインターネット企業が産み出した戦略的案件と言えるものです。我々はオフラインの企業に対し永遠に敬意と畏れの気持ちを抱いています。中国にはスーパーは不足していません。
しかし7FRESHはスーパーを1軒作って他人のマーケットをこちらに頂こうとしているのではありません。こし、中国の庶民の食べるものが少しでも良くなり、少しでも安心して食べられ、価格も負担が重すぎないようにすることを目指すものです。
実体店舗の小売りは非常に専門的な分野です。京東は独自にスーパー運営をすることにより、実体店舗に対して行うべきサービスが何かをクリアにしていきたいと思います」
勢いを増す京東と生鮮ECの未来
名実共に巨大な中国市場をECの面から牽引する京東集団。そのネットとリアルを統合した新型生鮮スーパーは、同国全土を収めるべく攻めの一手に出たようだ。
同社はすでに中国市場での確固たる地位を得つつあり、物流の面でも独自のスキームを構築するなど、ラストワンマイルまで含んだプラットフォームとして存在感を発揮している。まさにEC先進国中国が持つ今の勢いを象徴しており、かつ同社の底力とダイナミズムを感じないわけにはいかない。
こうした生鮮分野は、Amazonなども注力してきており、日本でもクックパッドなどが、提携ドラッグストアを品物の受取場所にするなど独自の展開を見せている。これまでは比較的ECの不得意分野とも言われてきた生鮮分野だが、ECのメッカとも言える中国での京東の動きは、そうしたECと生鮮の未来を指し示しているのかも知れない。