KDDIと楽天が決済、物流、通信で業務提携〜楽天市場とWowma!が遭遇 背後に見える経済圏構想

石郷“145”マナブ

 KDDI株式会社 (本社: 東京都千代田区、代表取締役社長:髙橋 誠、以下 「KDDI」) 、沖縄セルラー電話株式会社(本社: 沖縄県那覇市、代表取締役社長:湯淺 英雄、以下「沖縄セルラー」)と楽天株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長兼社長:三木谷 浩史、以下 「楽天」)は、お互いの強みを生かした業務提携を行うと発表。

 具体的には決済、物流、通信ネットワーク分野において、両社の保有するさまざまなアセットを相互利用し、それぞれの事業領域におけるサービス競争力を一層強化することで、両社のお客さまの利便性向上を推進していくことに合意したという。幾つか気になる点があるが、EC事業者にとってまず驚きなのは、楽天とWowma!の物流面での連携となるだろう。

 楽天はかねてより三木谷浩史会長のもと、「ワンデリバリー構想」を口にしており、ここにもKDDIとの連携が生かされることとなる。具体的には「ワンデリバリー構想」では、楽天市場で購入するアイテムの配送を楽天独自の物流を使うことで、昨今言われる物流の問題に応えようとしている考え方で、出店店舗はこれまでは外部の配送業者に任せていたものが楽天に依頼することとなる。その裏付けも彼らなりには説明もしていて、大きく分けて倉庫面での「楽天スーパーロジスティクス」の強化、配送部分での「Rakuten EXPRESS」の徹底としている。

 この楽天の物流サービスをKDDIが運営する総合ショッピングモール「Wowma! (ワウマ)」に対して、2019年4月より順次提供するというのだ。楽天にとっては、KDDIとKDDIコマースフォワードの提供する「Wowma!」での配送部分が従来の楽天だけではなくなった分、スケールメリットが生かされることで、コスト軽減に繋がりそう。

 また、KDDIにとっても、Wowma!のユーザーもこのサービスを使って、安定的な物流環境を整えられる可能性を秘めている。実際のところ、楽天の物流力がいかほどのものか、という所においては、まだこれからのサービスであり、未知数な事もあるのを添えておきたい。何れにせよ、楽天市場、Wowma!の両方に出店している店舗にとってはメリットは出てきそうに思う。

新しいau Payを発表!楽天ペイとスマホ決済でも連携

 また、今年に入って急速に注目されている決済ジャンルでもこの連携によって、お互いの力が発揮されるとしており、特に、QRコードを使ったスマホ決済での連携でみられそうだ。もともと楽天は「楽天ペイ (アプリ決済)」というサービスを提供しており、楽天スーパーポイントなどを絡めるなどして、スマホ決済でも存在感を出し始めている。今回の提携により、今後この「楽天ペイ (アプリ決済)」をはじめとした決済プラットフォームや加盟店網をKDDIにも提供するというのだ。

 それに合わせてKDDIは、楽天グループが直接契約している全国約120万箇所の加盟店等を活かしたスマホ決済サービス「au PAY」を2019年4月より順次開始することを明らかにした。既に、KDDIは「au WALLET」や「auかんたん決済」などのサービスを通じて決済領域の強化を進めているわけだが、バーコードやQRコードを使った新たなスマホ決済サービス「au PAY」をスタート時点から、より盤石にして行く狙いだ。

楽天が打ち出してきた携帯事業参入の本気の一手

 その他では、言うまでもなく、世間で言われているとおり、楽天が携帯事業に参入すると発表しており、その部分では楽天は弱みがある。そこでKDDIは、今後のサービス競争の促進に寄与することを目的に、楽天が2019年10月より開始予定の第4世代移動通信サービス (LTE通信サービス) に対して、通信ネットワークを提供するローミング協定を締結したわけだ。

 これにより、楽天は、サービス開始当初より日本全国でLTE通信サービスの提供が可能となる。つまり、楽天はこの部分をKDDIが長年培ってきた通信インフラの力を借りて、携帯事業での成果を最大化させようと言う。

激化する経済圏〜楽天経済圏やauライフデザイン構想など

 お互いの強みをお互いの弱みで補完しあい、成長する考え方で、この考え方に至るベースはそれだけ経済圏による囲い込みがより激しくなっていることを明らかにしている。かつてであれば考えられない提携であるように思う。かつてであれば、一社で何かを解決しようとするからだ。

 しかしながら、テクノロジーが進化して、その情報は蓄積されて、個々人の利便性を向上させる方向へと進んでいる。その中においてはいろんなサービスを巻き込み、経済圏を構築することの重要性が高まってくる。auと楽天のユーザーが違う経済圏に存在する事を前提にこの提携があるのだろう。

 一社で何かをするのではなくアライアンスを結び、自らのコアなユーザーで構成される経済圏の発展を狙う。EC事業も巻き込みながら、日本の経済は新たな局面を迎えようとしている。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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