利益率UPの秘訣はリピート顧客にあり!【ECのミカタイベントレポート】

ECのミカタ編集部

2018年11月27日(火)に開催されたECのミカタセミナーイベント「リピート施策セミナー~利益率UPの秘訣はリピート顧客にあり!~」。現在、ECにおける新規顧客の獲得は難しくなってきており、この数年でリピート施策を見直すEC事業者が増えてきている。今回のECのミカタイベントでは、リピート施策に関する独自のノウハウやサービスを持つ4社が登壇。それぞれの講演内容のポイントを紹介する。

One to Oneマーケティングのポイント~さまざまなチャネルを横断した顧客育成~

One to Oneマーケティングのポイント~さまざまなチャネルを横断した顧客育成~   登壇者:スプリームシステム株式会社
   営業部 シニアセールス 畑佐 拓哉 氏

スプリームシステム社では、B to CのMAツールとして、Aimstar(エイムスター)というツールを提供している。Aimstarは、会員数の多いECのデータ分析を得意としており、dマーケットや世田谷自然食品、ベルーナなど、大手EC通販でも活用されている。

同社は、One to Oneマーケティングの必要性を訴えている。One to Oneマーケティングは、一斉アプローチ、セグメントアプローチの次の段階にあたるアプローチだ。One to Oneアプローチでは、高いCVを実現できると畑佐氏は語る。

One to Oneアプローチでは、LINEやメールなど、いくつかのアプローチ方法があるが、意外と効果が出るのがメールだ。「メールは読まれない」と言われることも多い昨今だが、単に使いこなせていないだけという場合もある。

実際に、Aimstarのユーザーで、導入後にOne to Oneメールを活用したところ、メール経由の売上が、導入前の最大200%という結果を出した例もあるという。One to Oneマーケティングをメールに限定する必要はないが、メールの活用でも十分に効果が出る可能性がある。

One to Oneマーケティングでは、「Targeting(ターゲティング)」「Offer(オファー)」「Timing(タイミング)」「Channel(チャネル)」の4つがポイントとなる。

「ターゲティング」では、顧客の属性によってさまざまな切り口の分析ができる。Aimstarでは、一般的によく使われる分析のテンプレートがあり、着手ポイントがわかりやすい。過去との比較分析や、離脱ポイントの分析などもでき、アクションにつなげやすい。

「オファー」では、おすすめすべき商品の分析をおこなう。Aimstarで特徴なのが、レコメンドに関する点だ。ロジックや本当にリーチしているかがわかりにくい一般的なレコメンドと異なり、レコメンドの回数ごとに適切な重みづけをしながら、微調整もおこなえる。

「タイミング」では、顧客ごとに違う離脱傾向と、購買の感覚が重要になる。チャネルでは、PC、スマホ、ハガキなど、顧客がよく使うチャネルを通じたアプローチをおこなう。

以上をまとめると、One to Oneマーケティングは、顧客をターゲティングして、どの商品をおすすめすべきかオファーを分析、顧客ごとのタイミングを計りながら、親和性の高い「チャネル」でリピートを促していくことになる。リソースはかかるが、きちんとやれば、確実に効果につながるだろう。

Aimstarでは、統計学の知識がなくても、さまざまな分析をワンパッケージで利用できるようになっている。また、シングルテナント方式で、最近主流のマルチテナント方式のクラウドサービスとは違い、企業ごとにサーバを立てている。その分料金は上がるが、分析できるデータの量や速さも格段に上がり、本格的なOne to Oneマーケティングが可能だ。

本格的にOne to Oneマーケティングに取り組むと、やるべきことが非常に多く、リソースが足りないということも起こりがちだ。そこで、シナリオ企画など人が考える必要がある部分は人がおこなうが、簡単なキャンペーンや、施策をおこなった後の分析、改善はAIに任せることで、業務を効率化することが可能だ。

リピート客を育てる最新のメール活用法

リピート客を育てる最新のメール活用法   登壇者:ユミルリンク株式会社
   マーケティング本部 マーケティング部  五十嵐 崇之 氏

メールは、20年ほど前に登場した通信手段で、キャリアメールの普及にともない多くの人に使われるようになった。ただ、最近はLINEなどSNSの登場により、メールの利用は減っているといわれる。ECにおいてメールマーケティングの効果が疑問視されることも多い。

しかし、ECに関するメールと顧客の行動の関係を調べてみると、意外なことがわかったと五十嵐氏。実は、メール経由の顧客はCV率が高く、優良顧客となる可能性が高いのだ。また、利用しているECサイトからの通知方法でもっとも多いのは、依然としてメルマガだ。さらに、一般的なイメージとは逆であるが、若い世代ほどメルマガを読む率は高いようなのだ。

ただし、情報過多の現代、メルマガは精読よりも多読される傾向がある。つまり、顧客の興味関心を惹くものでないと、これまで以上に埋もれてしまう可能性が高く、適切な内容を適切な対象に適切なタイミングで届ける、One to Oneのメールマーケティングが必要なのだ。

One to Oneメールマーケティングのポイントは、セグメント配信・レコメンドメール・カゴ落ちメールの3つ。

セグメント配信とレコメンドメールでは、メールに限らず、マーケティングで一般的な複合的な分析に基づき、顧客の属性や行動ごとに最適化した配信をおこなう。一斉送信メールをこのように改善することで、CVが向上する例は多い。

効果の出やすいメールによく使われる手法として、メールに顧客の名前を入れる、対象や時間、数量などを限定にする、目を惹く言い回しを使う、レコメンドメールを注文の翌日に送るなどもある。

カゴ落ちメールでは、ユミルリンク社のサービスの場合、システムでカゴ落ちを自動で検知してメールを送ることができる。カゴ落ちメールは、対象の数こそ少ないものの、CVにつながる可能性が高い。他のマーケティング手法と組み合わせて活用したいところだ。

メール以外のマーケティング手法が数多く登場するなか、メールだけに注力する必要はないが、メールにはまだ効果が期待できる。メールを含めた複数のチャネルに目を配りながら、これまでできていなかったメールの活用をおこなうことが、全体の売上や利益につながるだろう。

リピート施策でUGCを活用すべき理由

リピート施策でUGCを活用すべき理由   登壇者:株式会社ギャプライズ
   テクノロジーソリューション事業部/YOTPO.チームマネージャー 遠藤 哲平 氏

UGCとは、企業ではなく、ユーザーが生成するコンテンツのことで、Instagramの投稿などがこれに当たる。ギャプライズでは、UGCマーケティングツールである「YOTPO(ヨットポ)」を、日本の事業者に紹介している。

UGCマーケティングは、今、もっとも注目されているマーケティング手法のひとつであり、リピート獲得にも効果を発揮している。

UGCの活用により、価格以外の価値を訴えたり、ユーザーとのコミュニケーションが生まれるだけでなく、ユーザーニーズを知り、サービスや商品品質の改善、商品開発にも役立てることができるのだ。

実際に、セミナーで紹介されたランジェリーブランド「Ravijour」の事例では、リリースから4ヶ月で【CVR改善率150%】【リピーター増加率130%】【購入ユーザーのUGC接触率:90%】という結果がでている。

YOTPOでは、購入ユーザーに対してレビューの依頼をおこない、提出されたレビューをチェックして公開するという一連の作業を、自動でおこなうことができる。ユーザーへの連絡には、アップセル機能も付いている。

UGCマーケティングで活用したいのが、UGCの代表とも言えるInstagramだ。Instagramは今や幅広い世代のユーザーが利用しており、とくに女性への影響力が強い。YOTPOでは、Instagram投稿についても、簡単に利用依頼と取得ができるようになっている。

収集率の高さを誇るYOTPOではUGC活用を効率的におこなうことができるので、専任担当者も必要ない。幅広いUGCを収集でき、効果検証まで一貫しておこなえる。

UGCを活用することで、ユーザーとのコミュニケーションが増え、ブランドと顧客のつながりを強化するだけでなく、顧客同士の共感が深まることも期待できる。UGCはEC事業者の資産となるものであり、リピート獲得だけでなく、SEO強化にもつながるのだ。

実践事例から学ぶCRMの本質

実践事例から学ぶCRMの本質   登壇者:
   一般社団法人日本通販CRM協会 代表理事 向 徹 氏
   株式会社プライムダイレクト 取締役 森下 英則 氏

日本通販CRM協会では、日本のEC通販業界が世界に誇れるものになるよう、CRMの側面からEC業界の活性化に取り組んでいる。

現在、世界中で日本の商品は人気だが、「今後もこの状況が続くわけではない。ものを売るだけの時代は終わり、顧客との関係性をいかに築けるかということが重要になってくる」と向氏は語る。

だからこそCRMが重要だが、CRMという言葉は普及しつつあるものの、戦略的に軸を持って取り組めている会社は少ない。だからこそ、今始めるのがチャンスなのだ。日本通販CRM協会では、その道の専門家や成功企業から、CRMについて学ぶコンテンツを多数用意している。

プライムダイレクト社は、美容・健康雑貨、食品、寝具などを取り扱い、定期通販をメインにおこなうEC事業者で、日本通販CRM協会の会員だ。同社でも、リピート獲得を重視していたが、単なるリピート施策ではなく、顧客との関係性を築くCRMを学びたいと考え、協会に入会したという。

まずおこなったのが、社員に対してのCRMだった。CRMをおこなうには手間暇がかかる。だから、社員が商品への愛情や、協力的な気持ちを持っていないと、CRMを実践するのは難しいとの考えからだ。

そして、顧客に対しては、手書きの手紙や、優良顧客への特別な手紙、季節ごとのメッセージカードなどで、少しずつだが定期通販の継続率を伸ばしている。

また、新たな視点として、解約阻止のために解約理由として多い項目を解決する提案や、休眠顧客へのDMなども実施している。長期継続の顧客が定期購入を止める場合、「特別感がない」という理由が多いため、継続の節目でプレゼントを贈るなどの施策も始めた。

CRMを実践することにより、劇的な効果というよりは、少しずつ数字が伸びていると森下氏。基本的に自動で継続される定期通販だが、解約を阻止して継続率を伸ばし、優良顧客にずっと利用を続けてもらうためには、CRMが確実な効果を発揮するのだ。

リピート施策セミナーまとめ

リピート施策では、「今あるもの」を見直すことがとても重要だと感じた。

リピート施策をおこなうには、まず、顧客のことを知らなければならない。顧客の属性や行動を分析する場合、分析軸やツールを活用することで、今まで見えてこなかった側面が見えてくるということも多いだろう。

また、最近は「メールはあまり読まれない」とよく聞くが、使い方次第ではメールもまだまだ効果を発揮することがわかった。もちろん、メール以外もバランスよく活用していきたい。

SNSが普及した今、UGCはマーケティング業界で旬な言葉だ。UGCマーケティングは、ユーザーの信頼や親しみ、共感を得るために効果的だ。UGCの活用には、さまざまな作業が発生するが、専用のツールやサービスを使うと効率化できて良いだろう。

リピート施策というと、まず思い浮かぶことも多いであろうCRM。顧客との関係性を築くという意味では、顧客の分析、メールやその他の通信手段の活用、そしてUGCマーケティングも、CRMの一環といえるかもしれない。

ただ、CRMで重要なのが、単にリピートを増やす、CVを上げるということでなく、顧客にいかに喜んでもらうかということを考えるということではないだろうか。これが抜けていると、どんな施策も、ただ数字を上げるための、表面的なものになってしまうだろう。

以上、今回紹介した内容で、詳しいことが知りたい場合は、せひ問い合わせをしてほしい。


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