「ふるさと納税」にはもう頼れない?宮崎県新富町が独自ECサイトを立ち上げブランド野菜を販売

ECのミカタ編集部

一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(宮崎県児湯郡新富町、代表理事:齋藤潤一、以下こゆ財団という)は、ふるさと納税の人気返礼品である「野菜・果物セット」のネット通販サイトを開設したことを公表した。同財団では、ブランド野菜を通じて関係人口創出に取り組み、新富町への農業観光誘客につなげたいとしている。

「こゆ野菜」としてブランド化

新富町商店街の「こゆ野菜カフェ」店長・永住美香さん。JA直売所や生産者から野菜や果物を買い付け、カフェで提供している。

宮崎県新富町は、東京ドーム約460個分の農地が広がる農業の町だ。キュウリやピーマン、トマトなどを中心に数多くの野菜が栽培されているほか、宮崎県の代名詞ともいえるマンゴーや、国内に1%しか流通していない希少なライチなど、一年を通じてさまざまな種類の果物が収穫できる。

これらの野菜や果物は「こゆ野菜」としてブランド化し、2018年8月に新富町商店街にオープンしたカフェ「こゆ野菜カフェ」でメニューとして提供。産地直送の野菜と果物を手軽に味わえるとあって、町内外から通う顧客が増えているという。

専用サイトで通販開始

そうした中で、「遠方に住む家族や友人に届けたい」「ギフトとして贈りたい」という声が集まっており、多種類を詰め合わせたセット商品はふるさと納税返礼品としてしか流通していなかったことから、ネット通販「こゆ野菜カフェ」を開設しセット商品のレギュラー販売を開始した。

商品は「お試しこゆ野菜セット」(1,980円)、「定期便こゆ野菜セット」(2,980円)の2品だ。ウェブサイトには、カフェ店長・永住美香さんの思いやこだわりを掲載している。

ブランド野菜とECによって地域に力を

宮崎県新富町は、2017年4月に地域商社「こゆ財団」を設立した。町の産業支援の一環として、特産品のライチを「1粒1,000円のライチ」としてブランド化を実施している。

ブランド化によって生産者の収益が向上しただけではなく、ライチ農園を訪れたり、SNSで応援してくれるなど、町の関係人口も生まれたそうだ。その数は8,500人以上(2017年4月〜2018年12月)となっており、中にはふるさと納税で寄附を受けたり、ビジネスパートナーとなるなど、関係は多方面に発展している。

こうした実績をもとにこゆ財団では、町内のカフェで高い支持を得ている「こゆ野菜」ブランドが、関係人口のさらなる創出に寄与できると判断したのだ。また、カフェの顧客からは、都市部に住む家族に「こゆ野菜」を送りたいという相談も増加している状況があったそうだ。

「こゆ野菜」ブランドは宮崎県で初めてズッキーニ栽培に成功した方など、優れた技術を持つ生産者によって支えられている。高齢化や後継者不足が危惧される中、「こゆ野菜」ブランドが認知を得ることは、生産者を支援し、農業を持続可能にすることにもつながるとしている。こゆ財団はこうした流れを受け、食材ネット通販を通じて「こゆ野菜」ブランドの認知拡大に注力することにしている

ふるさと納税の限界が見える中でECサイト販売開始は英断

ネット通販サイトでは、2つの商品について、2019年夏を目処に、ふるさと納税での平均申込数である月合計1,000セットを目標として販売する計画だ。

また、こゆ財団では、新富町商店街「こゆ野菜カフェ」をハブとして、新富町に関わる人々のコミュニティづくりを企図。カフェでのダイニングイベントや、「こゆ野菜」生産者を訪れての農業体験など、農業を資源とした観光ビジネスをモデル化していくとしている。

ふるさと納税は、各種の報道にある通り、加熱した返礼品競争が大きな問題となってきた。公的な寄付制度であるにもかかわらず、その使途より高額な返礼品目当てでふるさと納税を行う動きが大きくなり、本来の制度をゆがめているとの指摘が各方面からなされている。

そうした中、総務省は返礼品の金額を寄付金額の3割にするよう強い姿勢で臨んでおり、すでに違反している自治体を名指ししているほか、規制に従わない自治体については、ふるさと納税制度の対象から除外するとの意思も明示している。

そもそも、ふるさと納税の実施経験者は全納税者の1割程度にとどまっており、返礼品規制も加わって今後さらなる発展は見込めない状況であることから、返礼品として人気の品をECサイトで販売することは、地域振興の観点からも当然の帰結と言えるだろう。

今後、まさにEC本来の力を発揮して、同町の振興策に貢献することになりそうだ。

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