ECモールは独占禁止法に抵触するのか。公正取引委員会の調査内容とは

ECのミカタ編集部

公正取引委員会は、次のような趣旨のもと消費者向けeコマースの取引実態に関する調査を実施した。近年、我が国における消費者向けECの市場規模は急速に拡大しており、また新たなオンラインモール運営業者も出現するなど、市場環境は大きく変貌を遂げてきていると考えられる。

このようなeコマースの発展は、小売市場における競争を促進し、消費者利益の増大をもたらしていると考えられる一方で、事業者が競争事業者や取引先事業者の行動を把握しやすくなることにより、競争制限的な行為が行われやすくなることも懸念されるところだ。

このような問題意識を踏まえ、メーカーと流通業者との間の取引条件、メーカーや流通業者のウェブサイトでの販売方法,オンラインモールでの取引状況といった消費者向けeコマースに関する取引慣行全般について、実店舗での販売に関する取引慣行とも比較しつつ、メーカー・小売業者及びオンラインモール運営業者のそれぞれの行為について、競争促進効果・競争阻害効果の双方の観点から幅広く調査を実施した。またECに係る消費者の消費行動についても調査を実施した。ここではその中からポイントを絞って見ていく。

調査概要

1 調査対象
 消費者が事業者からインターネットを介して購入する商品に関する取引

2 調査方法
 調査は平成30年1月から同年11月にかけて次の方法により実施

(1) 事業者向けアンケート調査(平成30年1月~2月)
4,339名の事業者に対しアンケート調査票を送付し、1,208名(小売業者848名,メーカー360名)から回答(回答率27.8%)

(2) ヒアリング調査(随時)
延べ117社(小売業者,メーカー・オンラインモール運営業者・価格調査会社・価格自動更新ツール提供業者・価格比較サイト運営業者)に対して実施

(3) 消費者向けアンケート調査(平成30年9月)
オンラインモールで月1回以上商品を購入している一般消費者2,000名に対してインターネット上で実施(委託調査)

価格や品揃え等の面で厳しい競争に直面

消費者向けeコマース市場全体の市場規模は,平成24年(9兆5130億円)から平成29年(16兆5054億円)の5年間で73.5%拡大している。

事業者は、オンライン販売により商圏等の拡大などのメリットを享受する一方,価格,品揃え等の面で活発な競争に直面しているといえるとしている。また、小売業者の中には,メーカー等からオンライン販売について制限を受けることがあるとする者が一定程度存在する結果となった。

公正取引委員会は、ECには競争促進効果があり、事業者にも消費者にも大きな利益をもたらしていると考えられるとしている。小売業者の取引の状況が他の事業者から把握されやすくなることで、メーカーによる小売価格のコントロール、メーカー間・小売業者間の協調行為などの競争阻害効果を惹起する懸念があるとしている。

ECプラットフォームは事実上の寡占傾向に

3つの主要なオンラインモールへ出店者及び消費者が集中していることがうかがわれる結果となった。またオンラインモールには「間接ネットワーク効果」が双方向に働いていることがうかがわれるとしている。

間接ネットワーク効果とは、例えばプラットフォーム事業者を介して取引を行う二つの利用者グループ間において、一方の利用者グループに属する利用者が増加するほど、他方の利用者グループに属する利用者にとって当該プラットフォーム事業者を介して取引を行うことの便益・効用が向上するような効果をいう。

メーカーが小売業者に「オンラインでの販売を禁止」する行為も

メーカーが商品のブランドイメージ維持のために、小売業者のオンライン販売サイトのデザインを指定する行為がみられた。

メーカーが小売業者に対して、ブランドイメージ維持等の目的のために、自社サイトも含めたオンライン販売を全面的に禁止する、またはオンラインモールでの販売を禁止する行為がみられた。

モール側による利用料の一方的値上げ等に不満

オンラインモールの利用料の一方的値上げや決済方法を指定されることに不満を持つ出店者がみられた。

この点に関して、自己の取引上の地位が出店者に優越しているオンラインモール運営業者が、正常な商慣習に照らして不当に利用料や決済方法を変更して不利益を与えるなどの場合には、独占禁止法上問題が生じるおそれがあるとしている(優越的地位の濫用)。また、出店者に対して他のオンラインモールへの出店制限を課す行為は、今回の調査においては確認できなかったとしている。

公正取引委員会としては,オンラインモール運営業者が、利用料や決済方法を不当に変更することのないよう、オンラインモール運営業者と出店者との取引の状況について情報収集に努めるとともに、独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処することとするとしている。

ショップ側が顧客情報を活用できない問題も

「商品の発送以外には顧客情報を利用できない」「オンラインモールからの退店後には顧客情報を利用できない」とする出店者がみられた。

公正取引委員会ではこの点に関し、オンラインモール運営業者は、出店者が入手可能な顧客情報やその利用条件を一方的に変更されるといった予期しない不利益を受けることのないように、顧客情報の利用条件について予見可能性が確保されるよう、引き続き可能な限り取引条件の透明化に取り組むことが公正な競争環境を確保する観点から望ましいとしている。

同委員会では、自ら小売事業も営むオンラインモール運営業者が、出店者による販売によって入手した顧客情報を当該オンラインモールにおける自らの小売事業を有利に行うために利用し出店者には利用させないことにより、出店者の小売事業を不当に妨害する場合には、独占禁止法上問題となるおそれがある(競争者に対する取引妨害等)とも述べている。

「独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処する」

調査結果にあるように、ECには競争促進効果が認められ、消費者と事業者の双方にとって大きなメリットをもたらしている。一方で競争制限的な行為は消費者向けEC市場の発展を阻害することとなるため、公正取引委員会としては、消費者向けEC市場において独占禁止法上問題となる行為が行われることなく、小売市場全体における競争が更に促進され、消費者が良質で安価な商品をより簡単に入手できるようになることを期待しているとしている。

また公正取引委員会は、オンラインモールが日本の消費者向けEC市場において重要な役割を果たしており、間接ネットワーク効果の存在などにより特定のオンラインモールが市場において優位な立場に立ちやすいことから、オンラインモール運営業者によって公正かつ自由な競争を阻害する行為が行われると消費者向けEC市場全体の公正な競争環境が損なわれることにつながりかねないとも述べている。

同委員会としては、消費者向けEC取引の動向について、特にオンラインモール運営業者による行為を中心に情報収集に努めるとともに、独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処していく方針だ。

インターネットの普及と歩みを共にしてきたEC市場。伝統的なオフラインの取引に比べれば、いたって若い市場だが、すでに30年近くが経過する中で、さまざまな課題も浮き彫りとなっているようだ。

原則として自由な商取引が市場を活性化させるが、その「自由」がかえって市場の公正な発展を阻害している場合や不当な私的制限がある場合には、公的機関による規制がもたらされるのも致し方無いとも言えるだろう。いずれにしろそこではさまざまな立場の人の間での充分な議論がなされることが必要ともなるはずだ。

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