【速報】楽天カンファレンス 三木谷氏、楽天市場の送料を全店舗統一すると発表

石郷“145”マナブ

 つい先ほど、楽天株式会社(以下、楽天)は、楽天新春カンファレンス2019を開催し、4000店舗が集結し、代表取締役会長兼 社長の三木谷浩史氏が講演を行った。

 この中で、三木谷氏は改めて楽天市場の強みと弱みについて触れ、今後同社内で行う改革に関して語った。一言で言って楽天市場の強みは集合体である事。彼の言葉を借りれば、素晴らしい商品を持った店舗の集まりで、他社に比べると、レイアウトなども柔軟なプラットフォームであるとした。一方で、弱みは各店舗の個性が際立つことによる統一性のなさという事をあげた。

 三木谷氏はこの強さをより盤石なものにする為にいくつか施策を挙げ、昨年から強化している「チャット機能」については、まずその成果を語った。具体的には、お客様と直接的なやりとりの機会が増加し、一部の店舗を対象としたデータによれば、チャット機能による転換率は8.2P上昇、客単価にして74.2%上昇した。ただ、チャットというとレスを迅速にしなければいけない印象があるので、そこから「メッセンジャー」というような捉え方に“進化”させ、必要に応じて時間的な余裕を持たせた見せ方をすることで、店舗の負担を軽減していくという。加えて、チャットボットを搭載する事で定型的な質問にはAIが対応。それに伴う店舗の人件費軽減に配慮した。

 また、同社のAI技術は、よ実用的に活用する方向へとシフトしており、これまでにも店舗の受注予測などの機能で奏功していたが、今後は「アナリシストラッカー」という機能で、どういう検索キーワードが良いのかなど、新規ユーザー獲得を意識した施策で、より店舗の個性を引き立たせ、成長につなげる仕組みへと“成長”を遂げて行くことになりそうだ。

ワンデリバリー構想は集荷集配にも対応し、店舗の利便性にも配慮して行く

 勿論、三木谷氏にとって肝いりの「ワンデリバリー構想」についても言及した。宅配危機が叫ばれ、同社も配送業者と交渉を重ねる中で、困難な部分も色々と見えて来たという。そこで同社は独自の配送網を担い、物流センターも見直して、物流全体を楽天で行う一つの着地を見た。

 以前、一部の店舗からは倉庫に入ってからは楽天の物流を使うとしてもそこへの集荷はどうなっているのかという声もあったが、まだ全国とは言えないが、各店舗に集荷を行う計画だと明言した。まだ一部の店舗だが、この集荷の対応エリアは広げていくとしている。また、集荷と集配を合わせてお客様にお届けする、倉庫を使わないパターンも実現させたい意向だ。

 三木谷氏は従来の配送企業と比べて、自分達の場合においては、店舗、商品、お客様と3つのデータを完全に把握している点が利点だとして、極論、何を誰に運んでいるのかがわかっているからこそ、そのお客様が納得すれば(高級品でない限り)置き配なども実現できるとしているのだ。更にドローンを使った商用サービスも日本で初めて実現したこともあり、今後は過疎地域にも届けたいとしている。また集合住宅などでは自動運転などで人件費の削減も狙っているようだ。

 ちなみに、気になる価格設定ではあるが、某社より料金が安いと三木谷氏は語気を強めたが、下記の通りだ。

 また、この講演後、CMO河野奈保さんにも話をする機会があり、なるほどと思った。それは、お客様の情報を楽天市場が把握している事で、例えば、キャリアウーマンであれば昼間よりも夜の配達を好むというような、お客様の人物像を描くことができる。また商品の内容も把握しているので、どういう扱いがふさわしいのかも見えてくる。この辺りは、配送するだけの企業とは決定的に違うわけで、これらを店舗の理解のもとでやっていけば、効率の面からも、顧客満足の観点からも、以前とは違った物流が実現できるのかもしれない。

三木谷氏の店舗への提案「送料の全店舗統一」

 そして、最後にこうした事を前提に三木谷氏は一つの提案を全ての店舗にした。それが「送料の全店舗統一」だ。楽天の弱みである配送部分で、送料に関する統一感がないという声も多いという。そこで、送料無料ライン(〜円以上送料無料)を統一して成果を出した「メルカドリブレ」という海外の会社の事例を挙げた。同社では、送料無料ラインを全ての店舗に統一した2010年から7年間で40%以上の成長率を見せており、今一度、エンドユーザーの要望に耳を傾けて欲しいとした。

 話を聞いてきて思ったのは楽天市場が良く言う「shopping is entertainment」、とにかくバザールのような売り場を作り、出店に力を入れるフェーズは終えたのかもしれないという事だ。

 楽天が「Rakuten」というブランド価値を高め、また独自のエコシステム「楽天経済圏」を使って多くのサービスを回遊させるようにお客様を魅了させ、カードをキッカケに、お得な楽天市場で物を買うという環境を作って、さらに、チャットや物流、携帯電話の独自のサービスなど、楽天オリジナルで店舗とともに価値を最大化させるシステムを提案して、包括した中に、自分達の存在意義を見出したのではないかと思うのだ。

 実際、僕も店舗の方々とお話しする機会もあるが、色々意見もしながらも、情報やサービスの点で楽天市場の提示するもので恩恵を得ている部分もあるとしており、楽天にも求められる幅が広がってきたように思う。ここには店舗によっては必要ないなどの賛否が伴うかもしれないが、まずはその楽天の挑戦を静観してみようと思う。お手並み拝見という具合に。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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