【楽天決算】優良顧客の増加等を背景に国内EC流通総額は1.0兆円へ

利根川 舞

2019年11月7日、楽天株式会社(以下、楽天)は2019年度第3四半期の決算説明を実施。
同社の発表によれば、第三四半期の売上収益は9057億円(前年同期比+14.6)。同社が株を保有するリフト社の株価下落が影響し、最終損益は141億円(前年同期比-15.4%)の赤字となった。

ロイヤリティ顧客の増加 楽天市場の月間購入額は4.8倍に

ロイヤリティ顧客の増加 楽天市場の月間購入額は4.8倍に2019年度第3四半期決算説明会資料より抜粋

楽天市場、楽天生命、楽天カードなどのコアビジネスでは売り上げ収益が前年同期比+20.2%、営業利益は前年同期比+50%となった。

成長フェーズビジネスであるC2C、1stパーティ、海外事業、では、Rakuten koboやRakuten Viberなどの海外事業の赤字が大幅に改善され、売り上げ収益が前年同期比+36.7%に。なお、投資フェーズビジネスであるモバイル、物流においては売り上げ収益が前年同期比+21.7%に着地した。

また、楽天エコシステム(経済圏)は拡大が続いており、LTV、クロスユースの増加によりメンバーシップバリュー(会員価値)は5.3兆円(前年同期比+15.8%)と改善。ロイヤリティーの高いユーザーも急激に増加しており、ダイヤモンドランクはレギュラー会員に比べて、楽天市場の月間購入額が4.8倍、注文件数は4.9倍を記録している。引き続き、楽天エコシステムの拡大によるカスタマーロイヤリティの向上を目指すという。

三木谷氏は「その中で楽天グループはもともとエンパワーエメントという、インターネットの力を使って社会をエンパワーするかということを掲げてやってきたんですが、新たに『WALK TOGETHER』というキャッチフレーズを大きく掲げまして、さまざまな中小企業、店舗、ブランド、そして社会をエンパワーメントしていきたい」と概略発表を締めくくった。

国内EC流通総額は1.0兆円へ

国内EC流通総額は1.0兆円へ2019年度第3四半期決算説明会資料より抜粋

コアビジネスの一つである楽天市場や楽天トラベルを含む、国内EC流通総額は1.0兆円(前年比+18.4%)。売り上げ収益は前年同期比+24.6%と成長。営業利益は物流投資が続いているものの、前年同期比-1.5%で推移している。

楽天市場、トラベル、ゴルフ、ドリームジネスを含む国内ECマーケットプレイスビジネスでは、楽天エコシステムの拡大に伴い、既存のマーケットプレイス型事業の営業利益は改善されている。

また、楽天市場にフォーカスすると、SPUなどのマーケティング施策が奏功し、楽天市場におけるKPIも着実に改善がなされているという。

2019年度第3四半期決算説明会資料より抜粋

また、楽天市場モバイル流通総額比率は74.1%と前年同期比に比べて4.8%上昇しており、楽天カードにおいても決済比率63.1%となり過去最高を記録した。

物流事業については投資を継続

楽天として現在はモバイルと物流という2つのプロジェクトに取り組んでいるが、その中でも物流事業においては、引き続き物流施設の拡充およびラストワンマイルの拡大に注力していく。RSL(Rakuten SUPER LOGISTICS)に関しては楽天市場におけるGMSカバー率は2021年内に50%を目指す。また、Rakuten EXPRESSにおいては、物流カバーエリアの拡大に取り組み、2019年内に人口カバー率60%を目指す。

三木谷氏は物流事業に対して「物流コストが上がって参りました。その中で楽天には店舗やエンドユーザから、わかりやすい迅速な流通物流に関する要望が届いています。流通を増やし、店舗様に貢献して、世界に誇るマーケットプレイスになりたいと思っています」とコメント。

また、物流に関しては日常消費がインターネット上で行われることが増えたことを背景に、引き続き投資を続けていくとした。

出店店舗間で大きな注目を集めている送料無料ラインについては触れられずに説明会は幕を閉じ、送料無料ラインに関する店舗との調整はあまりスムーズに進んでいないことが伺える。しかし、導入は来春を予定しており、タイムリミットは刻々と迫っている。例年1月には新春カンファレンスが予定されており、そこで何らかの発表があることも予想されるが、それよりも先に、スッキリとした形で新春を迎えたいものである。


記者プロフィール

利根川 舞

ECのミカタ 副編集長

ロックが好きで週末はライブハウスやフェス会場に出現します。
一番好きなバンドはACIDMAN、一番好きなフェスは京都大作戦。

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