【ZHD×LINE】共同記者会見実施 経営統合で生まれる5つのシナジー
Zホールディングス株式会社(以下、ZHD)と LINE株式会社(以下、LINE社)は11月18日の朝、それぞれの取締役会において、両社グループの経営統合について、資本提携に関する基本合意書(以下、本資本提携基本合意書)を締結することが決議されたことを発表。
同日の17時より、ZHDとLINE社による共同記者会見が実施された。共同記者会見にはZHDから代表取締役社長の川邊健太郎氏、LINE社からは代表取締役社長の出澤剛氏が登壇した。
ZHDとLINEが経営統合に向け大きな一歩 2019年12月の統合合意をめざして資本提携に関する基本合意書締結について決議
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2つの危機感と2つの志
経営統合の報道がなされたのが11月13日。そして翌日は決定事項ではないと発表されたものの、週が明けた18日の朝、両社グループの経営統合について、資本提携に関する基本合意書の締結が決議されたことが発表された。
18日の朝に発表された書面でも強調されていたのが”対等な経営”だ。「今日までは、我々は切磋琢磨する関係でした」そう出澤氏が語るように、切磋琢磨しながら両者はともに成長をしてきた。
ではなぜ今、経営統合に至ったのか。出澤氏は次のように語る。
「経営陣を含めまして、年に1度くらい、情報交換の新年会をしていました。その度に川邊さんから『大きいことをしましょうよ』と声をかけていただいいていました。そして、今年の新年会では我々も思うところがありまして、両社の親会社と検討を進めながら、今日この発表に至っているところです」。
出澤氏の”思うところ”とは、競合が増える中で、LINE社だけでは次のステージに向かうにいは時間が足りないというもの。この出澤氏の危機感が川邊氏の考える”大きいこと”を数年越しに実現させた。
もちろん、危機感を覚えていたのは出澤氏だけではない。両社の抱く、2つの危機感と志が経営統合を実現させた。その危機感を二人は次のように語る。
「1つ目はグローバルテックジャイアントの存在です。人材やお金、データまですべてが強いところに集約され、勝者総取りという状況です。2社が一緒になったとしても、全てにおいても桁違いの差がついてしまっている。この差は文化の多様性にまでも影響を及ぼす可能性がある」と出澤氏。
「もう1つが課題先進国である日本ではテクノロジーで解決できることはまだまだあるということです。人口減の時代の中で、労働人口問題があり、付随する形で生産性が落ちて社会の効率化が落ちていく。ITはまだ活躍できる部分があり、我々はまだやりきれていないと思います。そして自然災害ですね。ここでもITはもっと色々な形で防災減災などに対応できると思います。もっと取り組んでいけるのではないかという、至らなさの危機感です」と川邊氏は語る。
そして今後、経営統合をしていくことで、日本に住む人々に最高のユーザー体験を提供し、日本固有の社会的な課題を解決していくとした。また、日本を中心にアジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指すという。
出澤氏は「IoTの時代になり、インターネットと日常生活はシームレスになっていく。その基盤となるがAIです。」と語る。また川邊氏も「海外は非常に研究開発が強いため、我々は何かしらに集中していかなければいけません。それがAIなんです」と語っており、両者の経営統合の大きな野望が提示される。
ZホールディングスとLINE。経営統合による5つのシナジーとは?
背景が語られたあとは、両社の経営統合による5つのシナジー効果が語られた。
まず1つ目は利用者基盤だ。ヤフーでは6,743万人の月間利用者、300万社超のビジネスクライアントを保有しており、一方で、LINEには8,200万人の月間利用者数、350万社のビジネスクライアントがいる。
「利用者は単純に足し合わせられるものではないと思っていますし、もちろん、重複ユーザーもいます。しかし、それ以外のユーザー層を補完できるのではないかと思っています。LINEは若年層、ヤフーはPC世代の年配の方々もいらっしゃる。さらには、LINEはスマホアプリに強く、ヤフーはPCユーザーや各種ブラウザにユーザーが多数います。そういったところで補完関係になっていくのではないかと思います」と川邊氏。
また2つ目のシナジーとして挙げられたのは両社が提供するサービスの補完だ。ヤフーではメディアサービスを拡大しながらも、最近では”eコマース革命”を実施するなどEC領域についても推し進めてきた。また、PayPayを核にフィンテック領域も拡大し、PayPayはリリースから1年でユーザー数2,000万人を突破している。
一方でLINE社はメッセンジャーアプリを中心にニュースや音楽、コマースなど生活に関わるサービスを提供し、スーパーアプリという構想を当初から推し進めていきた。近年ではペイメント事業やラインクローバーなどのAI事業にも大きな投資をしている。経営統合によって、お互いのサービスにない部分を補い、補完関係を築いていくという。
そして3つ目は株主を含めたグループシナジーだ。ソフトバンクでは5Gの推進、Y!mobileやBeyond Carrier 戦略など通信サービス以上のビジネスを展開。また、Yahoo!JAPANとはソフトバンクのスマホユーザーにはポイントを10倍付与するキャンペーンなどをECでも展開してきた。「統合をした暁には、LINEユーザーもポイント10倍なんてこともできるかもしれません」と川邊氏。
また、LINEの親会社では韓国ナンバー1のサイトを持ち、検索を中心に様々なサービスを展開している。
出澤氏は「LINE、ヤフー、株主のソフトバンク、ネイバー、それぞれはが東アジアに位置する会社です。それぞれが世界に羽ばたいで、米国、中国に続く第三極になれるよう、シナジーを作っていきたいと思います」とコメントした。
そして4つ目が人材。社員数は両社を合わせると2万人にのぼる。「未来を作るという意味ではエンジニア、デザイナー、データサイエンティストなどが大事なんです。この部分でも両社を併せると数千人規模になる。そういう人材にも大変期待をしています。」と語られた。
そして最後、5つ目のシナジーが両社による投資額だ。両社の投資額を合わせると年間の投資額は約1,000億円にまでのぼるの。これらを、AIを基軸にメディア・コンテンツ、広告、コマース・O2O、Fintech、コミュニケーションの領域へ、積極的に中長期的な投資を行い、新たな価値を創り出していくという。
具体的なサービス展開は経営統合後に検討
具体的なサービス展開などについては、経営統合後に検討していくとのこと。18日に会員数2,000万人突破が発表されたPayPayとLINE社の提供するLINE Payについても注目が集まっているところであるが川邊氏には「ここから1年弱で競合関係を保ちつつそれぞれが上昇していく。その中で最終的に支持されているサービスをFintechで保管しあっていく」と語った。
年末年始の間に締結をし、その後は各社の申請や手続きを進めていく。時価総額が1兆円を超える企業の統合ということで、多少は時間がかかると想定されるが、2020年の10月には統合を完了させる予定だ。
LINEは多数のユーザーを抱え、すでにインフラ的存在となっている。しかし、メッセージアプリ以外の面ではなかなか飛び抜けることができていないのが現状であり、経営統合により補完できる部分は大きいだろう。
また、Zホールディングスとしては、様々なサービス展開を進めながらも多数の企業を連結子会社化し、テリトリーを拡大してきた。先日発表されたZOZO買収についても、EC事業強化の一環として注目されていたが、LINEとの経営統合が果たされた暁には、比にならないほど広い範囲の事業がブーストされていくに違いない。
ところが、完全に経営統合されるまでの約1年を迎えるまでは、両社はライバルとして戦い続けることとなる。経営統合までに両社がいかに成長し、いかようなシナジー効果を生み出すのか。引き続き注目をしていく必要があるだろう。