厚生労働省 医薬品ネット販売のルール案とりまとめ

ECのミカタ編集部

厚生労働省の「一般用医薬品の販売ルール策定作業グループ」(策定作業グループ)は9月20日に開催した第4回会合で、医薬品の店舗販売およびネット販売のルール案をまとめた。週30時間以上の実店舗の営業実績があることをネット販売の条件とするほか、薬事監視の観点から、専門家による販売が行われていることをリアルタイムで確認できる体制構築の義務化などを盛り込む。対面と非対面の間で混乱を続けてきた医薬品ネット販売のルール整備にようやく節目がついた形で、今後、いまだ決着していないネット販売でのスイッチ直後品目の取り扱いの可否が焦点になる。

第4回会合では、前回会合で積み残しとなっていた偽サイト対策のほか、前回会合で構成員から出された意見をもとにした修文の内容などを議論。

まず、ネット販売のベースとなる実店舗の営業時間の条件については、たたき台で週40時間以上としていたが、構成員からハードルが高すぎるとの意見があったことを踏まえ30時間以上に修正。午前8時から午後6時までとしていた営業時間帯の条件も緩和し、深夜時間帯(夜10時~午前5時)以外の営業実績が15時間以上であることを目安にするとした。

また、ネット販売で専門家が適切に関与していることを担保する方策として、応対する専門家の勤務状況をリアルタイムの表示、情報提供や販売を行った専門家の氏名や時間などの記録作成などを義務化。薬事監視の際に必要に応じ連絡を取るためのテレビ電話の設置も義務付けとしたが、テレビ電話に限定する内容に構成員から反対意見があり、薬事監視ができる手段の義務化とすることで落ち着いた。

一方、ネット販売で義務となっている販売記録の作成・保管で、新経済連盟顧問の國重惇史構成員が店舗販売の書きぶりが"努力義務"的な表現になっている点に触れ、店舗もネットと同等の扱いにすべきと指摘。これに対し、日本薬剤師会常務理事の藤原英憲構成員は難色を示したが、日本チェーンドラッグストア協会理事の森信構成員は、店舗と顧客双方で保管できる販売時のやり取りチェックリストを作成する用意があるとの考えを示した。

このほかにネット競売での一般用医薬品の出品禁止に加え、新たに国や都道府県が適正に販売が行われているかを容易に確認できない手法でのネット販売を禁止する内容を追加。国内および海外サイトの無許可販売などの監視を強化することも盛り込む。

ルール策定グループでの検討作業は今回で終了し、厚労省では、今後、修文を加えた内容を各委員に確認してもらった上で正式なルール案としてまとめる考えだが、もうひとつ課題として残っているのは、第1類医薬品に含まれるスイッチ直後品目の取り扱い。

これについては薬学や医学の専門家で構成する「スイッチ直後品目等の特性の検証・検討に関する専門家会合」で、劇薬指定を含む28品目の特性を検証し、販売時の留意点をまとめることとなっているが、実際には非対面のネット販売での取り扱いを認めるべきではないといった話に終始し、当該品目の特性に関する議論は実質的に行われていない。

これについては新経済連盟の國重構成員がルール策定グループの会合で再三指摘し、規制改革会議でも9月12日に、閣議決定の趣旨に反した議論として、是正を求める意見書を出す事態に発展している。

専門家会合での検討対象は28品目に過ぎないが、ネット販売でのニーズは高く、ケンコーコムでは、医薬品ネット販売の約4割を占める第1類医薬品のうち、スイッチ直後品目が半分程度になっているもよう。他のネット販売事業者でも、同様の傾向があると見られ、当該品目が扱えなくなった場合の打撃は大きいと言える。

一方、ドラッグストアなどでは、専門家会合での議論が対面か否かの観点であるため、スイッチ直後品目のネット販売が禁止されたとしても、メーンが対面の実店舗であるため、特に影響はないと見ているようだが、ネットと対面で当該品目の販売に差をつけるようなことがあれば、ネット販売をメーンとする事業者や規制改革会議などの反発は必至だ。

厚労省では、専門家会合は、あくまで当該品目の特性を検討するもので、ネット販売での取り扱いの可否については別途検討の場を設けるとするが、詳細は不透明なままとなっている。

ルール策定グループでの一般用医薬品販売のルール案は一応まとまったが、スイッチ直後品目の取り扱いを巡る攻防が活発化する可能性がありそうだ。


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