ニールセンデジタルがスマホのアプリ利用状況を発表 アプリ利用個数は減少傾向、カテゴリーを超えた競争が加速中

ECのミカタ編集部

視聴行動分析サービスを提供するニールセン デジタル株式会社は、スマートフォン視聴率情報「ニールセン モバイル ネットビュー(Nielsen Mobile NetView) 」のデータをもとに、2020年12月の日本におけるスマホアプリの利用個数やペイメントアプリの利用状況に関する分析結果を発表した。

アプリ市場では、スーパーアプリ化や一部サービスによる寡占化が進行しており、2020年12月時点の日本におけるスマホアプリの利用個数は昨年比で減少に転じた。

スーパーアプリ化がカテゴリーを超えた競争に拍車

視聴行動分析サービスを提供するニールセン デジタル株式会社(東京都港区、代表取締役社長 宮本淳、以下「ニールセンデジタル」)は、スマートフォン視聴率情報「ニールセン モバイル ネットビュー(Nielsen Mobile NetView) 」のデータをもとに、2020年12月の日本におけるスマホアプリの利用個数やペイメントアプリの利用状況に関する分析結果を発表した。

アプリ市場においては、近年中国の「WeChat」や「Alipay」のように、一つのサービスの中で様々なカテゴリーのサービスを利用することができるスーパーアプリに注目が集まっている。

日本市場においても、2021年3月1日にヤフーとLINEが経営統合したことによって、「LINE」や「PayPay」といったアプリのスーパーアプリ化が加速していく可能性が考えられる。

一つのアプリに様々なサービスが集約され始めると、現在起きているサービスカテゴリー内でのアプリ間の競争に加えて、サービスカテゴリーを超えてスーパーアプリとの競争が起きるため、アプリ開発企業にとっては、今まで以上に消費者の意識を引きつけておく必要性が出てくる。

昨年比でアプリの利用個数が減少

そのような中、アプリ市場における競争の激化はすでに始まっている。1年間のアプリの利用個数の変化に注目すると、1ヶ月に1回以上利用されるアプリの数は2020年12月時点で平均30.6個と、昨年から4個減少していた。

2019年の段階では、エンターテイメントやEC、ファイナンスなどの大きなサービスカテゴリーの中で、「TikTok」や「PayPay」などの消費者にとって新しいタイプのサービスを利用する環境が生まれたことによってアプリの利用個数が増加していたが、この1年間で減少に転じたことになる。

2020年は新型コロナウイルスの影響によりオンライン動画の視聴やフードデリバリー、オンライン会議システムの利用などデジタルサービスの利用状況は大きく変化し、アプリの利用状況も影響を受けた。

アプリの利用個数が減少した要因は、新型コロナウイルスの直接的な影響にとどまらない。カテゴリーごとの変化を見ると、地図アプリなどを含んでいる「旅行」カテゴリーで減少が見られるなど新型コロナウイルス感染拡大により外出が減少したことによる影響が見られる。

このようなアプリは、新型コロナウイルスが落ち着いて、それ以前のように自由に外出ができるようになると、ユーザーは以前利用していたアプリを再度使い始める可能性がある。

ところが、在宅時間の増加により視聴時間が増加していた動画アプリなどを含む「エンターテイメント」カテゴリーにおいても、利用するアプリの個数は減少していた。

動画アプリに絞ってみると利用個数は減少しておらず、ゲームや音楽などのアプリの利用が減少したことが背景にある。直接的な新型コロナウイルスの影響ではなく、「楽しむため」という同じ利用目的で動画サービスなどの利用時間が増加したことで、ゲームや音楽アプリの利用機会を奪ったことなどが影響していると考えられる。

このように視聴習慣が変化したユーザーにアプリを使い続けてもらうためには、これまで以上にユーザーの満足度を向上させていく必要があると言える。

一部サービスによる寡占が進む

一部サービスによる寡占が進む

アプリの競争の激化は、成長セグメントのカテゴリーにおいても起きている。スーパーアプリにおいて注目されている、日々の生活にかかせない「ペイメント」アプリに着目してみると、上位10サービスのいずれかを利用している人は1年間で775万人増加し、2020年12月時点で5,141万人が利用する規模にまで成長していた。

ここ数年での成長に加えて、昨年は感染拡大予防の観点からも注目されたことに後押しされた様子がうかがえる。

しかしすべてのサービスがその恩恵を受けているわけではない。上位10サービスのうち、上位3サービスでは平均466万人も利用者数が増加していたのに対して、下位7サービスでは平均43万人の増加にとどまった。未だ成長過程の市場ではあるものの、一部のサービスによる寡占が進行しており、小規模なサービスにとっては単体での成長が困難になっていく可能性も考えられる。

ニールセンデジタル シニアアナリストの高木史朗は、次のように述べる。

「アプリ開発企業にとっては、同じカテゴリー内での競争に加えて、今後スーパーアプリの登場によるカテゴリーを超えた競争も見据えた戦略の立案が重要になってきます。自社のアプリユーザー数が増加していたとしても、競合アプリはそれを上回る成長率である可能性もあります。また、他のカテゴリーのアプリに自社サービスユーザーの生活時間を奪われる可能性もあります。そのため、随時市場の動向を正確に把握した上で、戦略や戦術をアップデートしていく必要があります。」


スマホアプリは数が多いだけに、ダウンロードしてもらう以上に、ユーザーに「スタメン」として使ってもらうことのほうがが難しい。何らかの特典を付けてダウンロードを促したりしても、ユーザーが早期にそのアプリを使うメリットを実感できなければ、他のアプリに埋もれて使われなくなってしまうからだ。

一時期は、どんな企業もサービスも「とにかくスマホアプリを作らないと」という風潮があったが、一部では「スマホアプリを使うより、ブラウザでウェブサイトを閲覧したほうが見やすく、使いやすい」という本末転倒の状況も見受けられる。

アプリならではの利便性やメリットが明確でないと、「使い続けられるアプリ」の座を確保するのは難しいということだろう。

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