Zホールディングスが2021年3月期の決算を公表 売上収益は2年連続で2桁成長を達成、EC取扱高は3.22兆円(昨対比24.4%増)

ECのミカタ編集部

Zホールディングス株式会社が2021年3月期の決算を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

決算概況

決算概況

当該連結会計年度の売上収益は、2019年11月に(株)ZOZOを連結子会社化したこと、2021年3月にLINE(株)と経営統合したこと、およびアスクルグループの売上収益が増加したこと等により、前年同期比で増加した。

また営業利益も(株)ZOZOを連結子会社化したこと等により、前年同期比で増加した。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期にPayPay(株)の持分変動利益108億円を計上した影響等により、前年同期比で減少した。

その結果、売上収益は1.20兆円(前年同期比14.5%)2年連続で2桁成長を達成、調整後EBITDAは2,948億円(前年同期比18.8%)増益を達成した。また、ショッピング事業の成長がけん引し、eコマース取扱高は3.22兆円(前年同期比24.4%増)となった。

当該期間のEC事業

当該期間のEC事業

2019年11月に(株)ZOZOを連結子会社化し、同社の売上収益が好調に推移したこと、ショッピング広告売上収益が増加したこと、ワイジェイカード(株)の売上収益が増加したこと等により、コマース事業の売上収益は前年同期比で増した。

またeコマース取扱高は3.22兆円(前年同期比24.4%増)となった。PayPayの決済回数は、キャッシュレス決済の浸透に加え、「超PayPay祭」等の販促活動により、20億3,790万回(前年同期比約2.5倍)となった。

これらの結果、当該連結会計年度におけるコマース事業の売上収益は8,402億円(前年同期比17.5%増)、営業利益は1,112億円(前年同期比45.7%増)となった。なおこの売上収益が全売上収益に占める割合は69.7%となる。

各セグメントの施策概況

各セグメントの施策概況

◆コマース事業

コマース事業では、eコマース関連サービスや会員向けサービス、決済金融関連サービス等を提供してきた。ソフトバンク(株)、PayPay(株)、(株)ZOZO等との連携が奏功し、ショッピング事業取扱高は6年連続でYoY20%以上の高い成長率を維持。2019年度にローンチしたプレミアムなオンラインショッピングモールである「PayPayモール」では実店舗の在庫をオンライン上で購入できる「X(クロス)ショッピング」を開始しており、約140兆円規模のオフライン消費市場でのシェア獲得を目指す。

それに加えて、LINE(株)との統合による短期的な取り組みとして、各社のロイヤリティプログラムを統合し、ヤフー、PayPay、LINEの3つの起点を活用させることで、サービス間のクロスユースを促し、経済圏を一層拡大していくとしている。中・長期的な取り組みとして、LINEのコミュニケーション機能を活用した「ソーシャルコマース」を展開。その実現のための施策の一つが、NAVERCorporationの知見を活かした「Smart Store Project」の展開だ。この取り組みを通じ、企業のECサイト構築から売上最大化までを支援するサービスを2021年度に開始する予定だとしている。

さらに2020年3月に発表したヤマトホールディングス(株)との物流・配送の強化に関する業務提携による物流サービスの改善、ロイヤリティプログラムの強化、及びソーシャルコマース等の我々の強みやグループ全体のアセットを活かした便利でお得なサービスを展開することにより、eコマース取扱高の持続的な成長を実現していくとのことだ。

また、決済事業に関しては「PayPay」と「LINE Pay」の国内のQR・バーコード決済事業について2022年4月を目標に「PayPay」に統合すべく協議を開始。今後もPayPay(株)、LINE(株)との連携により、「PayPay」「LINE Pay」を起点とする決済を中心としたオフライン上での生活における様々なデータの蓄積と残高拡大により、O2O(Online to Offline / 送客)ビジネスや金融サービス等、多様な収益事業へと成長させる方針とのことだ。

◆メディア事業

メディア事業では、日常に欠かせない多様なメディアサービスを提供することで多くの利用者を集め、広告により収益を上げてきた。特に新型コロナウイルスの感染拡大のような有事の際には、求められている情報やサービスを適切かつ迅速に提供することが重要です。我々が創業以来掲げてきた「ユーザーファースト」の理念に基づき、必要とされるサービスを適切なタイミングで提供することがメディアとしての信頼性を高め、結果として中長期的なユーザー数の拡大、ひいては広告売上収益の拡大につながるとしている。

サービス利用に関する重要指標である月間ログインユーザーID数は当期末時点で5,200万人と順調に拡大を続けており、2020年度の第三者機関による国内トータルデジタルリーチにおいてYahoo! JAPANが1位となった。またLINE(株)との統合により、競合他社にはないユニークなアセットが拡充された。今後はNAVER CorporationのAI技術やLINE(株)のアセットを活用しながら、認知から興味・関心といった「新規顧客獲得のためのファネル」に加えて、購入からCRMの「優良顧客化のためのファネル」まで一気通貫で支援する、新たなマーケティングソリューションを実現していくとしている。

さらに、蓄積されたデータをPayPay、LINE公式アカウント等と組み合わせて活用し、コンバージョンにコミットするソリューションを提供していきます。その結果、一人ひとりに最適な提案をする「1:1」のマーケティングを実現し、利用頻度の増加を目指します。加えて、オフラインへの進出を新たなチャンスと捉
え、オフライン上の利用者の生活も便利にする取り組みを進めている。

「PayPay」によるオフライン決済のデータを活用することで、「認知」から「購買」までを一気通貫で可視化することにより、販促市場でのシェア拡大に取り組んでいるとしている。

LINE関連

LINE関連

LINE(株)との経営統合も踏まえ、2022年3月期の連結売上収益は1.52~1.57兆円(前年度比26.1~30.2%増)、調整後EBITDAは3,030~3,130億円(前年度比2.8~6.2%増)を見込んでいる。

なお新型コロナウイルスの影響により依然として事業環境が不透明であること、加えて、LINE(株)との経営統合の初年度ということもあり、幅を持たせた業績予想としている。

LINEに関しては、ユーザーの個人情報を中国の関連会社のエンジニアが閲覧できる状態にあったことが発覚した。この点に関して、同社は、今回の決算資料の「会社の対処すべき課題」の中で、次のように言及している。

「2021年3月に、当社グループにおけるデータの取り扱いをセキュリティ観点およびガバナンス観点から外部有識者にて検証・評価する特別委員会『グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会』を設置しました。また、特別委員会を技術的知見から支援するため、サイバーセキュリティ分野における外部の専門家で構成される技術検証部会も設置いたしました。デジタルプラットフォーム事業者の社会的責務を果たすため、今後もお客さまや有識者のご意見・ご指摘と真摯に向き合い、透明性を高め安心してご利用いただける環境作りのため、継続的な改善を行っていきます」

2023年度に売上収益2兆円達成を目指す

2023年度に売上収益2兆円達成を目指す

同社は、「ユーザーファースト」を起点に「データの蓄積・活用を通じて利用者を最も理解する存在」、ひいては「日本の利用者を最も理解する国産プラットフォーマー」となるべく取り組んできたとしている。その中核となるのが「マルチビッグデータの横断利活用」だ。2018年度から「第三の創業期」と位置付け、マルチビッグデータを活かした事業モデルを展開するべく積極的に成長投資を行ってきた。

その上でeコマース、メディア、Fintechを中心とした多様なサービスを展開。具体的な施策のひとつが、ソフトバンク(株)との連携強化だ。従来からeコマースやモバイルペイメント事業等の分野で事業連携を進めてきたが、2019年6月に同社グループはソフトバンク(株)の連結子会社になった。そこから得られる膨大な量と種類のマルチビッグデータを活用し、さらなる成長と企業価値の向上を目指すとしている。

2021年3月1日にLINE(株)との経営統合を完了したのもその一環となる。LINE(株)との統合により、サービスを提供する国と地域は230にまで広がった。またLINEのアジア主要国と地域における1億6700万人の利用者基盤を活かし、安定的な収益創出にもつながることになる。こうした取り組みを通じ、2023年度に売上収益2兆円、調整後EBITDA3,900億円の達成を中期目標として掲げる。


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