【EC×ブロックチェーン】農産物だけでなく土地そのものも取引可能なECサイト『おしながき』がリリースへ

ECのミカタ編集部

株式会社Branding Houseは、地域貢献型ECサイト「おしながき」を2021年9月9日にリリース予定であることを公表した。

休耕地・耕作放棄地に付加価値をもたらす

「おしながき」は、農作物・海産物・伝統工芸品などを生産者からユーザーへ直接届けるECサイトだ。既存ECサイト同様のサービスに加え、利益の一部を地域に還元することで地方創生に貢献できるサービスを提供するとしている。また、荒廃農地などを利用して、畑や果樹の権利をNFT(Non-Fungible Token)化し、サイト内で売買可能なプラットフォームを構築し、農作物などを新しい形で販売できる次世代ECサイトが提供される。

NFT (Non-Fungible Token:非代替性トークン) とは、改ざんすることができない証明書、所有権が明確になったデジタルデータのことだ。ブロックチェーン上で、発行や取引を行うことができ、改ざんすることが困難なため、デジタルデータに唯一無二の価値を持たせることを可能にしている。

ECサイトは、スマートフォンやPCがあればすぐに購入できるというメリットがある反面、実物を手に取って確認できないという面もある。そこで出品者が、より付加価値の高い商品販売を可能にするため、ブロックチェーン技術であるNFTプラットフォームを構築することにしたという。

日本の“良いモノ”を次世代に引き継げる仕組みを

日本の“良いモノ”を次世代に引き継げる仕組みを

同社は、リリースに向けて次のように述べている。

「現在の日本は、大量機械生産により安価な製品が流通し、昔ながらの伝統や文化を受け継いで作られた農作物や伝統工芸品などへ正当な利益が還元されにくいエコシステムとなっており、それらの原因により次世代の担い手が育ちにくく、日本の『本物』を受け継ぐことができずに失われていく可能性があります。

特に農家の平均年齢は65歳以上が65%を占めており、後継者不足は大きな問題です。1960年に1400万人いた農業就業人口は2019年には168.1万人と、この60年で大きく変化しました。農家に対して若者が持っている『労働で儲からない』というイメージからも後継者不足にも陥り、荒廃農地や耕作放棄地も増えています。

また、食品ロスも大きな社会問題であり、農林水産省のデータによると国内で年間600万トン以上もの食品が食品ロスとして廃棄されています。特に2020年に起きたコロナパンデミックにより外食産業に大打撃を受け、その外食産業に卸していた生産者も打撃を受けました。また、不揃いの作物は店舗に並ぶことなくそのまま廃棄されてしまい、廃棄コストも生産者の大きな負担になっています。

これらの課題を解決できるECサイトが『おしながき』です。昨今では産地直送型のECサイトがトレンドとなりつつありますが、弊社のプラットフォームでは、これまでの産地直送型ECサイトの機能はもちろん、生産者がより付加価値のある商品を販売できる環境を整え、正当な利益を還元することで日本の『本物』を受け継いでいくことに焦点を置き、ユーザー自身も社会貢献に参加できるプラットフォームを構築します」

産直ECに新たな可能性

先述の「ブロックチェーン×おしながき」のスキームだが、同社では、2022年に導入を予定する。導入された場合、現実の畑・果樹を「おしながき」と紐づけ、権利をNFT化することで誰でも手軽にオーナーになることができるという。

自分がオーナーの畑・果樹でとれた野菜や果物は、自由に加工、配送することができ、NFT化された権利は、転売することが可能だという。転売することで、差益を出したり、転売される度に出品者には利益の一部が還元される仕組みになるとのことだ。

これまでもさまざまなECプラットフォームや関連サービスで、地域産品や生産物を販売する仕組みは提供されてきたが、今回、同社がリリース予定とする「おしながき」は、ブロックチェーン技術を用いて農地そのものを売買できるという点が斬新だと言えるだろう。

ブロックチェーン技術そのものの信頼性や、売買が過度に投機対象にならないか、あるいは土地そのものの管理や農作業の進捗管理など課題も少なからずあるものと見られるが、こうした新たな取り組みが成果を出すことになれば、ECそのものにも今までには無かった価値がもたらされることになるだろう。

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