株式会社いつもがEC専用冷凍・冷蔵倉庫スペースを5倍に拡充
株式会社いつもは、2021年8月1日より、埼玉県の「狭山センター」に食品専門倉庫を拡充すると発表した。食品EC化率の上昇と贈答需要の高まりを受け、EC専用冷凍・冷蔵スペースを5倍に拡充するという。
背景に食品EC利用の増加
「いつも」は、2020年10月にネット販売事業を強化したい飲食店向けに、都内の飲食店へ直接集荷、梱包し、受注から配送まで代行する「飲食店特化フルフィルメントサービス」を開始していた。
今回の食品専門倉庫拡充の背景には、新型コロナウイルスの感染拡大による中食需要の高まりや高齢者利用、贈答需要の増加で、食品ネット販売の利用の増加がある。また、単に「おいしい」「安い」「便利」というだけでなく、企業の想いやブランドのバックグラウンドといった情緒的価値や体験を重視する消費者が増えている。
大手食品、飲料メーカーからも食品D2C市場に参入する動きが活発化していることから、今後は大手とスタートアップが混在していくと予想される。
このような状況を踏まえて、同社ではさまざまなステークホルダーと適正な関係を保ちながら、健全な食品流通として機能することを考慮して食品専門倉庫の拡充に至ったという。
冷凍・冷蔵・定温の3温度帯での管理
既存の大田区センターに加え、今回の食品専門倉庫の拡充により、同社はこれまで課題であった「食品ECのボトルネックである人と場所の問題」を解消し、店舗・本部が商品開発・販促活動などのコア業務に専念できる環境の提供を強化していく構えだ。
狭山センターは、冷凍・冷蔵・定温の3温度帯での管理が可能。また、同社が提供する冷凍冷蔵フルフィルメントサービスは、ケース出荷だけでなく、バラピッキング・バラ出荷にも対応しており、バラピッキング月間20万点以上の出荷実績があるという。
タイムリーな波動対応
繁忙期による出荷量の増加などにも、柔軟かつ迅速に人を動かすことで、成長や物流ボリュームに応じたタイムリーな波動対応が可能となっている。
・定期的な出荷だけでなく、繁忙期の出荷量増にも対応してほしい
・出荷にかかるコストの削減をしたい
・出荷のリードタイムを少しでも短くしたい
・災害などのBCP(事業継続計画)対策として、東西に在庫を分散しておきたい
保管スペースなどをフレキシブルに調整
食品ECは、年間を通じて「流通量」や「保管量(商品の保管スペース)」に大きな変化が生じるため、保管スペースなどをフレキシブルに調整することが可能。卸出荷を含めさまざまな販売形態にも対応しており、法人向けや個人向けの物流業務だけでなく、ルート配送の実績もあるそうだ。
・さまざまなECサイトと物流倉庫の連携が可能
・物流の食品取扱専門チームによる土日祝稼働、即日発送対応が可能
・百貨店ギフト包装、熨斗対応など複雑な梱包仕様によるブランディング対応
・年末商戦・繁忙期に対して数値分析と事前対策を講じて、事前準備を立案
・ブランドの世界観や、製品による提供価値を情報発信し、消費者の声を収集・分析
2桁成長が続く食品EC市場
コロナ禍でEC市場が拡大したが、なかでも急拡大を見せているのが食品ECだ。矢野経済研究所の調査では、2021年度の市場規模は前年度比135.3%の460億円と推計されており、以降も当面は2桁成長が続くと予測されている。
「いつも」はこれまであらゆるD2Cのマーケティング支援を行ってきたが、今回の食品専門倉庫の拡充により、フルフィルメントも含めたサポート体制がさらに強固になったと言えるだろう。
これにより、コロナ禍と人口減少トレンドで厳しい業況が続く食品・飲食業界に新たな成功事例が生まれることを期待したい。