2020年の国内BtoC-EC市場規模は830億円のマイナス、物販は12.2兆円で21.7%伸長【経済産業省調査】
経済産業省は「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」を実施し、日本の電子商取引市場の実態等について調査した。ここではその結果について、ポイントを絞って見ていく。
BtoC-EC市場は830億円の減少
2020年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、19.3兆円(前年19.4兆円、前年比0.43%減)とほぼ横ばいの結果となった。
また、2020年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は334.9兆円(前年353.0兆円、前年比5.1%減)に減少した。
新型コロナウイルス感染症対策として、外出自粛やEC利用が推奨された結果、物販系分野の大幅な市場規模拡大につながった一方、主として旅行サービスの縮小に伴って、サービス系分野の市場規模は大幅に減少した。
その結果、物販系分野の大幅な伸長分とサービス系分野の大幅な減少分が相殺され、BtoC-EC市場規模全体としては、830億円の減少となった。BtoC-EC市場規模が増加しなかったのは、今回で23回目を迎える本市場調査開始以降、初めてのことだ。
一方、EC化率は、BtoC-ECで8.08%(前年比1.32ポイント増)、BtoB-ECで33.5%(前年比1.8ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展している。
物販系分野のBtoC-EC市場規模は21.7%増
本調査が対象としているECには、物販系分野だけでなくサービス系分野やデジタル系分野の数字も含まれている。
日本国内のBtoC-EC市場規模を分野別に見ると、2020年の物販系分野のBtoC-EC市場規模は12.2兆円で、2019年と比較して21.7%伸長。一方、サービス系分野は約4.6兆円で対前年36.1%のマイナスとなった。
・サービス系分野:旅行サービス、飲食サービス、チケット販売、金融サービスなど
・デジタル系分野:電子書籍、有料音楽配、有料動画配信、オンラインゲームなど
物販系BtoC-EC市場規模の内訳
物販系分野のBtoC-EC市場規模の内訳を見ると、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」(2兆3,489億円)、「衣類・服装雑貨等」(2兆2,203億円)、「食品、飲料、酒類」(2兆2,086億円)、「生活雑貨、家具、インテリア」(2兆1,322億円)の割合が大きく、これらの上位4カテゴリー合計で物販系分野の73%を占めている。
また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、全カテゴリーにおいて市場規模が大幅に拡大した。
EC化率については、「書籍、映像・音楽ソフト」(42.97%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(37.45%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(26.03%)において高い値となっている。
「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」は、製品の仕様が明確であり、事前の情報収集を通じて製品の内容や特徴を理解しやすいという点で、ECとの親和性が高い。また、「家具・インテリア」についても、各家庭の事情に応じてサイズや色など多彩なニーズがあるために、売場や在庫の制約がないECとの相性が良いと言える。
日・米・中における越境ECの市場規模
2020年、日本・米国・中国の3か国間における越境ECの市場規模は、いずれの国のあいだでも増加した。
中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆9,499億円(前年比17.8%増)、米国事業者からの越境EC購入額は2兆3,119億円(前年比15.1%増)であり、昨年に引き続き増加している。
「コロナ禍におけるEC市場の拡大」が喧伝されているが、物販系分野のBtoC-EC市場規模が対前年21.7%、デジタル系分野が14.9%のプラスであるのに対し、サービス系分野は36.1%のマイナスと、くっきりと明暗が分かれる形となった。
今後、ワクチンの普及で生活者の暮らしや行動に変化が見込まれる中、2021年から2022年にかけてのEC市場の動向からも目が離せない。