消費者庁 表示は企業責任で──健食新制度、国の関与を否定
消費者庁が検討を進める健康食品の新たな機能性表示制度について、企業の自己責任による表示制度とする方針を明言した。日本健康・栄養食品協会(日健栄協)では国の支援を得た上での第三者認証制度の道を模索していたが、国が関与した形での実現は、「極めて難しい」と否定。機能性表示は企業責任で行い、国は一切関与しない。10月7日、国際栄養食品協会(AIFN)が行った制度改革を巡るシンポジウムで明らかにした。
規制改革会議で健食の新たな機能性表示制度が導入されることが決まって以降、国が企業の自己責任で表示を行う「米国型」を志向する一方、日健栄協では国の支援を得た上で独自の機能性評価法を確立、第三者機関が機能性評価・認証を行う制度を目指していた。
消費者庁では、第三者認証制度を検討しない理由について、(1)技術的に不可能であること、(2)閣議決定の内容にそぐわないことをあげた。
機能性評価は海外を含めて評価法が確立されておらず、評価主体によって結果が異なる。評価に向けた学術論文の抽出を巡っては、出版バイアスや利益相反の問題もある。評価手法が確立され、第三者への委託においても一定の水準で成果が得られる安全性確保と異なり、「評価結果が同じになるか分からないものを国の結果と同等とみなすのは難しい」(食品表示企画課・塩澤信良食品表示調査官)とした。国が特定の機関を認定するのは、実態として国が結果責任を負うことになり「企業等の責任において機能性を表示できる」とする閣議決定の内容とも異なる。
また、機能性評価を巡っては日本抗加齢医学会が、独自に評価ガイドラインを策定することを検討している。こうした外部へのガイドライン策定の依頼にも「全く考えていない。ガイドラインを策定するかどうかも決まっていない」(同)とした。
新制度は、消費者の誤認を生まない制度とすることを前提としており、消費者庁では「有効性」「表示のあり方」について、近く数千人規模の消費者意向調査を開始。調査結果をもとに年度内に制度案を作成する。5~6月をめどに事業者や消費者団体、学識経験者による検討の場を設け、制度を検討していく。「オープンな場での検討を行う必要があり、特定の団体ありきで進めることはない」(同)とした。
これに対し、同日のシンポジウムでは日本抗加齢医学会理事であり、第三者認証を提唱していた森下竜一氏は、製薬業界で学会が果たしている役割を例に「国の関与が得られなくとも民間の専門集団(注・学会のこと)がガイドライン等を策定していくこと自体は、消費者庁の考えと矛盾しない」とコメントしている。
製薬業界では、例えば10数種類ある高血圧薬から最初に使うべき高血圧薬を抗加齢医学会が推奨。国の関与はないが高血圧の関連学会や医師らの合意を得、約7割の医師が学会など専門組織の判断を重視し、これに従っているという。
疾病リスク低減表示「難しい」
10月7日、AIFNが行ったシンポジウムでは、消費者庁が制度設計を巡る主な検討課題として、(1)安全性確保に向けた施策、(2)機能性表示を行うための科学的根拠の要件、(3)消費者の誤認を招かない表示のあり方、(4)機能性表示の対象範囲、(5)届出制──を挙げた。これに対し出席した参加者から質問が相次いだ。一問一答は以下の通り。
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──表示に瑕疵があった場合の企業責任は。
「監視執行体制と含めて検討する。ただ、6月には食品表示法が公布されており、健食を巡る現行の表示関連法においてもすでに懲役、罰金刑がある。それらの対象になると想定される」
──法人の解散、設立を繰り返して違法行為から逃れる事業者もいる。届出制に法的拘束力はあるのか。
「そのような問題は認識している。届出制の可否、要件もまだ決まっていないが、科学的根拠の提出を要件とするなど怪しい企業が届出を行えないようにするなどの方策を検討する」
──届出内容にさまざまな制約を課すことでコストが高まると中小企業の負担になってしまう。
「必要な科学的根拠はトクホと異なり成分ベース。自社試験でなくとも販売を行う以上、おおやけの論文など科学的根拠の収集は必要なこと」
──例えばローヤルゼリーを例にしてもさまざまな設計の素材がある。自社で使うローヤルゼリーのデータを提出する必要があるのか。
「あった方が良いが、必須とすれば『トクホと同じだ』という指摘もある。これから検討する」
──薬事法や医薬品の範囲を示す基準との調整はどうしていくのか。
「何も決まっていないが論点の一つ。有識者による検討を受けて厚生労働省と調整を行う」
──機能性表示の対象範囲(構造機能表示、疾病リスク低減表示)について。疾病リスク低減表示の扱いはどうするのか。
「消費者庁としての見解ではなく、個人的な考えではあるが新制度の対象とするのは極めて難しい。EU、米国ともに疾病リスク低減表示は国の管理のもとで運用されている。企業責任では難しく、疾病名の表記は消費者の誤認を招く要因にもなる。適切な時期に医師にかからず診療機会を逃してしまっては本末転倒になる」