ポストコロナ時代に楽天が描く未来とは?「Rakuten Optimism 2021」三木谷氏基調講演レポート

ECのミカタ編集部

三木谷浩史・楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長

新型コロナウイルスの影響により、世界は約2年にわたって大きな変革を求められた。コロナ禍にはネガティブな側面が多いのは事実だが、リモートワークやECへの転換など、デジタル技術が進んだ今の時代だからこそ実現できたことも多い。その意味で、コロナ禍は新時代に向けた変革を加速させるきっかけにもなった。

楽天グループが主催する「Rakuten Optimism」は、デジタルの新たな可能性を切り拓くためのビジネスカンファレンスだ。日本では2019年に第1回目が開催され、2回目を迎えた今年は10月12日・13日の2日間にわたってオンラインで開催され、約9万人が参加。約26.6万の総視聴回数だった。

1日目の冒頭では、楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏が、「いよいよ迎えるポストコロナ時代」をテーマに基調講演を行い、ポストコロナ時代に生じるであろう社会の変化や、楽天グループの戦略等について語った。

コロナ禍で進む社会のイノベーション

当初、日本のワクチン接種は世界に遅れを取っていたが、すでに1回目のワクチン接種をした人は8割近くにのぼり、新規感染者数も減少傾向にある。新規感染者数の減少に伴い、10月に入ってからは経済活動も活発化しつつあり、中国やアメリカをはじめ世界経済にも復調の兆しが見られる。

ポストコロナの時代には、コロナ禍で変化したまま元に戻らないものと、コロナ禍が収束したら元に戻るものがある。コロナ禍は、ある意味で、デジタルトランスフォーメーションや社会生活の変革を一気に進めるポジティブな要素もあった。

これまで「対面」が原則だった会議やセミナーなどがコロナ禍でオンラインに移行した結果、必ずしも対面でなくてもいいこともあるとわかるなど、ライフスタイルの変化の中で一人ひとりに気づきがあり、生活をより便利に、楽しくするための新しいアイデアも生まれた。

この「Rakuten Optimism 2021」も、オンライン開催にしたことで世界各地から7万人以上の人が視聴できるようになっており、デジタルトランスフォーメーションのメリットは大きいという。

コロナ禍で多くの人が気づいたのは「サステナビリティ」の重要性だ。「地球温暖化をはじめとする環境問題への対処や、多様性の受容と活用など、コロナ禍はイノベーションによって新しい社会を築いていく大きなきっかけになったのではないだろうか」と三木谷氏は語る。

各領域で業界平均を上回る業績を達成

モバイルが普及するにつれて社会が大きく変革しており、インターネット中心の世界になりつつある。楽天グループはそうした社会の波に乗り、インターネットの普及とともに成長を遂げてきた。

楽天グループはコロナ禍でも成長を続けており、EC・トラベル・広告・カード・銀行といった各事業領域において業界平均を大きく上回る業績を残している。

国内EC流通総額に関しては、業界平均が-1%であったのに対し、楽天グループは2年間の平均成長率+16%を達成している。また、トラベル事業は業界平均が-56%であったが、楽天トラベルは2年間の平均成長率が-14%と、マイナス幅を大幅に抑えている。

その結果、楽天のサービスはEC(3大プラットフォームにおける成長率)、クレジットカード(ショッピング取扱高)、オンライン銀行(口座数)などで日本一の座を獲得した。

1997年にスタートした楽天市場をはじめ、国内EC流通総額は毎年2桁の成長を維持。2021年度の国内EC流通総額は5兆円を目標にしている。

こうした楽天のエコシステムを支えているのが、楽天ポイントの存在だ。2021年8月時点で累計発行ポイントは2.5兆円相当を突破。日本国内の主要共通ポイントで顧客満足度No.1を獲得しており、ポイント消化率は90%以上。楽天グループが提供するさまざまなサービスの利用促進に貢献している。

新時代の物流プラットフォーム構築に向けて

スマートフォンの普及や5Gの登場など、ITの進歩に伴い、楽天グループもさまざまな形でビジネスモデルをアップデートしてきた。最近のトピックとしては、楽天市場における3980円の「送料無料ライン」導入が挙げられる。現在約92%のショップがこの「送料無料ライン」を導入しており、楽天市場における送料体系のスタンダードとなっている。

流通の分野では、2021年7月に日本郵政との共同出資により新物流会社「JP楽天ロジスティクス株式会社」を設立。それ以前は人口カバー率70%弱の独自配送サービス「Rakuten EXPRESS」があったが、「全国津々浦々に安く早く届けるためには、すでにデリバリーネットワークを持っている日本郵政と組むのがいいだろう」と考えたという。

今後は、既存の物流拠点のシームレス化、新規物流拠点の構築、物流DXプラットフォームのオープン化により、新しい時代の物流プラットフォームとしてさらなる進展を図る狙いだ。三木谷氏は、「店舗様、ユーザー様にとって、どこよりも安くて早くて正確で、心のこもった物流を目指す」と宣言する。

フィンテックとECの有機的な結びつきが強み

楽天フィンテック経済圏の3つの柱となっているのが「楽天カード」「楽天銀行」「楽天証券」だ。楽天銀行始動時の預金残高は数千億円だったが、預金残高はまもなく7兆円、口座数1100万に達している。その資産を活用し、楽天証券との連携によって楽天カードのリボやキャッシングを証券化して引き受けるといった取り組みも行われている。

三木谷氏は、これら銀行・カード・電子マネー・証券・生命保険・損害保険といったフィンテックが統合され、ECと有機的に結びついている点が「世界でも楽天グループにしかない強み」だと胸を張る。

また、最近注目されているモバイル事業は、「MNO事業」「エコシステム連携」「グローバル展開」のトライアングル戦略がポイント。国内1億以上の楽天会員基盤を活用し、通信事業のみならず、楽天グループのサービスとの連携を図れる点が、国内外のほかの通信事業者とは大きく異なる強みである。

また、楽天モバイルの技術は他社とは違い、世界初の完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワークだからこそ、柔軟性や高いセキュリティレベル、投資金額の節約などが担保できるという。

これらを強みとして、海外におけるモバイルプラットフォームの販売も決定しており、今後は通信事業のグローバル展開を加速させていく予定だ。

すべてがインターネットにつながる時代へ

インターネットの誕生から現在にいたるまで、そのスピードは加速度的に進歩した。今後は「5G」「AI」「ブロックチェーン」という3つのキーワードによって、さらなる変化が予想される。三木谷氏が具体例として挙げるのが、「スマートフォンのネットワークインフラ化」「全産業でのIoTの加速」「ゼロキャッシュ社会」だ。

このような未来に、楽天グループが通信事業に参入した狙いがある。スマートフォンはもはや通信機器であるだけでなく、ショッピングデバイスでもあり、テレビでもあり、ヘルスメーターでもあり、その他にもさまざまな機能や役割を備えている。5Gによってあらゆる機器がインターネットにつながるようになると、工場、物流倉庫、交通機関などすべてが有機的に連動するようになるだろう。

すべてを効率良くインターネットに接続するため、楽天グループは全国を網羅したナローバンドIoTを超低価格で提供することに取り組んでいくという。

また、ゼロキャッシュ時代においては、ブロックチェーンの活用によって送金手数料を大幅に削減したり、紙ベースだった業務をペーパーレス化したりできるようになる。「行政においても、古い時代の仕組みや規制、法律などは新しいものに変えていかなければならない。シェアリングエコノミーなど、新しい枠組みに合った仕組みを国レベルで作っていかなければらならない」と三木谷氏は説く。

最後は「これから、大きく夢のある未来に向けた変革のなかでは、皆さんが思いきらなければならないこと、多少の痛みを伴うこともあるかもしれないが、その先には“楽天的”な良い未来が待っているはずだ」と基調講演を締めくくった。

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