ネット広告市場は2024年度に約3.3兆円まで拡大【矢野経済研究所調査】
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のインターネット広告市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。ここではその概要についてポイントをしぼって見ていく。
ネット広告市場は昨対比107.4%の2兆1,290億円に
近年、国内のインターネット広告市場は成長を遂げてきたが、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛や店舗の休業・営業時間短縮の影響などから、一時的な広告出稿の抑制がみられた。
しかし、下期以降は消費の回復や企業のDX化が急速に進んだことで、市場の伸長率は鈍化したものの最終的にはプラス成長となり、2020年度のインターネット広告市場規模は前年度比107.4%の2兆1,290億円と推計する。
2021年度は巣ごもり需要など景気回復を背景としたEC市場の成長やユーザーのネット通販利用の増加などにより、広告主企業のインターネット広告へのシフトで、2021年度のインターネット広告市場は前年度比114.5%の2兆4,370億円まで拡大する見込みとしている。
コロナ禍で動画広告市場が急成長
コロナ禍における変化として、巣ごもり需要での動画視聴者数の増加から、広告メディア(フォーマット)において動画広告が増加傾向にあるようだ。動画広告市場の成長背景としては、YouTubeやTikTokなどの動画配信プラットフォームが急成長したことと、動画広告の媒体が増えていることを挙げている。
また、5G(第5世代移動体通信システム)など通信環境の進化により、動画コンテンツの提供速度やクオリティも充実してきており、企業やサービスのブランド向上を目的とするブランド系広告主の出稿が増えている。
なお、最近のトレンドとして、TVerなどのコネクテッドTV(インターネットに接続されたテレビ)広告市場が伸びている。この1年、TVerは巣ごもり需要を捉え、ユーザー数が約2倍に伸長したとされる。このようなサービスにより、マルチデバイスでの視聴が可能となり、今後はテレビとインターネットの境目が薄くなる可能性もあるとしている。
また、テレビCMからインターネットの動画広告にシフトする広告も増えている。今後はデバイスを跨ぐユーザー(視聴者)が増え、動画広告市場はさらに成長する見通しであるとしている。
ネット広告へのシフトが加速
今後、AIを活用した広告運用手法などさらなるDXの進展により、他の媒体からインターネット広告へのシフトが進むものと思われる。また、通信環境の進展とデバイスの拡張により今後インターネット広告の領域がさらに拡大する可能性もあると分析。
広告種類別では、ソーシャルメディア広告や動画広告などの運用型広告の拡大などにより、2024年度の国内インターネット広告の市場規模は約3.3兆円にまで拡大するものと予測している。
新型コロナウイルスによる感染拡大以前から、広告市場もデジタル化が進んでいたが、ここでもコロナ禍によって、その流れが一気に加速していることが示されたようだ。ECビジネスを考える上でも、ネット広告施策は不可分とも言え、最新の市場動向と消費者マインド、消費スタイルを把握することが、今後も重要となってきそうだ。