EC物流倉庫とは?特徴や業務の流れ、費用の内訳や委託先の選び方まで徹底解説
EC物流倉庫とは?
インターネット上で行う商品・サービスの売買を「EC(=電子商取引)」と言う。EC事業に関する物流は「EC物流」と呼ばれ、その拠点となる「EC物流倉庫」は、物流プロセスのなかでも重要な役割をもつ。まずは、EC物流倉庫の特徴について見ていこう。
EC物流倉庫の特徴
ECに特化した「EC物流倉庫」は、EC事業における物流プロセスのうち、商品の保管から流通加工、出庫までを行う場所だ。近年はインターネットが広く普及し、自社サイトやモール型サイトなどで商品を販売する企業が増えており、EC関連の物流量もそれに伴って増加傾向にある。EC物流倉庫の重要性は、ますます高まっていると言えるだろう。
詳しい特徴は以下の通り。
個人宅へのtoC出荷がメインになる
EC物流倉庫の場合「BtoC」を扱う倉庫の割合が多い。なぜかと言うと、EC物流の対象は、インターネットを介して買い物をする「個人」または「一般家庭」となるケースがほとんどのためだ。この場合、出荷パターンが決まっていて、細かなカスタマイズなどは不要な場合が多い。
一方で、法人(BtoB)への出荷が多い一般的な物流倉庫では、送り先によって出荷方法が異なったり、指定された伝票を用いたりする必要があるなど、BtoC倉庫に比べて、より複雑な作業が必要となる。送り先として法人または個人のどちらをメインに扱うかで、EC物流倉庫での業務は異なることを把握しておきたい。
多品種小ロットでの在庫管理
月間出荷数1,000以下などの小ロットに対応しているEC物流倉庫も多い。そのため、ビジネスの成長段階にいる事業者やスポットで発生する物流作業など、幅広いニーズに対応可能となっている。
また、EC物流倉庫はBtoB向けの物流倉庫と比べて、多種多様な商品の在庫管理に対応可能だ。ファッションや雑貨、日用品、電化製品はもちろん、食料品・飲料などの温度管理が必要な商品にも対応している。
注文から納品までの業務スピードが求められる
今や「オンラインショッピングで注文した商品が次の日に届く」ことはめずらしくない。もちろん物流拠点や対象地域など複数の条件を満たす必要はあるが、配送スピードはEC運営を成功させるうえで重要なポイントとなる。
EC物流倉庫では消費者からの注文後、保管している商品の出荷作業がはじまる。物流倉庫によって使用しているシステムやデータの管理方法は異なるため、どのような効率化に取り組んでいるのか確認しておくことも大切だ。
さまざまな流通加工に対応可能
EC物流倉庫では、検品、タグ付け、ラベル貼り、梱包、ギフトラッピング、チラシやDMの封入などの流通加工にも対応している。また、食品の加工やお菓子の箱詰め・袋詰めなどをおこなっているEC物流倉庫もある。
これらは自社の業務負担を軽減しつつ高品質なサービスを提供し、さらに競合他社との差別化を図るための重要な物流業務だ。EC物流倉庫は単純に「商品を保管・発送すれば良い」というものではなく、売上アップにつながる業務体制も重要となる。
アフターフォローなど体制への品質が求められる
オンラインショッピングの場合、消費者は画像や文章のみで商品の購入を決断することになる。そのため、届いた商品を見て「思っていた色やサイズではなかった」などの理由で、返品・交換を希望する消費者は少なくない。もしくは、販売者側のミスによる返品・交換となることもあるだろう。
ECサイトで購入された商品の返品・交換は消費者からの連絡によって処理を行うことになる。もし返品や交換などの処理に時間がかかると、消費者へのブランドイメージ低下やクレームに繋がることもあるだろう。そのため、EC物流倉庫は素早く対応できる体制を整えておく必要がある。
EC物流倉庫の種類
EC物流倉庫は大きく以下の4タイプにわけられる。事業内容や委託したい業務にあわせて選ぶと良いだろう。
販売主体タイプ
販売主体タイプのEC物流倉庫は、販売体制をサポートする環境が整っている物流倉庫のこと。商品の入荷後、注文受付から発送手配、返品処理など、EC運営に欠かせないほとんどの業務を任せられる。
有名な販売主体の物流倉庫には「FBA(フルフィルメントBy Amazon)」がある。自社業務の負担軽減には役立つものの、細かなカスタマイズができない点に注意が必要だ。
業種特化タイプ
特定の業種に特化したEC物流倉庫もある。たとえば、食品業界や医療業界であれば、商品の保管に適した温度管理ができる物流倉庫を選ばなければならない。他にも、アパレル業界であれば検針やプレス加工などをおこなう物流倉庫もある。
自社で物流倉庫を設置・維持するとなれば多くのコストがかかるが、機械や設備の整ったEC物流倉庫を利用することにより、高い費用対効果が見込めるだろう。
倉庫サービス主体タイプ
カスタマイズ性を求めるのであれば、倉庫サービス主体タイプのEC物流倉庫を選ぶとよいだろう。倉庫によってサービス内容は異なるが、電化製品やパソコンなどの部品の組み立てや、木材やガラス材、生鮮食品のカッティングなどの流通加工が委託できる。
また、タグ付けやラベル貼り、梱包・ラッピング、メッセージカードの封入など、自社のニーズに柔軟に対応してくれる。多くの業務を委託するほど自社の負担は軽減されるが、その分コストがかさむことになる。
システム会社主体タイプ
システム会社主体タイプとは、物流倉庫がシステム会社と提携しているEC物流倉庫のこと。システム会社が自社の商品や希望にあわせた物流倉庫を紹介してくれるため、より最適な倉庫探しが可能になる。
一方で、基本的に物流倉庫と直接のやりとりがない関係上、委託時に3社間で認識のズレによるトラブルが発生しやすい。システム会社に相談するタイミングでこちら側の意見や要望を伝えるなど、しっかりとコミュニケーションを行うことがスムーズに最適な倉庫探しにつながるだろう。
EC物流倉庫で発生する業務作業の流れ
ここからは、EC物流倉庫で発生する業務を、順を追って見ていこう。
商品入庫・検品
物流倉庫業務は「入庫」から始まる。入庫とは、商品を倉庫に搬入し、適した保管場所へ置いていく作業のことだ。どこからどのような商品が何個届いたのか、確認や記録も同時に行う。
次に、入庫した商品に欠陥や不備がないか確認する「検品」を行う。入庫や検品を正確に行うことで、高品質の商品を素早く配送ルートにのせることが可能となる。
保管
検品された商品は、注文が入るまで所定の位置で保管される。商品が劣化・破損しないように保管するのはもちろん、スムーズにピッキングできるようにロケーション設定をおこなう。
商品の保管には「平置き」や「ラック(棚)」などの置き方があり、商品のサイズなどによって決められる。
ピッキング・出荷前検品
商品の注文が入ると、倉庫に「出荷指示」が入り、これを元に必要な商品を必要な数だけ取り出す。この作業が「ピッキング」だ。物流倉庫の自動化が進んでいる場合は、ピッキング作業をロボットが行うケースもある。ピッキング後は品質や数量をチェックするための「出荷前検品」がおこなわれる。
流通加工
続いて、荷主の依頼に基づき「流通加工」を行う。流通加工とは、商品に付加価値をつける目的で行われる一連の加工作業を指す。主な流通加工として、「商品タグや値札を付ける作業」や「ギフト用ラッピング」「商品の詰め合わせ作業」などがある。
梱包・発送
ピッキングが完了したら、出荷可能な状態にする「梱包」を行う。消費者が到着した商品を見て不愉快に感じることのないよう、慎重かつ丁寧な作業が必要だ。最終チェックを経て、配送トラックに商品を積み込めば「発送完了」となる。
EC物流倉庫の業務で重要なこと
EC物流倉庫においては「スピード感のある対応」が重要となる。ECサイトを利用する消費者は「なるべく早く購入した商品を手にしたい」と考える傾向が強いためだ。物流業務の迅速化が、消費者の満足度向上につながるだろう。
物流業務をより迅速に行うために、意識するとよいポイントは次の通り。
●納品書の代わりに、メール送信を行うなど同封するものを簡素化する
●「過剰包装をしない」「ワンタッチケースを使う」など、素早く梱包できるよう工夫する
●良く売れる商品は最前列の棚に置いておくなど、倉庫内のレイアウトに配慮する
このほか、物流作業の前段階に位置する「受注処理」も、EC物流を考える上で大切にしたいポイントだ。受注処理とは、ECサイトからの注文データを受け付ける作業のこと。近年では、一元管理ソフトを導入するなどデジタル化をして、さらなるスピードアップに努めている物流倉庫も多い。
競合の多いインターネット市場においては、物流という観点から顧客満足度を高めるための施策を行うことが、重要なポイントとなるだろう。
EC倉庫業務を外部委託するメリット・デメリット
ECサイトを運営する企業のなかには、物流倉庫を持たず、自社のスペースだけで商品を保管しているケースも多く見られる。商品が少ないうちは良いが、事業が拡大するにつれて商品を保管するスペースがなくなってしまうことも考えられるだろう。
そのようなときに検討したいのが、EC倉庫業務の外部委託である。ここからは、倉庫業務を委託する場合のメリット・デメリットを紹介する。
EC倉庫業務を外部委託するメリット
EC倉庫業務を外部委託する場合に得られるメリットは、主に3つ挙げられる。1つ目のメリットは「人的ミスの削減」だ。EC事業が拡大し、物流量が増加してくると、人的ミスの発生リスクが高まるだろう。物流の専門業者なら、高い専門知識を保有しているケースが多いため、ミスを回避できるほか、物流品質の改善・向上が期待できる。
2つ目のメリットは「リソースを他の業務に振り分けられる」ことだ。倉庫業務に割いていた人員や時間などのリソースを、生産性の高い事業に振り分けることができ、企業の拡大・成長につなげられるだろう。
最後に「注文数・顧客増加に対応しやすい」点もメリットに挙げられる。自社のEC事業を拡大していく場合も対応を任せられるほか、繁忙期・閑散期がある企業の場合は、倉庫業務を委託することで無駄な人件費も削減できるだろう。
EC倉庫業務を外部委託するデメリット
EC倉庫業務を外部委託する場合のデメリットは、主に次の3つだ。1つ目は「物流ノウハウを蓄積できない」点だ。将来的に内製化を考えている企業にとっては、大きなデメリットとなるだろう。
次に「柔軟な体制がとりにくい」ことも知っておこう。商品に手書きメッセージを同封するなど、発送先にあわせた対応はとりにくくなってしまう。
最後に「情報伝達が遅れる」こともデメリットだ。自社で倉庫を運用する場合に比べると、伝達にタイムラグが生じてしまう。トラブルが起きた際などの対応が遅れてしまうといった点が懸念されることも把握しておきたい。トラブル発生の際に、責任の所在を明確にできるよう、倉庫業務の運用体制を確認しておくことも必要だ。
EC物流倉庫サービス利用にかかるコスト
物流倉庫を外部委託する際には、料金体系を十分把握しておくことが重要である。ここでは、外部委託にかかるコストを固定費と変動費に分けて紹介する。
固定費
外部委託する上で、定期的に支払わなければいけない費用が「固定費」だ。主な固定費は次の通り。
●基本料金
●商品の保管費用 など
基本料金は、主に「システム利用料」となる。近年では物流管理がシステム化されていると先述したが、倉庫作業を行うにあたり、必要な情報の収集・入力を行うための費用である。
また、商品の保管するための費用も固定費として支払いが必要となる。保管費用は、スペースごとに発生するのが一般的だが、倉庫の立地によって相場が異なるほか、委託先によっても違いがある。費用対効果を検証した上で、自社商品の保管に適した倉庫を検討したい。
変動費
依頼内容によって変動する費用が「変動費」だ。主な変動費は次の通り。
●入庫費用
●梱包費用
●発送費用 など
単価設定方法やオプションは委託先によって異なるほか、それぞれのケースにあわせて、細かな料金設定を設けている場合が多い。自社商品の種類や扱う個数から、見積もりを取って比較できると良いだろう。
EC物流倉庫業務の委託先を選定するポイント
ここからは、EC物流倉庫の委託先を選定する上で確認しておきたいポイントを紹介する。
サービス内容
倉庫業務と一口に言っても、委託先によってサービス内容は大きく異なる。自社にとって必要な作業が可能かどうかを確認することが大切だ。委託先検討時には、資料請求や見積もりをとって、サービス内容を細かくチェックする必要がある。
ECサイトとのシステム連携
自社でECサイトを立ち上げている場合、委託先がもつ「在庫管理システム」との連携が上手くいくかどうかも、選定する際のポイントとなる。ECサイトとの連携がうまくいかない場合は、余計な手間や時間がかかってしまうため、契約前に確認しておきたい。
倉庫の立地
EC倉庫業務の重要なポイントとして「スピード感のある対応」を挙げたが、その実現に必要な要素が「倉庫の立地」だ。立地によっては、天候や交通状況により配送に時間を要してしまうこともあるが、配送遅延は顧客の信頼を落としかねない。スムーズな交通経路が確保できている、物流倉庫を選ぶのがオススメだ。
まとめ
EC物流を扱う上では、自社に適した物流倉庫を活用することが大切だ。倉庫業務においては、BtoCをメインに扱うケースが多いため、スピード感のある対応が求められる。
自社で物流倉庫を用意できない場合は、外部に委託することも方法の一つだ。委託先によって、サービス内容やコストなどは異なるため、自社に適した委託先を検討できると良いだろう。EC倉庫業務の内容を知って、自社に適した物流管理方法を確立しよう。
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