ECサイトのデータ分析方法とは?見るべき6つの指標と分析の流れ、無料で使えるツールも解説
ECサイトの分析を行う目的
ECサイトで収益をあげたいのであれば、データ分析は欠かせません。むしろデータの分析をしないのは非常にもったいないといえます。なぜなら、顧客の行動から商品の売れ行きまで、営業を行う上で発生するあらゆるできごとをすべて数値化されたデータとして収集できることこそ、WEBサイトの大きなメリットであるからです。
収集したデータには、マーケティングに必要な顧客心理への理解やサイトの課題点を把握するための重要なヒントが現れています。これをサイトの成長のために活かさない手はありません。そのため、ECサイトの運営には、データの分析がつきものとなるのです。各データの数値をもとにKPIを定め、定期的にその達成度を確認し、利益拡大のためのPDCAを回していきましょう。
ECサイトのデータ分析で見るべきKPI
実際にECサイトの売上向上を目指すため、どのようなデータを分析すればよいのかを紹介していきます。
利益率
実店舗での販売や外商営業などあらゆる販売活動と同様に、ECサイトでも利益率は重要な指標です。
まず以下の式で利益を算出し、
利益=売上-経費
次のように利益率を計算します。
利益率=利益÷売上×100
経費は販売管理費や商品の仕入れ額、生産費用、人件費などです。ECサイトの場合、サイトの運営やモールへの出店に費用が掛かっている場合、その金額も含まれます。利益率を上げるためには、販売を拡大しつつ、経費を抑える必要があります。
売上高
こちらも販売活動で重要な指標となる数字です。ECサイトでは、売上高を次のように分解して考えます。
売上=集客数×CVR×客単価
売上を伸ばしたいときは、この集客数、CVR、客単価の3点の改善を検討してみてください。また、サイトの課題点がどこにあるかを見つけるときも、上記の計算式にもとづいて考えられます。たとえば、集客が好調であるにもかかわらず売上が伸びない場合、CVRや客単価の落ち込みが足を引っ張っている可能性があります。
アクセス数(集客数)
ECサイトにどれくらいの人が訪問してくれたかを示す数値で、先述したとおり、売上を構成する3要素の1つです。アクセスの数として考える数値には、指定の期間内でページが何回表示されたかをカウントするPV数、利用者の数をカウントするユニークユーザー数、訪問数をカウントするセッション数などいくつか種類があります。
ECサイトの集客手段には、WEB広告の出稿やSNSの活用、実店舗があればそことの連携などがありますが、重要なのは自サイトがターゲットとするユーザー層に対して的確に露出をさせることです。
ただ闇雲に集客を増やすのではなく、ターゲットユーザーのサイト訪問を増やさなくては、続いて紹介するCVRの低下を招いてしまうことになります。
CVR
CVR(コンバージョン率)は、サイトに訪問した人のうちの何パーセントが、運営者が定める目標(CV)を達成してくれたかを示すものです。転換率とも呼ばれますが、多くのECサイトでは購入をこのCVに置いているため、購入率と言い換えることもできます。
CVRを求める計算式は、下記の通り。
CVR=CV数(ECサイトの場合、多くは購入件数)÷アクセス数×100
CVRをあげるためには、サイトを訪れたユーザーに「買いたい」と思わせる工夫が必要です。
顧客単価
顧客単価とは、ひとりの顧客が、一回の購入で平均いくらの金額を使うかを示す数値です。こちらも、アクセス数、CVRと同様にECサイトの売上にダイレクトに影響します。
ECサイトの顧客単価は一般的にこう求めます。
顧客単価=売上高÷購入人数
顧客単価を上げると、同じ集客数でも利益をアップさせられます。商品ページに“合わせ買い”用としておすすめの関連商品を表示させたり、割引を利用してまとめ買いを訴求したりするなどの施策が一般的です。
生涯顧客単価(LTV)
ECサイトで生涯顧客単価を考える際、その数値は1年間の間にひとりの顧客がサイトで使う平均金額のことを表しています。Life Time Valueを略してLTV、とも呼ばれます。LTVを上げるためには、客単価のアップだけでなく、リピート購入獲得のための施策も考える必要があります。
データ分析の基本
ここからはより具体的に、どのようにサイトのデータを分析すればよいかを紹介します。
たとえば、サイト全体の直近3か月の状況を調査し、
【セッション】100,000
【CVR】1.0%
【顧客単価】5,000
【売上】500万円
という結果が出たとします。
このデータをただ出しただけで満足をしてはいけません。大切なのは、抽出した数値をどのように分析し、改善に役立てていくかです。ですが、初心者にとってみると、この数字の中でいったいどの部分に注目すればいいのか、また何を改善すべきなのかがサッパリなのではないでしょうか。
そんなときに知っておきたい、データを分析する際の基本の3ポイントを解説します。
1.課題点を決める(見つける)
あなたが今サイトで解決したいことが何なのかを考えてみてください。
データをただ漠然と観測したり、なんとなくで比較をしたりするのはNGです。なんのためにデータを分析するのか目的をはっきりさせましょう。
たとえば「もっと売上を上げたい」、「カート落ちが多いので改善したい」、「メルマガ経由での売上を伸ばしたい」、等々。それによってみるべき数字や、データ同士で比較する対象も変わってきます。
この解決したいことのイメージは、より具体的であればあるほど、分析の方向性も明快になります。「このページ、検索経由から沢山アクセスがあるけどCVしていないのはなぜ?」や、「このページはもっと送客増やせるのではないか?」というように、仮説を立てて考えるのもよいでしょう。
2.データを比較する
データ同士を比較することで、課題点がより浮き彫りになったり、あるいは打った施策の効果が出ているかを確かめられたりします。
このとき比較の軸となるのが主に以下の3つです。
①期間比較
前月や前年など過去の同じ期間と比べて現状の数値がどう変化しているかを観察したり、日々の平均値と比べて大きく数字の動いたりしている期間があれば、別の期間と詳細に照らし合わせてみます。
②目標比較
社内で設定した目標となる値まで、どの部分でどれくらいの差が出ているのか。また、他の社内データなどと比べて違いを探してみたり、競合と比べて違いを見つけたりなどを行います。
③セグメント間の比較
セグメントとは、データを抽出するときに設定する条件の切り分けのことです。ユーザーがサイトに使っているのがPCなのかスマホなのかというデバイスの違い、新規の顧客なのかリピート客なのか、年代別・地域別の違い、あるいはサイトに訪問して最初に閲覧したLPページや流入経路ごとに違いはあるかなどの見方があります。
単体で比較、あるいは複数を掛け合わせてセグメント分けをしてもよいでしょう。データ同士を突き合わせたら、そこに生じる違いを探してみてください。そのギャップにこそ、気づきのヒントが隠されています。
3.「CV」に近い指標から見る
具体的にどの部分から改善したらよいか迷ったら、ひとまず「CV」に近い指標から見るのが基本である、と思い出しましょう。ECサイトにとって1番シンプルな目的が、CVの獲得であるためです。
たとえばひとりの顧客が購入に至るまでの動きを
サイト認知(集客)→TOPページ→商品ページ→カートページ→購入(CV)
と5つのフローに分けた場合、CVに近い部分ほどより改善のインパクトが大きくなります。
つまり、同じ予算やリソースをかけるのであれば、集客数を増やす施策よりもカートページの改善に着手する方が得られる効果が大きい、というのがセオリーなのです。
ECサイト分析の流れ
実際にどのようなステップを踏んで分析をしていけばよいのか、サイト分析の流れを見ていきましょう。
ECサイトの解析
まずは必要なデータをそろえるため、サイトを解析します。
本記事でこの後詳しくご紹介しますが、ECサイトの解析には、無料で機能の充実したツールの利用が可能です。これらを用いて、分析のために必要となる数値を抽出します。
解析データをもとに分析
分析の際、基本となる視点はすでにご紹介したとおりです。今のサイトが持っている課題点や伸びしろがどこにあるのか、データの中から探します。たとえば、 サイト全体のCVR改善のため、チャネルごとの流入のデータを分析するとします。このうち、広告流入のセッションのCVRが他のチャネルと比べて低いことがわかりました。
そこで、低迷の原因として「1.LPに問題がある」「2.広告出稿の仕方(ターゲティングやキーワード)に問題がある」と2つの仮説を立て、さらにLPを訪れた顧客の動きを分析…というように、セグメントを切り分けて比較したりしながら分析を進めてこの仮説をより具体化していきます。
分析結果をもとに施策立案
さて、課題点の仮説を立てられたら、次はそれを解決するための施策の検討です。「会員登録ページの離脱率を下げるため、入力をスムーズにするためにシステムを改善する」「顧客ひとりあたりの購入点数を増やすため、“レジ前商品”のように、カートページにおすすめのついで買い商品を表示させる」などなど。
ここで基本の、CVに近い場所ほど改善インパクトが大きくなりやすいこともおさえておきましょう。万が一、どこから手をつけるのが適当であるか迷った際には、CVに近いページの問題からつぶしていくのがおすすめです。
施策実施後、効果検証
ひとつ施策を打ったら、一定期間後に必ず効果検証をしましょう。施策を検討した際と同条件でデータを抽出し、どのような変化が起きているか、また目標値まではどれくらいの差があるのかを比較します。
効果検証を怠ると、見当違いの施策に余計な予算やリソースを割き続けることになってしまいます。施策の実施によって、改善したいデータの数字は上がっているのか下がっているのか。
なお、万が一変化が見られないときには、施策が有効ではない(=仮説で立てたのとは別の問題点がある)のか、もしくは効果が得られるまでに時間がかかっている可能性が考えられます。目標とする値はいつまでの到達を目指すのかを決めておき、その軸にもとづいて検証の期間も設定してください。
まずは無料のデータ分析ツールでECサイトの状態を見てみよう
ECサイトのデータ分析に、まずは無料ツールから使ってみましょう。
以下に紹介するツールはすべて無料。いずれも、サイト運営の必需品と言っても過言ではないものばかりです。
サイトのアクセス状況を知ることのできるツールです。以下、略称のGAと呼びます。
GAにサイトを登録すると、次にあげるようなサイトでのあらゆるアクセス情報のデータを取得できます。
・訪問したユーザーの属性
・どのページがよく閲覧されているのか
・各流入経路のユーザー数や流入後の行動、どれくらいCVを達成しているか
・どのページで離脱されやすいのか
広告の効果測定や、サイト導線の改善などに有効です。
Google Search Console
ECサイトのSEO対策に有効なツールです。
Googleでどのような検索キーワードが使用されているのかや、自然検索をされたときのサイトの表示順位の推移、それを改善するためにサイトが解決すべき問題点などが確認できます。
Googleデータポータル
事業者が蓄積している膨大なデータの中から必要な情報をピックアップし、分析のためにわかりやすい見た目にしてくれるツールのことを、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールといいます。
Googleデータポータルは、GA・サーチコンソール・Google広告などのGoogleサービスだけでなく、他の広告サービスやSNSのデータとも連携させることで、サイトにまつわるさまざまなデータを集計できるBIツールです。なお、Googleサービスとの連携は無料で可能ですが、他プラットフォームとの連携には費用がかかりますのでご注意を。
GA、サーチコンソール、Googleデータポータルの基本機能はいずれもGoogleが無料で提供しているもので、Googleアカウントさえ持っていれば誰でも使用できるものとなっています。
Microsoft Clarity(ヒートマップ)
マイクロソフトが提供する、かなり高性能なヒートマップです。こちらも無料で使用できます。ヒートマップとは、ページの中で閲覧者の興味が集中しているのかはどこかなど、サイト上でのユーザー行動を可視化したものです。
Microsoft Clarityの主な機能は3種類で、「セッションの録画」「ヒートマップ」「インサイトの確認」となっています。ほぼリアルタイムで、ECサイトを訪問したユーザーの動きを分析できるツールです。
まとめ
ECサイトの運営を通して得られるデータは貴重な財産です。販売活動において重要なのは顧客を知ることですが、データにはその顧客の心理や行動を理解するために必要なヒントが秘められています。
ECサイトの分析、と言われると難しいイメージを持たれるかもしれませんが、この記事でご紹介した通り、基本の考え方さえ身に着ければ誰でもデータを改善に役立てることが可能です。
ぜひデータを有効に活用し、サイト改善に役立ててみてください。