
ECサイトのデータ分析方法。見るべき指標(項目)や、分析ツールを紹介
"ECサイトでは店舗への訪問から購入まで、すべてインターネット上で完結するため、ページごとのアクセス数や購入数、購入率の算出が容易です。
一方で、このようなデータの分析を正しく行わないとサイトとして成長していくことができません。
この記事では、ECサイトのデータ分析をテーマに、主な分析項目から分析の流れ、EC事業者が利用すべき分析ツールについて紹介していきます。"
ECサイトにおけるデータ分析の重要性
ECサイトにおけるデータ分析は、売上の向上や運営効率化のために欠かせません。
訪問者数や購入率、商品別売上などのデータを分析することで、「どの商品が人気か」「どのページでユーザーが離脱しているか」など、サイトの課題や改善ポイントを具体的に把握できます。
また収集したデータには、マーケティングに必要な顧客心理への理解やサイトの課題点を把握するための重要なヒントが現れています。
顧客の購買行動を分析することで、効果的なマーケティング施策やサイト設計の見直しが可能になります。
分析を怠ると、勘や感覚に頼った運営になり、成果が上がりにくくなります。データを根拠に運営方針を決めることで、効率良く収益を伸ばし、顧客満足度を高めることにもつながるでしょう。
ECサイトの主な分析指標(項目)
この章では、ECサイトのどのようなデータを分析すればよいか紹介します。
利益率
実店舗での販売や外商営業などあらゆる販売活動と同様に、ECサイトでも利益率は重要な指標です。
まずは以下の式で利益を算出します。
利益=売上-経費
次に利益率を計算します。
利益率=利益÷売上×100
経費は販売管理費や商品の仕入れ額、生産費用、人件費などが該当します。ECサイトの場合、サイトの運営やモールへの出店に費用がかかっている場合、その金額も含まれます。
利益率を上げるためには、販売を拡大しつつ、経費を抑えるのが基本です。
売上高
売上高は、販売活動の重要な指標です。ECサイトでは、売上を次の式で分解して考えます。
売上=集客数×CVR×客単価
売上を伸ばすには、集客数、CVR(コンバージョン率)、客単価の3つを改善しましょう。
また、課題を見つける際もこの式を活用できます。例えば、集客が順調でも売上が伸びない場合、CVRや客単価の低下が原因かもしれません。
アクセス数
ECサイトにどれくらいの人が訪問してくれたかを示す数値であり、先述した通り、売上を構成する3要素の1つです。
アクセスの数として考える数値には、指定の期間内でページが何回表示されたかをカウントするPV数、利用者の数をカウントするユニークユーザー数、訪問数をカウントするセッション数などいくつか種類があります。
ECサイトの集客手段には、WEB広告の出稿やSNSの活用、実店舗があればそことの連携などがありますが、重要なのは自サイトがターゲットとするユーザー層に対して的確に露出をさせることです。
ただ闇雲にアクセス数を増やすのではなく、ターゲットユーザーのサイト訪問を増やさなくては、CVRの低下を招いてしまうことになります。
CVR
CVR(コンバージョン率)は、サイトに訪問した人のうちの何パーセントが、運営者が定める目標(CV)を達成してくれたかを示すものです。
転換率とも呼ばれますが、多くのECサイトでは購入をCVとしているため、購入率と言い換えることもできます。
CVRを求める計算式は、下記の通りです。
CVR=CV数(ECサイトの場合、多くは購入件数)÷アクセス数×100
CVRを上げるためには、サイトを訪れたユーザーに「買いたい」と思わせる工夫が必要です。
あわせて読みたい:
転換率とは?平均や計算方法、ECサイトで転換率を上げる方法を解説
顧客単価
顧客単価とは、1人の顧客が、1回の購入で平均いくらの金額を使うかを示す数値です。こちらも、アクセス数、CVRと同様にECサイトの売上にダイレクトに影響します。
ECサイトの顧客単価は一般的に以下のように求めます。
顧客単価=売上高÷購入人数
顧客単価を上げると、同じアクセス数でも利益が上がります。商品ページに“合わせ買い”用としておすすめの関連商品を表示させたり、割引を利用してまとめ買いを訴求したりするなどの施策が一般的です。
生涯顧客単価(LTV)
ECサイトで生涯顧客単価を考える際、その数値は1年間の間1人の顧客がサイトで使う平均金額のことを表しています。
Life Time Valueを略してLTV、とも呼ばれます。LTVを上げるためには、客単価のアップだけでなく、リピート購入獲得のための施策も考える必要があります。
顧客属性
ECサイトにおける「顧客属性」とは、サイトを訪れるお客様の年齢、性別、地域、職業、趣味など、基本的なプロフィール情報を指します。
これを分析することで、どのような人がサイトを利用しているのか、商品のターゲットが合っているかを確認できます。
例えば、「20代女性が多い」と分かれば、商品のラインナップや広告のデザインをその層に合わせて最適化できます。また、地域データを分析することで特定の地域で人気の商品を発見し、配送条件やキャンペーンを改善するきっかけにもなります。
顧客属性を知ることは、効果的なマーケティング施策の立案や商品開発のヒントになるでしょう。
ECサイトのデータ分析の基本
ここからはより具体的に、どのようにサイトのデータを分析すればよいかを解説します。
例えば、サイト全体の直近3か月の状況を調査し、以下のような結果が出たとします。
- セッション 100,000
- CVR 1.0%
- 顧客単価 5,000円
- 売上 500万円
このデータを出しただけで満足してはいけません。大切なのは、抽出した数値をどのように分析し、改善に役立てていくかです。ですが、サイト運営の初心者からするとこれらの数字のどの部分に注目すればいいのか、また何を改善すべきなのかがわからない方もいるでしょう。
まずは、データを分析する際の基本の3ポイントを解説します。
1)課題点を決める(見つける)
まずは、あなたが今サイトで解決したいことが何なのかを考えてみることから始まります。
データをただ漠然と観測したり、なんとなくで比較をしたりしても意味がありません。なんのためにデータを分析するのか目的をはっきりさせましょう。
例えば「もっと売上を上げたい」「カート落ちが多いので改善したい」「メルマガ経由での売上を伸ばしたい」など、目的はさまざまです。目的によって着目すべき数字や、データ同士で比較する対象も変わってきます。
解決したいことのイメージは、より具体的であればあるほど、分析の方向性も明快になります。「このページ、検索経由から沢山アクセスがあるけどCVしていないのはなぜ?」や、「このページはもっと送客増やせるのではないか?」というように、仮説を立てて考えるのもよいでしょう。
2)データを比較する
データ同士を比較することで、課題点がより浮き彫りになったり、あるいは打った施策の効果が出ているかを確かめられたりします。
このとき比較の軸となるのが主に以下の3つです。
期間比較
前月や前年など、同じ期間と比べて現状の数値の変化を観察しましょう。また、日々の平均値と比較して大きく変動している期間があれば、ほかの期間と詳細に比較することで原因を分析できます。
目標比較
社内で設定した目標値に対して、どの部分でどれくらい差があるのかを確認しましょう。また、ほかの社内データや競合と比較し、違いを分析することも重要です。
セグメント間の比較
セグメントとは、データを抽出する際に設定する条件のことです。例えば、ユーザーのデバイス(PCやスマホ)、新規顧客かリピート顧客、年代や地域、訪問時に最初に閲覧したLPページ、流入経路などで切り分けて分析します。
セグメントは単体で比較するだけでなく、複数条件を組み合わせて分析することも可能です。データを突き合わせることで生じる違いを探し、そのギャップから新たな気づきを得られるかもしれません。
3)「CV」に近い指標から見る
具体的な改善点に迷った場合は、まず「CV(コンバージョン)」に近い指標から確認するのが基本です。ECサイトの主な目的はCVの獲得であるためです。
例えば、1人の顧客が購入に至るまでの流れを以下の5つのフローに分けて考えると、CVに近い部分ほど改善の効果が大きくなります。
サイト認知(集客)→TOPページ→商品ページ→カートページ→購入(CV)
同じ予算やリソースを使うなら、集客施策よりもカートページの改善に取り組む方が効果的といえるでしょう。

ECサイトのデータ分析手法
続いて、実際のECサイトの分析手法を例を挙げて紹介します。
カート離脱率の分析
カート離脱率は、「カートに商品を入れた人数」と「購入完了した人数」のデータから算出します。
まずは、カートページや決済ページのアクセス解析を行い、どのステップで離脱が多いかを特定することから始めましょう。
例えば、離脱理由を探るために「送料が表示されるページでの離脱率が高い」と分かれば、送料無料ラインの設定や送料の事前表示が有効です。また、ユーザーアンケートやヒートマップツールを使って、顧客がつまずく箇所を具体的に把握するのも効果的です。
商品別売上分析
商品別売上分析は、売上データを商品ごとに分け、購入数や売上額を確認する方法です。特に、期間別のデータを比較することで、売れ筋商品や需要が落ち込んでいる商品を特定できます。
具体的には、ECサイトの管理画面やGA4のEコマース機能を使って商品別のデータを可視化しましょう。また、売上データと在庫状況を組み合わせれば、在庫過多商品に割引キャンペーンを適用するなど、即時的な対策ができるようになります。
顧客セグメント分析
顧客を「購入頻度」「購入金額」「属性(年齢・性別)」などでグループ化し、それぞれの購買傾向を分析します。
例えば、リピート率の高い顧客にはポイントアップキャンペーン、セール利用が多い顧客には割引クーポンを配布するなどの施策が考えられます。GA4のセグメント機能やCRMツールを活用することで、セグメントごとのデータを抽出できます。
ECサイトのデータ分析ツール
ここでは、ECサイトのデータ分析をするうえで欠かせないツールを4つ紹介します。
(2024年12月更新)
GA4
Googleが提供する無料のウェブ解析ツールで、ユーザー行動を詳細に分析できます。ECサイトでは、訪問者数、ページビュー、コンバージョン(購入完了)などのデータを把握可能です。
GA4は、ユーザーの訪問経路やページ滞在時間、購入フローのどこで離脱が起きているかを可視化できます。特に「イベントトラッキング機能」を活用することで、ボタンのクリック数やカート追加の状況など細かい行動データを収集でき、カート離脱やコンバージョン改善のヒントを得られます。
GSC
Google検索結果におけるサイトのパフォーマンスを監視・分析するツールです。主に、検索キーワードや検索結果でのクリック率、インデックス状況を確認できます。
ECサイトでは、商品ページがどのキーワードで検索されているか、表示回数やクリック率が低いページはどれかを把握できます。また、モバイル対応やページ速度などの改善点を指摘してくれるため、SEOを最適化して検索流入を増やすのに役立ちます。
Googleデータポータル(現Looker Studio)
事業者が蓄積している膨大なデータの中から必要な情報をピックアップし、分析のためにわかりやすい見た目にしてくれるツールのことを、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールといいます。
Googleデータポータルは、GA・サーチコンソール・Google広告などのGoogleサービスだけでなく、他の広告サービスやSNSのデータとも連携させることで、サイトにまつわるさまざまなデータを集計できるBIツールです。
ECサイト運営では、売上、訪問数、コンバージョン率など、複数のKPIを1つのレポートにまとめて管理できます。これにより、日々のデータを効率的に確認し、売上の変化やキャンペーン効果を即座に把握することができるでしょう。
Microsoft Clarity(ヒートマップ)
訪問者がサイト内でどの部分をクリックしたか、スクロールしたかを可視化できる無料ツールです。ユーザー行動の詳細を「ヒートマップ」や「セッション録画」で確認できます。
ECサイトでは、ユーザーがどのボタンやリンクをよくクリックするか、どのページで離脱しているかを直感的に分析可能できます。例えば、カートページでスクロールが止まる箇所を発見すれば、その部分のデザインや説明文を改善することで、購入率アップにつなげられるでしょう。
ECモールのデータ分析機能
Amazonや楽天市場などのECモールでは、出店者向けにデータ分析機能が提供されています。
例えば、Amazonの「セラーセントラル」では、商品ごとの販売データやアクセス数、転換率(コンバージョン率)を確認でき、さらに広告のパフォーマンスデータも詳細に分析可能です。
同様に、楽天市場の「楽天RMS(楽天マーチャントサーバー)」では、商品別売上や訪問者数、購入者の属性、クーポン利用状況など、多角的なデータを閲覧できます。
これらのモールでは、膨大なトラフィックがあるため、自社サイトよりも大量のデータを活用したマーケティング施策が立てやすいという利点があります。
一方で、モール側の仕様やルールに縛られるため、自社サイトと比べて柔軟な分析が難しい場合があります。
例えば、モール内でのSEOや広告の効果測定が中心であり、サイト全体の設計変更や独自のキャンペーン追跡は難しいところがあります。
また、モールでは顧客情報が制限されており、購入者の詳細なデータ(メールアドレスなど)を直接入手できないことが多い点も、自社サイトとの大きな違いです。
ECモールのデータ分析機能は、モール内での売上最大化には有効ですが、自社サイトのデータ分析とは役割が異なることを理解しておきましょう。
ECサイトのデータ分析・戦略立案はプロのサポートで行うのがおすすめ
ECサイトのデータ分析や戦略立案を自社だけで行うのは、専門知識やツールの運用スキルが求められるため、ほとんどの方が壁にぶつかるはずです。
特に、膨大なデータから有益な情報を抽出し、具体的な施策に落とし込むには経験が不可欠。
一方、外注すれば、プロの知見を活かした正確な分析や、成果を出すための効率的な施策提案が可能になります。初期段階から外注することで、手間や時間を削減しつつ、確かな成果を期待できるでしょう。
ECのミカタでは、ECサイトのデータ分析代行をはじめ、ECサイト運営に関する外注先を無料でご紹介しております。何かお困りのことや、ECサイトを運営していく上で効率化されたいことなどがございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
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