優れた顧客体験の提供がカギ KPMGが【グローバル カスタマーエクスペリエンス エクセレンス リサーチ2021】を公表

ECのミカタ編集部

KPMGコンサルティング株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 兼 CEO:宮原 正弘、以下、KPMGコンサルティング)は、日本を含む26の国と地域、88,000人以上の消費者を対象にKPMGインターナショナルが実施した顧客体験に関する調査からみえた実態や課題をまとめた「グローバル カスタマーエクスペリエンス エクセレンス(CEE)リサーチ 2021」(以下、CEEレポート)の日本語版を発行した。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

グローバルの主な調査結果

「パーソナライズ」された顧客体験は、顧客ロイヤルティを高める最も重要な要素だ。顧客に対する「誠実性」は、多くの国と地域において、顧客が他者への推奨意向を高める最も重要な要素ともなる。食品小売業界は、CEEスコアにおいて平均を2%上回り、顧客体験における最も成功している業界だ。食品以外の小売業が2021年の調査におけるトップブランドを占め(26ブランドのうち10ブランド)、金融サービス(6ブランド)と旅行・ホテル(5ブランド)セクターがこれに続いている。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックにより企業は、顧客体験の重要性と顧客との対話をより容易にする必要性を認識した。一方、パンデミックによる顧客ニーズの移行や期待の変化、急速に進化するテクノロジーや組織のサイロ化は、顧客の望みに応えようとする企業に高度な複雑さをもたらしている。

企業が魅力的な顧客体験をデザインし、顧客に提供するためには部門間の高度なオーケストレーション(調整や統合)が求められる。KPMGインターナショナルが実施した今回の調査で上位にランクされた組織は、「容易さ」と「成長」という2つの目標に対処することに長けている。こうした企業では、顧客との親密な関係と顧客ニーズへの深い理解、強い確信と信念をもって迅速に動くことや、組織全体の成長をオーケストレーションすることを実現している。

カスタマージャーニー全体に対して新しいテクノロジーを適切に展開できる環境(組織文化、データ、分析、インフラストラクチャー)を構築すること、それが本調査における先進的な企業の重要な能力となっている。人工知能(AI)や機械学習などのデジタル技術の活用により、顧客が日々享受する体験には目覚ましい革新がもたらされるなか、より進んだ企業はカスタマージャーニーの視覚化モデルを構築し、プロアクティブに顧客とのやり取りを管理して、潜在的な問題が顕在化する前に解決し、次の最善の道筋を示している。

日本の主な調査結果

日本の主な調査結果

日本の調査は、今回で2回目となり、サービス企業を中心に199のブランドを対象に実施された。日本の調査対象ブランドの平均スコアは6.82となり、前回(2020年)に比べてわずかに上昇。顧客体験全般にわたる指標であるCEEスコアが7.0以上になったブランドは、前回(2020年)調査では全体の23%だったが、今回は26%に増えていた。

日本の顧客は、より共感が持て、パーソナライズされてユニークな体験の提供に投資するブランドに対してロイヤルティを示している。顧客体験を構成する6つの要素のうち、前回(2020年)の調査で最も重要とされた「利便性」が5番目になる一方で、「親密性」の重要度が大幅に高まっている。

日本企業に求められる顧客体験向上のポイント(変革への視点)

◆1.オンラインからオフラインまで:シームレスな顧客体験をデザインする

COVID-19によって環境が急速に変化するなか、多くのセクターでデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、オンライン上の顧客との新たな接点の創出や、オンラインストアの刷新が行われた。今回の調査では、主にデジタル企業がランキングを上げており、顧客はニューノーマルの時代にオンラインとオフラインの体験がシームレスにつながることを求めていることがわかったとしている。

企業は、顧客とのさまざまなタッチポイントにおいて顧客がどの部分にオンラインを求め、どの部分をオフラインで残しておきたいと考えているかを見極めなければならない。そしてそれらの体験はシームレスにつながっていることが重要で、企業はバック・ミドルオフィスのインフラとプロセスが、確実にフロントオフィスおよびオン・オフライン双方の世界に及ぶスムーズなカスタマージャーニーを支えられるようにしておくことが求められる。

◆2.価格ではなく、体験による価値

日本の消費者は常にコストパフォーマンスを求め、製品またはサービスの価格に対する価値を重視すると言われてきたが、今回の調査結果を見ると、これが必ずしも当てはまらないことがわかる。トップ5のブランドのうち2つは、ここ数年で価格を徐々に上げており、また本調査のどのケースにおいても、極めて類似したサービスを提供するブランド間では、価格の高いブランドの方が顧客満足度の評価が高い結果となった。

こうした知覚価値と顧客体験の間の負の相関関係を見ると、企業は常に値下げを追求するのではなく、全般的な顧客体験の改善を目指すべきであることが示唆されている。日本の消費者は、顧客体験の始めから最後まで、そして情緒的な価値を認識したうえで、それを価格と比べて評価しているようだ。「バリュー」の評価が低い一方で顧客満足度が高いブランドには、「個々の製品やサービスを超えた独自の価値提案」「顧客との強固な信頼関係」「顧客体験全体を通じた一貫性の追求」という3つの共通点がある。

◆3.情緒的つながりの強化がロイヤルティを形成する

今回の調査では、顧客はブランドにパーソナルなつながりを求める傾向があり、個人として気にかけてもらっていると感じたブランドに対しロイヤルカスタマーとなる流れがあることがわかった。「親密性」とロイヤルティスコアとの相関関係がこの1年で強くなりましたが、これは顧客の懸念を解消するための製品・サービスや特典を提供するブランドの評価が高まったためだ。

旅行・ホテルセクターにおける予約ポリシーの柔軟性を高める取組みのほか、小売セクターでは店舗におけるソーシャルディスタンス対応や、レストラン・ファストフードセクターでは持ち帰りやデリバリーサービス需要への適応などが挙げられる。顧客の情緒的なニーズを何よりも優先することが原則になりつつあるなか、日本の企業がこれを達成できれば、顧客との強固なつながりを構築し、それがロイヤルティとなって還元されるに違いない。

優れた顧客体験の提供がカギ

このように今回のCEEレポートでは、消費者に対し実施した約2,900社にのぼるブランドとの実体験調査をもとに、顧客体験を企業の利益につながる行動へと喚起するために必要不可欠な6つの特性である「誠実性」「問題解決力」「期待の充足」「親密性」「パーソナライズ」「利便性」からなる「Six Pillars(優れたカスタマーエクスペリエンスを構成する6つの要素)」で分析し、優れた顧客体験を提供するブランドを評価およびランキングするとともに、先進的な顧客体験の取組みが考察された。

これも各方面から繰り返し指摘されていることであるが、消費者とのロイヤリティ醸成とそれを通した顧客体験の向上は、企業やブランドの価値を高める上でも非常に重要であることがここでも示されたと言えそうだ。コロナ禍を経て激変するEC市場であるが、同市場での競争が激しくなる中で生き残る上でのカギともなりそうだ。

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