EC化率とは?日本と世界の市場の推移や、業界別の成長率を紹介

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EC化率とは?日本と世界の市場の推移や、業界別の成長率を紹介

EC化率を把握しておくことは、消費者行動の傾向や市場のトレンドをつかむのに役立ちます。これからEC事業を始めようとしている方であれば、ビジネス戦略立案の参考にもなるでしょう。

本記事では、経済産業省のデータをもとに、EC化率について徹底解説していきます。

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EC化率とは

EC化率とは「すべての商取引における、電子商取引(EC)の割合」のことです。この数値が高いほど、その市場や業界において、インターネットを利用した取引が多いということです。

EC化率を見れば、消費者の購買行動に関する傾向や、業界ごとのデジタル化導入の状況などがわかります。

新規参入事業者の目線からは、例えば、アパレルなどEC化率が高い業界はオンライン市場がすでに成熟している可能性があるので、それをふまえて事業戦略を練る必要があります。

日本と世界のEC化率(推移)

日本のEC化率がどれくらいなのか、経済産業省の令和4年度電子商取引に関する市場調査をもとに考察を進めます。

日本のEC化率

まずは、日本のEC化率です。BtoC、BtoB、CtoCに分けて解説します。

日本のBtoC-ECのEC化率

日本の物販系BtoC業界におけるEC化率は、2019年から2022年にかけて、6.76%から9.13%へと成長しています。特に、コロナ禍の外出自粛や非接触が推奨された2020年は、顕著な伸びがみてとれます。

経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」より

同じ経済産業省の資料では、サービス系分野とデジタル系分野については、以下のような市場規模の推移のみ記載されています。参考まで、記載します。

2019年 2020年 2021年 2022年
サービス系分野BtoC-EC 7兆1,672億円 4兆5,832億円 4兆6,424億円 6兆1,477億円
デジタル系分野BtoC-EC 2兆1,422億円 2兆4,614億円 2兆7,661億円 2兆5,974億円

経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」より

日本のBtoB-ECのEC化率

BtoB分野においても、2018年から2022年にかけて、EC化率は上向きで推移しています。

経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」より

また、業種別の調査でも、2021年から2022年にかけて全分野でEC化率は伸びています。BtoB-ECでは、EC化の波が生まれていると考えることができます。

経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」より

日本のCtoC-ECの市場規模

近年は、ECチャネルの1つとして、CtoC(Consumer to Consumer:個人間取引)市場も急速に拡大しています。CtoC分野は、オンライン取引が前提となっているため、EC化率の調査は実施されていません。

参考まで、市場規模で推移は以下の通りです。

2019年 2020年 2021年 2022年
CtoC-EC 1兆7,407億円 1兆9,586億円 2兆2,121億円 2兆3,630億円

経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」より

2020年は、前年比で12.5%のプラスです。BtoB・BtoCがいずれも落ち込んだ年に、成長を記録しています。

BtoBやBtoCに比べると、まだ市場の規模は小さいものの、新しいビジネスモデルである点を考慮すると、短期間で急成長している市場であるともとらえられます。

世界のEC化率

経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」より

2022年時点のBtoC-ECのデータをみてみると、世界のEC化率は19.3%です。同じ時点の日本のEC化率が9.13%なので、国際的にみると、日本のEC化率は低いと考えることができます。

なお、グラフの2023年以降の数値は、2022年時点での予想値です。その通りに推移すれば、2026年には23.3%のEC化率を実現することになります。

また、世界各国のEC化率(全体)は以下の通りです。

No. 国名 EC化率
1 中国 45.3%
2 イギリス 35.9%
3 韓国 30.1%
4 インドネシア 28.1%
5 シンガポール 17.2%
6 アメリカ 15.0%
7 ロシア 14.6%
8 カナダ 13.6%
9 日本 12.9%
10 メキシコ 12.4%

経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」より

1位の中国は約45%、2位のイギリス、3位の韓国はどちらも30%以上、4位のインドネシアも30%に迫るEC化率を実現しています。これら上位4カ国は、EC市場の普及率が高いと考えて差し支えないでしょう。

一方、日本のEC化率は12.9%で、10位となったメキシコと僅差の9位です。2020年以降、新型コロナウイルスの影響により、ECでの購買が増加したものの、世界のトップとは大きな差があります。

出典:

電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|経済産業省

令和3年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省

令和4年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省

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日本のEC化率が低い理由は?

そもそも「世界的にみれば日本のEC化率はまだ低い」という印象を受けるデータが出ているのは、EC化率の高い中国の影響が少なからずあります。

2022年の国別EC市場シェアのデータによると、中国は50.4%という高いシェアです。

経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」より

約半数のシェアを占めている中国のEC化率が45.3%なので、これが世界の水準を引き上げる要因になっています。

中国を除けば、日本のEC化率は低くないということです。

そのほか、「日本人は実店舗で商品を確認しての購入を好む」「高齢者が多く、その高齢者はインターネット利用率が低い」など日本の消費者行動に対する指摘もあります。

しかし、いずれもEC化率との明確な因果関係を示す調査が見当たらないことから、あくまで印象にすぎないと考えてよいでしょう。

業界別(小売)のEC化率

もう少し細かく、日本の業界別BtoC-ECの市場規模とEC化率の推移に目を向けてみましょう。

分野 2019年
市場規模(億円)
2019年
EC化率
2020年
市場規模(億円)
2020年
EC化率
2021年
市場規模(億円)
2021年
EC化率
2022年
市場規模(億円)
2022年
EC化率
食品、飲料、酒類 18,233 2.89% 22,086 3.31% 25,199 3.77% 27,505 4.16%
生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 18,239 32.75% 23,489 37.45% 24,584 38.13% 25,528 42.01%
書籍、映像・音楽ソフト 13,015 34.18% 16,238 42.97% 17,518 46.20% 18,330 52.16%
化粧品、医薬品 6,611 6.00% 7,787 6.72% 8,552 7.52% 9,191 8.24%
雑貨、家具、インテリア 17,428 23.32% 21,322 26.03% 22,752 28.25% 23,541 29.59%
衣類・服装雑貨等 19,100 13.87% 22,203 19.44% 24,279 21.15% 25,499 21.56%
自動車、自動二輪車、パーツ等 2,396 2.88% 2,784 3.23% 3,016 3.86% 3,183 3.98%
その他 5,492 1.54% 6,423 1.85% 6,964 1.96% 7,327 1.89%
合計 100,515 6.76% 122,333 8.08% 132,865 8.78% 139,997 9.13%

業界により差はありますが、全体のEC化率は着実に伸びています。この表をもとに、業界ごとの状況を掘り下げてみましょう。

アパレル・ファッション業界

衣類や服飾雑貨等を扱うアパレル・ファッション業界は、EC化が進んでいると考えられます。2019年の13.87%から2022年には21.56%にまで伸びました。

モバイル専門調査機関であるMMD研究所の調査によると、ネットショッピングで利用するデバイスは、8割以上がスマートフォン、購入したことがある品では「服・ファッション・小物」がトップでした。

また、写真や動画による訴求力があるアパレルは、InstagramをはじめとするSNSとの相性がよい商材です。そういった背景を受け、SNS経由でアパレルECを利用するケースも、多くみられます。

さらに、実際に商品を見てからでないと、サイズや色味がわかりにくいというボトルネックに対して、自宅で試着できるサービスなども導入されるようになりました。この点も、アパレルECが伸びている要因の1つと考えられます。

食品業界

食品、飲料、酒類を扱う食品業界のEC化率は、2019年の2.89%から2022年には4.16%まで上昇しています。

しかし、全体と比較すると低い数値であり、EC化が進んでいない業界の1つといえるでしょう。

食品業界のEC化が進んでいない理由としては、食品の鮮度にこだわりたい消費者のニーズが挙げられます。

野菜や肉、魚などの生鮮品は、実店舗で購入する消費者が多いのです。

しかしコロナ禍を機に、実店舗からオンライン店舗で購入という需要が高まり、徐々にEC化率が上昇しています。さらに、産直ECや食品配送サービスの普及も、EC化の動きを促進しているといえそうです。

今後、生鮮食品の鮮度を保つ物流技術が発展すれば、さらなるEC化率の上昇が期待できるでしょう。

化粧品・医薬品業界

化粧品や医薬品を扱う化粧品業界のEC化率は、2019年の6.00%から、2022年には8.24%にまで伸びています。

化粧品業界のEC化がなかなか進まない理由として挙げられるのは、消費者の行動です。化粧品を購入する際は、商品を試し、色合いや質感、使った感触などを確認したいという根強いニーズがあります。

また、実店舗では、カウンセリングや新商品体験などの付加価値が提供されている点も無視できません。

そういった状況の中、近年、化粧品ブランドではオンラインでの販売強化、デジタルマーケティング戦略が活発化しています。

影響力の高いインフルエンサーの起用や、オンラインでのパーソナルカウンセリングなどが、その一例です。

実店舗でしか提供できない顧客体験とデジタルマーケティングの融合は、業界の中で優位に立てる可能性を秘めています。

家具業界

雑貨や家具、インテリアを扱う家具業界のEC化率は、2019年の23.32%から2022年には29.59%へと伸び、全体と比較しても高い数値です。

家具業界のEC化率が高い理由として考えられるのは、家具商品とEC販売の相性のよさです。

大型の家具は、実店舗で購入する場合でも、多くの場合、配送サービスを利用することになります。実店舗で購入してもECサイトで購入しても配送料がかかるため、その点でいえば、実店舗で購入するメリットはありません。

また、ECサイトのほうが品ぞろえが豊富で、価格の比較がしやすいこともポイントといえるでしょう。

消費者にとって、さまざまな家具を比較しながら好みのものを選べることは、大きなメリットとなるからです。

さらに、モール型のECサイトであれば、異なる店舗の商品でも価格の違いや仕様の違いを手軽に比較できます。複数の店舗に足を運ぶ手間が省けるメリットも大きいでしょう。

玩具業界

上記の表には記載されていませんが、玩具業界のEC化率は30%と、全体よりも高い水準です。

その背景として第一に挙げられるのが、クリスマス期から年末年始にかけて繰り広げられる子ども向けのプレゼント商戦です。

この時期の売上は、玩具業界の年間売上の約40%を占めています。「子どもの希望を重視してプレゼントしたい」という点で予算が下がりにくく、市場規模が安定していることもポイントです。

また、実店舗では手に入らない商品がECサイトで簡単に購入できる利便性や、レビュー、詳細な商品情報が得られることも、オンラインでの購入を後押ししているといえます。

今後も玩具業界のEC化は進んでいくとみられ、実店舗とECサイトの組み合わせによる顧客体験をいかに充実させるかが、重要となるでしょう。

出典:
電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|経済産業省

令和3年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省

令和4年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省

玩具のEC化率は横ばいか!?日本玩具協会・東京玩具人形協同組合がクリスマス商戦トレンドを発表|日本ネット経済新聞

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EC化率は今後どうなると予測される?

シンクタンクとして知られるニッセイ基礎研究所によると、日本のEC化率は今後も進み、2040年には最大23.2%まで上昇すると予測されています。

また、経済産業省によると、世界の越境EC市場規模は2021年の7,850億USドルから2030年には7兆9,380億ドルにまで拡大するだろうという予測です。

このように、EC化率やEC市場規模の拡大が予測される背景には、デジタル技術の進化や消費者行動の変化などがあります。

モバイルデバイスの普及や通信技術の発展、AIやARをはじめとした新技術の導入など、ECサイトでの顧客体験は、日々向上しています。

さらに、コロナ禍で変化したオンラインによる購買習慣が、消費者に定着しつつあることも一因です。

出典:

令和4年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省

商業施設売上高の長期予測(2)-少子高齢化・EC市場拡大・コロナ禍による消費行動の変容が商業施設売上高に及ぼす影響|ニッセイ基礎研究所

EC事業を始めるならECコンサルを活用するのがおすすめ

EC化率は、コロナ禍を機に上昇し、今後もその流れで進むと予測されています。

自社のビジネスモデルを見直し、戦略的にEC市場に参入することで、新たなビジネスチャンスがつかめるかもしれません。

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