ヤフーショッピング無料の影響は?(下)―1 新規出店希望数、6万件に
ヤフーが開始した仮想モールの出店料、売上手数料の無料化。同施策がEC市場に及ぼすであろう"変化"について考えてきた。そして、EC事業者にとって最も関心が高いであろう"変化"とはヤフー自身、つまり「ヤフーショッピング」がどのように変わっていくのかだろう。ヤフーの仮想モール事業の今後の命運を握るキーマンの一人で「ヤフーショッピング」を統括する小澤隆生ショッピングカンパニー長に「無料化後のヤフーショッピング」の現状や今後の方向性について聞いた。(小澤氏のインタビューは今回から数回に分けて掲載)
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「ヤフーショッピング」は今年7月に大幅に出店プラン、出店料金体系を改訂したばかりだった。再び短期間で無料化を軸とした戦略の大転換に踏み切った理由や経緯は。
「私は7月の料金プランの変更については携わっていないため、詳細は分からないが、社内では『本当に大変だった』と聞いている。アイデアベースではこれまでもあったようだが、その時点では本当に"無料化する"という話は出ていなかった。ただ、事業部内で自分たちのこれからの展開をどうするのかという考えと、ヤフー全体もしくはソフトバンクグループ全体で中長期的にコマースビジネスの展開や成長戦略をどうするのかというのは別の話だ。そこで現場に引っ張られると、ドラスティックな判断ができなくなるわけでそれぞれ切り離している。その後者の方で今年の夏過ぎに私も参加していたが、ヤフーのコマース戦略についての話がされ、(無料化などが)決まったというのが経緯だ。現場の方針と全体の経営戦略はあまりリンクしておらず、現場は今回の発表には非常にびっくりしたと思う」
一部、報道では「無料化」は小澤さんが進言したとあったが。
「私からではないし、そんなことはとても言えない(笑)。売上高が(年間で)100億、200億円下がるような戦略転換について、担当者の私から言えるような話でない。ある程度、方針が定まって経営陣で話し合って最終的に『ではやろう』と決めた」
その「無料化」の発表後、出店希望者が1日で2・6万件(法人1万件、個人1・6万件)集まったとの発表があった。反響は非常に強いようだ。
「現時点(10月下旬)で6万件弱(※内訳は法人2万件強、個人が4万件弱)まで新規出店希望者数は伸びている。無論、審査はまだで実際の出店はこれからだが、非常に高い反響と期待を頂けているようで非常にありがたいと思っている」
年末をメドに解禁する個人の出店者も多いが「ユニクロ」など仮想モールなどに出店していなかった有力有店舗小売業者など新規出店希望も目立っている。
「(ユニクロについては)『出店する意思』を頂いているが(出店の)調整を現在進めているところだ。(法人の出店希望者増加は)無料化に合わせて実施している"外部リンクフリー"などの自由化の部分に評価を頂けているのではないか。これまでは(出店者にとって)"一方通行"というか、なかなかお客様を外部にお連れできない仕組みだった。そのため、新規顧客獲得という観点で見た場合、『(ヤフーショッピングへの出店は)会社のポリシーになかなか合わない』との声もあったが、それは今回でクリアされたわけだ」
ポイント戦略の絡みなどで6月末に「ヤフーショッピング」を退店したばかりだった「HMV」が10月に再出店した。このあたりも自由化の効果なのか。
「そうだと思う。(「ヤフーショッピング」のHMVの店舗を)見て頂くと分かる通り、商品詳細ページの『買い物かご』のすぐ上に(自社通販サイトに誘導する)『外部リンク』があるというかなり強烈な作りになっている。それも今回の"自由化"を活用された使い方の1つであり、何ら問題はない。どんどん利用頂きたいと考えている」
無料化により、農家やイベント運営者など"期間限定出店"も増えるとの予想もあった。要はこれまで拾いきれなかった層の"新規出店者"を増やし、全体のパイを広げることもポイントとなりそうだが。
「現況では(新規出店希望者は)すでにeコマースを実施されている方々が圧倒的に多い。ただ、これから全国1000カ所以上でセミナーを行う予定だ。そこでこれまでeコマースに取り組まれなかった方々に対して、説明をしっかりさせて頂き出店して頂きたいと考えている。実はほとんどセミナーをやってこなかった。東京(ヤフー本社)で月1回くらいのペースで行うことはあったが、それ以外はほぼなかった。これまでのヤフーはそれくらい(仮想モールに)力が入っていなかったわけだがこれからは力を入れる。年内から徐々に始めて、来年いっぱいまでに全国1000~1500カ所でセミナーを行いたいと計画している」(つづく)