【KDDIのキュレーション型ECの将来像は?】 「情報」で利用の長期化へ
KDDIが8月22日に始めた「auおまかせショッピング」が好調な立ち上がりをみせている。専門家が商品を選定して定期販売する新たなビジネスモデル「キュレーション型EC」として注目されるもの。ただ、消費者への認知はまだ進んでいない。KDDIの執行役員新規事業統括本部新規ビジネス推進本部長の雨宮俊武氏に立ち上がりの状況と将来像を聞いた。(聞き手は本紙記者・兼子沙弥子)
──キュレーション型ECは発展途上の市場だ。参入の狙いは。
「KDDIはあらゆるデバイスで最適なネットワーク環境を整備し、そこでさまざまなアプリケーションを提供する『3M構想』を進めている。スマホとリアルのつながりを強めるため、顧客に新たなショッピング体験を提供することもその一環だ。『キュレーション型EC』もKDDIの持つ経営資源を活かした展開ができると考えた。プラットフォームを提供し、事業者が拡大しやすいマーケットを構築したい」
──プラットフォームを提供する意義は。
「ユーザーに対する信用力とマーケティング力が強みと考えている」
──強みを活かした展開として具体的に何をイメージする。
「クーポンやポイントといったマーケティングツールの活用など、KDDIの持つ経営資源を活かすことで『auおまかせショッピング』だけではできないことが可能になる。例えば、自社サービス『かんたん決済』ではポイントを付与している。『auおまかせショッピング』ユーザーの決済でポイントを増やしたり、独自のクーポンを発行してお得に利用できる環境も提供できる。自社で提供する仮想モールやファッション通販サイトとの連携もあり得る」
──新たなビジネスモデルは消費者の認知を得られているか。
「まだ浸透していない。『キュレーション』という言葉自体、難しい印象がある。専門知識を持った人が商品を選ぶビジネスモデルを分かりやすく伝えるため、『auおまかせショッピング』という名称にした。今後、プラットフォームの認知と共に、キュレーション型ECを浸透させたい」
──立ち上がりは。
「想定通り順調に顧客数が伸びている」
──支持を得た理由は。
「キュレーション型ECはユーザーの購入選択を助ける新しい買い物方法のため、『モノ』だけでなく『情報』を届けることが重要になる。そのことが継続利用の長期化にもつながる。まずはユーザーに興味を持ってもらえる商品の提案と情報提供が行えた」
──どういった顧客層が利用している。
「年齢でいえば30~40代、50代の購入もあり、幅広い層に関心は持たれている。ただ、顧客属性はこれから継続期間を含めて分析したい」
──継続利用状況は。
「想定よりも離脱するユーザーは少ない。グルメコースの1回目は焼きそばを提案したが、顧客に受け入れられる見栄えになっているか心配があった。しかし購入者のアンケートをみると『本当においしかった』という声が寄せられた。キュレーターが自信を持って選んだ商品の価値はユーザーに伝わると分かった」
──何が購入決定を左右する重要なポイントとなったと感じているか。
「安価なコースだけが好調だったわけではなく、ブランドの知名度やキュレーターの信用力が購入を後押しした。商品と価格のバランスは当然ながら、『キュレーター』の存在が重要になる。今後も商品にまつわる情報などプラスアルファの価値をきちんと伝えていく必要がある」
──キュレーターを選ぶポイントは。
「他社にはない特徴的な部分、ポリシーがあるか。評価の高い商品を持っているが販売手段を持たない事業者にとって、販路を開拓できる新たなマーケットにしていく」
──ただ、定期購入は初回利用の心理的なハードルが高い。
「確かにハードルはある。今回はauスマートパス会員に、初回半額・送料無料の特典をつけた。長く使ってもらうには解約されにくい方が良い面もあるが、自由に解約ができる設計にすることで初回利用のハードルを低くした」
──継続利用を促すための取り組みは。
「次回のお届けまでに1カ月間の空白が生まれるため、メールでユーザーに感想を聞いたり、次回発送予定の商品を紹介することで顧客との接点を増やした。今後は出店者が自由にメルマガを配信できるようにし、その都度、購入する機会を増やしたい」
──キュレーション型ECの市場予測は。
「これから成長する新たな市場と捉えており、ネット販売の一つの形になると思う。必ずしもネットだけの専売特許ではなく、リアルでも実現可能だろう」
──今後、利用するユーザーはどう変化していくと想定している。
「高額であっても自分の好みやこだわりに合ったコースに移行していくと考えられる。例えば、ワインコースでも『白ワイン好き』『赤ワイン好き』など特定の商品にニーズのある層が出てくる。細かくセグメントされた顧客の好みに合わせ、こちらも定期コースを細分化して最適な商品を提案する必要がある。顧客の声での商品開発や、顧客自身が商品をリクエストしてキュレーター化することもあり得る」