ネットショップに開業届は必要?メリットや届け出の流れを解説
個人事業主が事業を始める際に提出する、開業届。ネットショップの開業を想定している場合、「ネットショップも届け出の対象になるのか」「開業届を提出することにはどのような意味があるのか」「開業届を提出しないと罰則は課されるのか」などを知りたいと考えることもあるのではないだろうか。
今回は、ネットショップをオープンさせる際に開業届を提出する必要があるのかや、届け出のメリット、開業届の提出方法などを紹介する。
目次
●開業届とは
●ネットショップで開業届を提出するメリット
●ネットショップで開業届を提出するデメリット
●開業届を届け出るまでの流れ
●ネットショップを開業する際の注意点
●まとめ
開業届とは
開業届は正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人事業主が新たに事業を開始した際に届け出るための書類だ。まずは、開業届に関する基本的な知識をおさえよう。
開業届の提出は個人事業主の義務
開業届については、所得税法第229条において「国内において事業所得を生じる事業を開始した場合には、必要な事項を記載した届け出書を事実のあった日から1カ月以内に税務署長に提出しなければならない」と記載されており、国税庁のホームページにも同様の記載がある。
ここでいう「事業所得」とは、一時的な収入でなく、継続して何らかの対価を得ること。ネットショップは商品やサービスを販売して利益を得るため、オープンの際には開業届を提出しなければならない。
一方で、開業届を出さなかった場合の罰則は示されていないのが現状だ。ネットショップをオープンしたものの、開業届を提出していない場合は、最寄りの税務署に相談しよう。
「個人事業開始申告書」との違い
開業届と類似した書類が、「個人事業開始申告書」だ。官公庁に提出する書類という点では同じだが、提出先に違いがある。開業届は国税である所得税に関わる書類のため、税務署に提出するが、個人事業開始申告書は地方税の個人事業税に関わる書類のため、都道府県に提出する。個人事業開始申告書の提出期限は都道府県ごとに異なり、開業届に比べ期間が短いケースが多いことに注意が必要だ。
確定申告との関連性
確定申告は、1月1日から12月31日までの所得を計算して申告し、適切な税金を納めるための一連の手続きのこと。年末調整では受けられない控除を受けることも目的の一つだ。事業所得があった個人事業主やフリーランスなどが対象となるため、ネットショップを開業した場合も対象となる。ただし、「事業による所得が48万円以下の場合」「副収入が20万円未満の場合」は確定申告が不要となるため、開業届を提出しても、確定申告に該当しないケースもある。
開業届の申請費用
開業届を届け出るにあたり、費用はかからず、審査なども行われない。なお、会社を設立する際には、登録免許税などが発生し、株式会社で最低20万円、合同会社で最低6万円が必要だ。
ネットショップで開業届を提出するメリット
ネットショップをオープンさせるにあたり、開業届を提出するメリットを紹介する。
個人事業主であることを証明できる
第一に、個人事業主であることを証明できる点が挙げられる。開業届は税務署の収受印を受けることで、対外的な証明書として使用が可能だ。例として、保育園や学童保育の利用、融資や給付金の申請、ビジネス用クレジットカードの審査などで開業届の写しの提出を求められることがある。
また、ECモールによっては個人事業主が出店する際の審査で開業届が必要になることもあるため、社会的な信用を得るためにも、ネットショップ事業を円滑に進めるためにも、重要な書類だと言えるだろう。
確定申告で「青色申告」を行うことができる
確定申告において青色申告を行えることも、開業届を提出することのメリットだ。ネットショップで一定の所得を得た個人事業主は確定申告を行わなければならないが、確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類がある。青色申告では最大65万円の特別控除を受けられるが、白色申告では控除を受けることができないため、青色申告の方が節税効果が高いと言えるだろう。ただし、青色申告を行うには、開業届の他に「青色申告承認申請書」を開業から2カ月以内に提出しなければならないことに注意が必要だ。
屋号で口座を開設できる
屋号とは、ネットショップ名など、ビジネスで使用する名前のこと。金融機関で口座を開設する際に開業届を提出すると、屋号を口座名義にすることが可能だ。屋号を名義にした口座やクレジットカードを作成できると、経費の管理もしやすくなるだろう。また、個人名ではなく屋号を使用することで、ユーザーの信用度が向上することも期待できる。なお、口座開設に必要な書類は金融機関によって異なるため、事前にビジネス用の口座の開設方法を問い合わせて確認しておこう。
「小規模企業共済制度」に加入できる
開業届を提出することで、「小規模企業共済制度」に加入できることもメリットだ。小規模企業共済制度とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が管轄する共済制度で、「毎月一定額の掛金を支払うことで退職時に共済金を受け取れる」「掛金が全額控除される」「低金利の貸付制度を利用できる」などの特徴がある。加入には、確定申告書または開業届の控えが必要だ。ただし、「受け取った共済金は課税される」「1年未満で解約した場合は掛け捨てとなる」などの点には注意したい。
参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構『小規模企業共済』
ネットショップで開業届を提出するデメリット
開業届を提出することにはさまざまなメリットがあるが、一方で以下のようなケースが想定されることも事前に把握しておこう。
・失業保険が適用されない(失業給付金が受け取れない)
・加入する健康保険組合や所得によって配偶者の扶養から外れる可能性がある
・青色申告は白色申告に比べ手続きや経理処理が複雑になる
開業届を届け出るまでの流れ
ここでは、開業届を届け出るフローを紹介する。
【ステップ①】開業届を準備する
まずは、開業届である「個人事業の開業・廃業等届出書」を準備しよう。「個人事業の開業・廃業等届出書」は、最寄りの税務署で受け取るか、国税庁のホームページからダウンロードすることで入手できる。
【ステップ②】開業届を記入する
次に、開業届に必要事項を記載していこう。主な記載事項は、以下の通りだ。
・納税地
・氏名、生年月日
・個人番号
・職業
・屋号
・届出の区分
・所得の種類
・開業日
・事業所等の所在地
・開業に伴う届出書の提出の有無
・事業の概要
・給与等の支払いの状況 など
職業は「インターネットショップの運営」や「インターネット販売」、事業の概要はより詳細に「生活用品の仕入れ・販売」などと記載するとよいだろう。
【ステップ③】開業届を提出する
前述の通り、開業届は所得税法第229条において、「その事実があった日から1カ月以内に税務署長に提出しなければならない」と定められている。開業届を記載したら、期日までに管轄の税務署に提出しよう。提出方法には、「持参」と「郵送」の2つの方法がある。提出の際は、マイナンバーカードや本人確認書類の提示または写しの添付が必要であることに注意しよう。
参考:国税庁『[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続』
ネットショップを開業する際の注意点
取り扱う商品やサービスによっては、許可や免許が必要なものもあるため、以下のものを取り扱う場合には、事前に要件を満たしているか確認しよう。
・中古品
・食品
・健康食品
・酒類
・医薬品
・化粧品の製造・販売 など
また、所得が増えるにつれて税負担が重くなることもある。売り上げ規模が多くなったら、法人化を検討する必要も出て来るだろう。
まとめ
開業届はネットショップをオープンさせる際に届け出なければならない書類だ。提出することで得られる
メリットもあるため、開業の事実がある日から1カ月以内に必ず提出するようにしよう。ネットショップの開業には注意点やさまざまな業務もあるため、不安がある場合は、制作会社や代行会社などへの委託も検討してみてはいかがだろうか。
EC専門の委託先選定はECのミカタへ
ECのミカタが運営するマッチングサービスです。ECサイトに特化したメディアを運営する専門コンシェルジュが、丁寧なヒアリングを行った上で、最適な企業をご紹介します。
そのため業務の知識が全くなくても、マッチ度の高いパートナーさんと出会うことが可能です。希望する会社が決定すれば、最短1営業日で企業との商談のセッティングを行います。商談日や商談方法だけでなく、断りの依頼も全てコンシェルジュに任せることができるため、じっくり選定に時間をかけることが可能です。