【ラクスル決算】2022年7月期の純利益は1,021百万円(昨対比538.6%増)

ECのミカタ編集部

ラクスル株式会社は、最新となる2022年7月期(連結・2021年8月1日~2022年7月31日)の決算を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

概況

概況

同社によれば、当該連結会計年度の売上高は33,980百万円(前事業年度比33.1%増)、営業利益は462百万円(前事業年度比109.9%増)、*non-GAAP EBITDAは1,634百万円(前事業年度比58.5%増)となった。

また連結決算への移行に伴う遡及処理により、持分法による投資損失が増大し532百万円計上したことで経常損失は167百万円(前事業年度は経常利益130百万円)、繰延税金資産について、同期の業績及び今後の業績動向等を踏まえ、回収可能性を慎重に検討した結果、法人税等調整額△818百万円(△は益)を計上し、親会社株主に帰属する同期純利益は1,021百万円(前事業年度比538.6%増)となった。

セグメント別の概況

◆ラクスルセグメント

「ラクスル」においては、国内経済の回復に向けた動きを受け、堅調に拡大しており、取扱商品や法人向けサービスの拡大等、継続的サービスの拡充に努めているとしている。また、より効率的な広告施策への再配分を実施したことで、セグメント利益の拡大につながったとのことだ。2022年2月に完全子会社化した株式会社ダンボールワンも堅調に売上高が伸長しており事業拡大に寄与した。この結果、売上高は27,325百万円(前年同期比34.9%増)、セグメント利益は3,001百万円(前年同期比40.2%増)となった。

◆ノバセルセグメント

「ノバセル」においては、外部環境の影響の少ない顧客層へのシフト、及びSaaS事業の順調な拡大により、業績は堅調に推移した。引き続き顧客の新規開拓に注力するとともに、効果分析ツールの新商品のローンチ等、顧客ニーズに応えるサービスの提供を通じ継続利用の促進に努めているとしている。この結果、売上高は2,824百万円(前年同期比38.4%増)、セグメント損失は131百万円(前年同期はセグメント利益9百万円)となった。

◆ハコベルセグメント

「ハコベル」においては、各企業が輸送コストの増大に課題を抱えている中で積極的な提案活動を行ったことにより、顧客基盤は引き続き順調に拡大しているとのことだ。この結果、売上高は3,478百万円(前年同期比18.5%増)、セグメント損失は181百万円(前年同期はセグメント損失114百万円)とった。なお、2022年8月に同セグメントを会社分割によりハコベル株式会社に承継し、同社をセイノーホールディングス株式会社と合弁会社として運営することに伴い、2023年7月期より同社は持分法適用会社となる。

各種の施策が奏功

同社は、国内外の経済と業界を取り巻く状況を踏まえた上で次のように述べている。新型コロナウイルス感染症対策に伴う各種制限の緩和により社会経済活動の正常化に向けた動きが見られたが、同感染症の収束が未だ見通せないほか、ウクライナ情勢の長期化などが懸念され、世界的なエネルギー・原材料価格の高騰による消費マインドの低下、円安・金融資本市場の変動等、依然として先行き不透明な状況が続いている。

印刷業界においては、デジタルメディアの拡大とともに従来型の紙媒体の需要が減少傾向にある。その一方で、印刷EC業界は潜在需要が大きく、2012年度から2019年度までの年平均成長率が10%超、また2020年の市場規模は1,000億円程度まで拡大したと分析している(主要な印刷EC企業の財務情報に基づく同社試算による)。

国内での広告市場も年々拡大しており、2021年のインターネット広告以外の広告市場は国内全体で約4.0兆円、なかでも同社の現在の事業領域(テレビCM、交通広告、ダイレクトメール及び新聞折込)における市場規模は約2.5兆円となっている(電通「日本の広告費 2021年」に基づく同社試算)。

特にテレビCMについては、わが国でもっともリーチコストが安く多くの人々に情報を届けられる媒体であることから、より多くの企業がマーケティング手法として活用できる余地が残されているとしている。同社は、テレビCMの小ロットかつ低価格での販売、ITを用いた効果分析といった独自の価値提供を通じ事業展開を図ってきた。

また、国内のトラック運送事業は、約14兆円という巨大な市場ともなっている(国土交通省「物流を取り巻く現状について」2018年10月により)。しかし、業界構造は多重下請け構造となっているうえ、車両の手配は電話・FAXでの連絡が中心であり人力に頼った運用となっているのが実態だ。

同社は、物流業界においてもITによる効率化を図るとともに業界構造そのものをフラット化することで、荷主・運送会社双方に新たな価値提供ができるとしている。このような状況の中、同社は、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンの下、主に印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」、テレビCM・動画の広告プラットフォーム「ノバセル」、物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を運営してきた。

「ラクスル」では、引き続きノベルティ等の商品ラインナップの拡充とともに、主力のチラシ印刷においては「注文翌日午前中に商品が届く」といった急ぎの印刷需要に応えるサービスを開始し、顧客の利便性向上に努めている。さらに「ノバセル」ではテレビCMの効果分析ツールである「ノバセルアナリティクス」の機能を拡充するとともに、株式会社ADKマーケティング・ソリューションズとの業務提携を通じ、更なる顧客の獲得に努めている。

また、「ハコベル」においても、登録車両台数の増加により運送キャパシティを確保するとともに、配送業務管理ツールである「ハコベルコネクト」を通じ、顧客の配車業務のデジタル化推進のための機能拡充に努めておいる。加えて、いずれの事業でも将来を見据え、登録ユーザー数増加や認知度向上に向けた広告宣伝投資を行ってきた。こうした施策が功を奏し、最終的な利益の大幅増につながったと言えそうだ。

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