博報堂買物研究所が【買物フォーキャスト2022】を公表 新たな買物観「パーパス買い」について調査

ECのミカタ編集部

株式会社博報堂(本社:東京都港区、代表取締役社長:水島正幸)のシンクタンク博報堂買物研究所(以下、買物研究所)は、2022年4月から、株式会社博報堂をはじめとするグループ9社横断の戦略組織「ショッパーマーケティング・イニシアティブ®」の傘下に入り、独自の生活者調査を元に、これからの買物潮流を予測・提言する「買物フォーキャスト2022」を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

調査タイトル:博報堂買物研究所「ブランドパーパスと買物行動」調査
調査対象:15~69歳 男女
調査地域:日本全国
調査手法:インターネットリサーチ
調査時期:2022年3月
有効回答数:13,311サンプル
調査会社: 株式会社エムキューブ

調査タイトル:博報堂買物研究所「カテゴリー別パーパス広告」調査
調査対象:15~69歳
調査カテゴリー:美容、食品・飲料、トイレタリー、ファッション、自動車  各カテゴリー5ブランドのパーパス広告を提示。
調査地域:日本全国
調査手法:インターネットリサーチ
調査時期:2022年3月
有効回答数:美容(女性)、食品・飲料(男女)、トイレタリー(女性) 各1,000サンプル
ファッション(男女)、自動車(男女) 各500サンプル
調査会社:株式会社エムキューブ
購買データ:QPR™

「パーパス買い」経験者は13%

Q「パーパス買い」(直近1年間で世の中や、人々の生活によい影響をもたらしているブランドや企業の姿勢に惹かれて商品を購入した経験)はありますか?

・「パーパス買い」をしたことがある人は13%。年代別には男女とも「10代」と「60代」が高い。

・パーパス買い経験者のペルソナの特徴は「お出かけやショッピング好き」「環境意識が高く、環境配慮の行動にも積極的」「情報は誰よりも早く入手し、周りにも広め、仲間の輪の中心にいたい」

パーパス買いは「積極的な商品選択」につながっている

パーパス買いは「積極的な商品選択」につながっている

Q. 「パーパス買い」は購買にどのように影響しましたか?

買物研究所では2018年の研究で、大量の情報、商品、買い方の前に正しい判断に迷う「買物ストレス」が増加し、ストレス回避のために「選ばない買物」へと向かう生活者の実態を発信した。一方で、「パーパス買い」をした商品は、積極的に商品を選択している買物姿勢が明らかになった。

◆パーパス買いした商品の、購買ファネルへの影響

・「積極的に情報収集」
他の興味のあるブランドよりも、「パーパス買い」をした商品のブランドについては、積極的に情報収集した 59%。

・「指名買い」してくれている
お店(もしくはEC)に行く前に購入しようと決めていた人は52%。

パーパス広告への好感が購入金額アップへつながる

パーパス広告への好感が購入金額アップへつながる

ブランドのパーパス広告を認知していて、かつ好感がある人を「パーパス共感者」と定義し、それ以外と比較したときに、ブランドの購買に差が出るかを購買データと紐づけて分析している。カテゴリーは美容3ブランド/食品・飲料3ブランド/トイレタリー3ブランドの合計9ブランド。「購入率」が5pt以上増えたブランドは、9ブランド中、4ブランド「購入金額」が110%以上増えたブランドは、9ブランド中、6ブランドだった。

「パーパス買い」を促進させる3つの提言

同社は、調査を受けて「パーパス買い」を促進させる3つの提言をしている。

◆商品購入の選択軸は、「機能&情緒価値重視から“パーパス”の共感」へ

今回の調査で、パーパス買い経験者を分析すると、積極的な情報収集や、指名買いなど、能動的に選ぶ買物姿勢が見られた。それは、企業やブランドなど作り手の“パーパス”に共感することで、自分が商品を買う“意味”を見出しているからだと分析。商品が持つ機能価値や情緒価値を魅力に感じるのとは違い、商品をモノとしてとらえるのではなく、より「人間味」を感じた結果ではないかとしている。

◆ブランディングは、「企業ブランド」の重要度が増している

パーパスによるブランディングの変化について考察。今回の調査でパーパス広告を選定する際、企業単位のコミュニケーションが各カテゴリーで1つ以上は含まれている。80年代、90年代の商品ブランドが強い時代を経て、現在は、商品ブランドが世の中にあふれ、モノだけでは差別化がしづらくなってきている。そのような状況下でパーパスが起点となり、「企業ブランドに注目して選ぶ」 という買物行動が広がっている。企業単位では商品を横断した大きなアクションに取り組みやすく、生活者の注目を集め広い共感を得られることにつながる。そのため、「企業ブランディング」がより重要度が増していくと予想している。

◆企業と生活者の持続的な関係構築

今回の調査でパーパス広告により、年間の購入金額を増加させる確率が高い事がわかった。これは、パーパスに好意を持つことで生まれる、ブランドと生活者の絆は、一過性のものではなく持続的だということだ。一方で、大量の情報に接する中でいつの間にか買物欲を忘れてしまう生活者の実態がある。絆を強固にし、売上につなげていくためには、ブランドから継続的に情報を発信し続けられ、リマインドし続けられる接点を持つことが大切だと考えられるとしている。

以上、提言。

2022年に同社が掲げるテーマは「ブランドパーパスと買物行動」だ。近年、パーパスへの注目が高まっている。今回、直近1年間で世の中や、人々の生活によい影響をもたらしているブランドや企業の姿勢に惹かれて商品を購入した経験を「パーパス買い」と定義し、買物に影響を与えているのかが調査された。

分析結果から、パーパス買いした商品について、情報収集や指名買いなど、積極的な商品選択をする生活者の出現が明らかになり、また、企業はどのように生活者の「パーパス買い」を促進させていけばいいかを提言がなされた。ECビジネスにおける企業ブランドと消費者の購買行動を考える上でも興味深い調査だと言えそうだ。

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