EC決済とは?主な決済方法・決済代行サービスを比較紹介
EC運用において、決済方法は購入率に与える影響が大きい要素となり、切っても切り離せない課題の1つです。
決済方法が豊富にあるとユーザーにとって選択肢の幅が広がりますが、導入費用や利用料といったコストもかさむため、正しく取捨選択することが求められます。
本記事では、EC決済の種類や決済代行サービスに関して紹介するとともに、選ぶポイントも解説します。これからECを立ち上げる人や、決済方法に課題を感じている方はぜひ参考にしてください。
EC決済とは
EC決済とは、インターネットショッピングなどで商品を購入する際に、購入者が代金を支払うための方法のことです。
オンラインで手続きできるものや、銀行振込など事前にオフラインで支払わなければならないものなど、手段はさまざまです。
昨今、ECサイトにおける決済方法は選択肢が増え、顧客は支払い方法を自分で選べるようになっています。
一方で、サイト運営側にとっては導入する決済方法の種類や数によって顧客満足度や購入率が変わる場合もあるため、顧客が求める決済方法の見極めに苦労することもあるでしょう。
ECサイトにおける決済方法の選択が重要な理由
ソフトバンク株式会社の子会社であるSBペイメントサービス社が実施した「ECサイトにおける決済手段の利用実態に関するアンケート調査」によると、よく利用する決済手段がない場合、53%以上の男女が購入せず離脱するといわれています。
要するに、冒頭でも解説した通り、決済手段は購入率への影響が大きく、慎重に判断すべき要素であるといえます。
また、ECサイトでよく利用する決済手段は1位が「クレジットカード決済」(約60%)、2位が「PayPay(オンライン決済)」(約24%)となっています。
さらに、ほかの世代と比較して20〜40代男性は「Yahoo!ウォレット決済」、10〜40代女性は「楽天ペイ(オンライン決済)」の人気が高いです。
このように性別や年齢層でも変化するため、自社のターゲット層から判断することも重要といえます。
出典:【2022年度版】ECサイトにおける決済手段の利用実態調査結果を公開|SBペイメントサービス株式会社
複数の決済方法を設置するメリットは?
ECサイトでは、ユーザーが利便性を感じられるよう、複数の決済方法を設置するのがおすすめです。
ECサイトでの購入は、これまでと異なる支払い方法や初回購入時の情報入力を、躊躇する人や面倒に感じる人もいるでしょう。
複数の決済方法を設置することで、決済時の離脱を防げるため、購入機会損失の防止につながります。
また、初めて利用するECサイトに普段から利用している決済方法があれば、ユーザーが決済方法を選択する時間が短縮できます。
これにより、商品の検索から購入まで、煩わしさを感じずに進めるため、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
【比較】ECサイトの決済方法
自社のECサイトに導入すべき決済方法を検討するにあたり、まずは決済方法の種類について理解を深めましょう。
この章では、以下の主要な決済方法について解説します。
- クレジットカード決済
- オンライン決済(QRコード決済)
- コンビニ決済
- 後払い決済
- 電子マネー決済
- キャリア決済
- 銀行振込
- 代金引換
- 外部ID決済
クレジットカード決済
クレジットカード決済とは、決済代行会社を利用して立替払いをし、購入者の口座から後日引き落とされる仕組みです。
現金を直接用いずにキャッシュレスで取引ができるため、購入時に現金を持っていなくても支払いが可能です。そのため利用者が一気に広まった決済方法でしたが、近年PayPayなどのほかのオンライン決済の利用も増えています。
カード会社が立て替えて支払いを行うため、代金未納のリスク低減につながります。また、ECサイトで一度カード情報を登録すると、次回以降の購入がスムーズになるため、リピーターの獲得も期待できるでしょう。
一方で、ECサイト側はカード会社に決済手数料やシステム利用料を支払う必要があります。また、カードの不正利用があった場合にECサイト側が返金を要求される「チャージバック」が発生するリスクもあることは、把握しておきましょう。
クレジットカード決済の導入費用と手数料は?
クレジットカード決済の導入時には、導入費用や手数料が発生します。また、導入後は月額費用や売上に乗じて決済手数料が発生するケースが一般的です。
費用は各決済代行業者によって異なります。
オンライン決済(QRコード決済)
オンライン決済(QRコード決済)とは、QRコードを利用して支払う方法です。AlipayやWeChat Pay、PayPay、LINE Payが挙げられます。
本決済を選択した場合の決済フローは次の通りです。
- ECサイトが購入者の注文情報をもとに支払い用のQRコードを生成し画面に表示
- 購入者はスマートフォンのQRコード決済アプリを開き、表示されたQRコードをスキャンする
- QRコード決済アプリに支払い内容が表示されるので、購入者はその内容を確認し、支払いを承認
- 支払いが完了すると、決済アプリとECサイトの両方に支払い完了の通知が送付される
コンビニ決済
コンビニ決済とは、商品の代金をコンビニエンスストアで支払う方法です。
コンビニ決済には、振込票や予約番号をもとに代金の支払いを確認してから商品を発送する「前払い方式」と、商品と振込票を同封して商品到着後に支払う「後払い方式」の2種類があります。
クレジットカードを作れない18歳未満の顧客でも購入できる点はメリットです。
また、時間を問わずに支払いが可能なため、顧客の利便性も高くなります。
EC事業者側にとっては、前払い方式を選択すると、商品のキャンセルや代金未払いのリスクが低減する点はメリットです。
一方、購入者の支払い遅れにより、入金目処がつかないケースがある点はデメリットといえるでしょう。また、各コンビニに審査を申請する必要があります。
後払い決済
後払い決済は、商品を受け取った後に代金を支払う方法です。
商品を確認してから支払えるため、購入者にとって安心度が高い決済方法といえます。
また、オフライン決済のため、PCやスマートフォンを使い慣れていない高齢層や、クレジットカードや銀行口座を持たない若年層なども気軽に利用できます。
一方で、購入者の支払い忘れや遅延による、代金未回収のリスクがあります。また、決済後の請求書送付や、代金回収などの手間がデメリットとなる場合もあるでしょう。
電子マネー決済
電子マネー決済とは、スマートフォンや専用のカードを使って、現金を使わずに支払いを行う方法です。
「Suica」などの交通系電子マネーや「nanaco」などの流通系電子マネー、「iD」などのクレジットカード系電子マネーなど、近年種類が増加しています。
クレジットカードのように後払いタイプの「ポストペイ」だけでなく、あらかじめチャージされた金額で支払う「プリペイド」、購入時に口座から引き落とされる「デビット」の3つの決済方法があります。
電子マネーはポイントバックがあるなど、現金で決済するよりも還元率が高い傾向にあるので、お得に買い物をしたいと考える利用者に好まれます。
一方で、プリペイド型の電子マネーを高額商品の支払手段として扱うケースなどでは、ユーザーが不便を感じることもあるでしょう。
自社が扱う商品やサービスを考慮した上で、導入可否を決めるようにしましょう。
キャリア決済
キャリア決済とは、商品の代金を携帯電話の利用料金と一緒に支払う方法です。携帯電話番号を使用して簡単に支払いができます。
支払いは毎月の携帯料金と合算されるため、クレジットカードや銀行口座の情報を入力する必要がありません。主要な携帯キャリア(ドコモ、au、ソフトバンクなど)が提供する便利で安全な決済方法です。
クレジットカードを持たなくとも決済可能なため、学生など若年層の購入につながりやすい方法です。クレジットカードや個人情報の入力も省略できるため、安心感から購入意欲の継続やリピーター獲得にも期待できるでしょう。
ただし、手数料はクレジットカード決済の1.2~1.5倍ほどかかります。また、キャリアごとに仕様が異なるため、導入時には注意が必要です。
銀行振込
銀行振込は、指定した金融機関の口座への振込によって支払いを行う方法です。
長く利用されてきた支払い方法のため、高齢層にも馴染み深く、トラブルが起こりにくい方法です。ほかの決済方法とは異なり、手数料が発生しないため、運営側は商品代金と送料のみで商品購入につなげることができます。
また、これまで平日勤務の社会人にとって銀行振込は不便でしたが、近年ではネットバンキングの登場により、利用時間という制限が解消されつつあります。
一方で、入金の消し込み作業に手間がかかる点や、15時以降の入金が翌営業日扱いになる点はデメリットといえます
代金引換
代金引換(代引き)とは、商品が配達された際に、その場で配達員に「商品代金」と「送料」を合わせて支払う方法です。
代金引換であれば、購入者の「クレジットカード情報を入力せずに購入したいが、コンビニや銀行に行く時間がない」「初めてECサイトを利用するからカード情報を入力するのは不安」などのニーズに応えられます。
また、手数料の購入者負担額を運営側が決められるため、コストの調整も可能です。
しかし、顧客の長期不在により返送されてくるケースもあります。一般的には、1週間ほど配達不在となると、配送会社の保管期限が切れるため、返送もしくは破棄されてしまいます。
商品の返送や代引きにかかる料金は、ECサイト運営側の負担である点も注意が必要です。
外部ID決済
外部ID決済とは、楽天市場やAmazon、LINE等ほかのサービスを利用する際に用いる個人情報を利用して、決済を行う仕組みです。
住所やクレジットカード番号の入力を省略できるため、商品をカートに入れたまま購入を離脱する「カゴ落ち」防止につながります。クレジットカード情報を入力したくない利用者にも、支持される決済方法といえるでしょう。
ただし、ID決済サービスは、提供企業の増加に比例して導入コストや工数が膨らんでいく傾向にあります。導入する企業の取捨選択や、決済代行会社を活用するなどして、コストや工数を工夫する必要があります。
【比較】ECサイトの決済代行サービス
決済代行サービスは、さまざまな決済方法を簡単に導入でき、運営者の管理負担を減らすためのサービスです。クレジットカード、コンビニ払い、代金引換、モバイル決済など、幅広い支払い手段を一括で導入できます。
この章では決済代行サービスの特徴を紹介します。
サービス名 | 手数料 | 特徴 | 海外決済の可否 |
---|---|---|---|
SBペイメントサービス | 要問合せ | 決済方法の種類は40以上あり、業界屈指の多様性を誇る | 可 |
GMOペイメントゲートウェイ | 要問合せ | 20種類以上の決済手段をスムーズに導入するためのサポートを提供 | 可 |
KOMOJU | 要問合せ | システムの大幅な変更を必要とせず、迅速にオンライン決済を導入可能 | 可 |
ソニーペイメントサービス | 要問合せ | システムの二重化により、24時間365日の安定したサービス提供が可能 | 可 |
EC-CUBEペイメントプラス | 要問合せ | 高度なセキュリティ基準であるPCIDSS Ver3.2に準拠 | 不可 |
SBペイメントサービス
SBペイメントサービス株式会社は、ソフトバンクグループの一員として、オンライン決済代行サービスを提供しています。決済方法の種類は40以上。業界屈指の多様性を誇ります。
また、国際基準の取得やISMS認証など、高度なセキュリティ対策を実施しており、高い信頼性を保持している点も特徴です。
出典:決済代行・オンライン決済サービスの導入ならSBペイメントサービス
GMOペイメントゲートウェイ
年間の決済処理金額が10兆円を超え、15万以上の店舗で利用されている、日本最大規模のオンライン決済代行サービスです。
電話やチャットでの充実したサポート部門、専任営業スタッフによる導入支援など、サポート体制も整っており、20種類以上の決済手段をスムーズに導入するためのサポートが提供されています。
また、ECでの売上向上支援や海外市場への進出サポートなど、多彩な付加サービスが利用できる点も特徴です。
出典:オンライン総合決済サービス「PGマルチペイメントサービス」|GMOペイメントゲートウェイ
KOMOJU
「Shopify」や「Wix」などの主要なECサイト構築サービスと互換性のあるオンライン決済代行サービスです。導入方法はとてもシンプルで、Shopifyの場合、管理画面からKOMOJUのアプリをインストールするだけで利用開始できます。
システムの大幅な変更や改修を必要とせず、迅速にオンライン決済を導入したい場合にぴったりです。
また、初期費用や月額費用はかからず、商品の購入に伴う手数料のみ発生します。
ソニーペイメントサービス
ソニーペイメントサービスは、高速なデータ処理を実現し、利用者を待たせないスピード感に定評があります。EC事業者からすると、カゴ落ちのリスクが下がり、機会損失が抑えられる点がメリットです。
また、システムの二重化により、24時間365日の安定したサービス提供が可能になっています。加えて、カード情報を安全に保管する機能も備えており、情報漏洩リスクも回避できます。
EC-CUBEペイメントプラス
EC-CUBEペイメントプラスは、16種類の決済手段に対応している決済サービスです。高度なセキュリティ基準であるPCIDSS Ver3.2に準拠しているので、安全性が確保されたサービスといえるでしょう。
また、クレジットカード決済の売上に応じて手数料が割引されるシステムは、EC事業者にとって嬉しいポイントです。
出典:公式決済サービス EC-CUBE Payment Plus|EC-CUBE
越境ECと相性の良い決済方法・サービスは?
越境ECと相性の良い決済方法・サービスの1つとして、PayPalが挙げられます。
海外でも広く利用されており、世界各国の主要な決済方法に自動対応しているため、海外展開を考えるECサイトにとって有用です。
さらに、カード情報の管理はPayPalに任せることができ、顧客はIDとパスワードだけで支払いを完了できるため、会員登録が障壁となって顧客を逃すリスクも軽減されます。
ECサイトの決済方法を選ぶポイント
最後に、決済方法を選択するときに押さえておきたいポイントを紹介します。先述したように、決済方法との相性の良さは、店舗によって異なります。
自社サイトの特性にあった決済方法を選んでくださいね。
ターゲット層の年齢に合っているか
決済方法の利用率は、年齢によって傾向が異なります。
例えば若年層はクレジットカードを保有していない場合も多いので、後払いや代引きなどの決済方法があると機会損失を防げるでしょう。
また、ターゲットとなる年齢層が高い場合は、クレジットカードや銀行振込など、使い慣れている決済手段を選ぶ方が多いかもしれません。
このように決済方法を検討する際には、一般的な利用者が好んで利用する方法だけでなく、自社の主要なターゲット層がどの方法を使う傾向にあるかを考慮したほうがよいでしょう。
販売商品の特徴に合っているか
商品や販売形態によって、適した決済方法は変わってきます。
例えば、無形商材のデジタルコンテンツにはキャリア決済が適しており、高単価商品を取り扱っている場合は、分割払いにしたいユーザーも多くいるため、クレジットカード決済や後払いが好まれます。
このように自社販売商品や販売形態に合わせて決済方法を選ぶことで、無駄なコストの削減につながります。
コストは適切か
決済を行うには代行会社や運送会社が介入するなど、ほぼ全ての決済方法に手数料が発生します。
クレジットカードの手数料は商品総額の3〜5%、コンビニ決済は1件あたり150〜300円、代金引換は1件300円など、少額とはいえ取引数の増加に比例して、負担額も増加していくでしょう。
導入コストと1カ月にかかる手数料を割り出し、導入する決済方法を検討しましょう。
自社ECに適した決済方法は専門家に相談しよう
EC運用において決済方法の選定は、購入率を左右する重要なポイントです。
決済方法の種類が多様であれば、ユーザーの利便性は高まりますが、複数の決済方法を導入するとその分コストが膨らむため、ターゲット層や販売商品に合わせて取捨選択することが大切です。
つまり、コストや購入率をはじめとした売上への影響を比較し、どの決済方法を導入すべきかじっくり検討する必要があるでしょう。
とはいえ、決済方法ごとの利用率やターゲット層の属性などがわからず、社内判断が難しい場合もあるでしょう。そんなときは、ECコンサルに相談するのをおすすめします。
ECのミカタでは、ECサイトの運営をサポートしてくれるパートナー企業をご紹介しています。事前に、EC運営に精通した専門コンシェルジュが、事業内容や要望を丁寧にヒアリングするので、手間なく最適な会社に出会うことができますよ。
決済方法の選定をはじめ、ECサイトの運用で課題感や悩みを抱えている方は、ぜひご相談くださいね。