希望する決済手段がないと6割超が離脱、データが示す「後払い」の導入メリットとは?
EC業界の競合激化に伴い、決済手段の拡充の重要性が増している。ECサイトにおける決済手段のトップをひた走るのは「クレジットカード」だが、だからこそクレジットカード以外のさまざまな決済手段に対応しておくことが販売機会ロス削減のカギとなる。
欧米では「BNPL(Buy Now Pay Later)」として「後払い決済」の利用が急増しており、日本でもさらに後払い決済が普及するのではないかと見る向きもある。
そこで、ジャックス・ペイメント・ソリューションズが行ったアンケート調査をもとに、ECサイトにおける決済手段の重要性や後払い決済へのニーズを分析。さらに、後払い決済を導入しているEC事業者の声から、後払い決済導入のメリットを紐解く。
希望する決済手段がないと6割超が離脱
まずは、ECサイトにおける決済手段の実態を見てみよう。ジャックス・ペイメント・ソリューションズは2022年2月、直近3ヵ月以内にインターネットショップで商品を購入した15歳以上の男女1,000人を対象に、ネットショッピングに関する調査を行った。その結果、ネットショッピングにおける「決済手段」の重要性が浮き彫りになっている。
ECサイト利用時に希望の決済手段がない場合どうするかを聞いたところ、43.2%が「別のサイトで購入する」、20.2%が「買い物をやめる」と回答。実に63.4%が「希望する決済手段がない場合、そのECサイトでの買い物をやめる」と考えていることになる。
一方、「違う決済方法で支払う」と答えたのは36.1%にすぎず、希望する決済手段がないと6割以上の人が離脱する可能性が高いことが明らかになっている。したがって、ECサイト運営にあたっては、ユーザーが希望する幅広い決済手段を用意しておくことがカゴ落ち防止につながるといえる。
利用率トップの決済手段は「クレジットカード」
では、ネットショッピングユーザーにはどのような決済手段が求められているのだろうか。
ECサイトで利用したことのある決済手段を複数回答で尋ねたところ、「クレジットカード」がトップで79.0%を占めた。次いで「代金引換(29.2%)」「電子マネー決済(29.1%)」「前払い決済(コンビニ払いなど)(27.4%)」「後払い決済(コンビニ払いなど)(25.8%)」「銀行振込(郵便振替)(23.1%)」「キャリア決済(13.7%)」「ID決済(10.5%)と続いている。
初めて利用するECサイトでは「後払い」の利用が増加
これを初めて利用するECサイトでの決済手段に絞ると、少々異なる傾向が見えてくる。
初めて利用するECサイトにおける決済手段を聞いたところ、多い順に「クレジットカード(71.4%)」「前払い決済(コンビニ払いなど)(15.8%)」「後払い決済(コンビニ払いなど)(15.7%)」「代金引換(13.9%)」「電子マネー決済(12.7%)」「銀行振込(郵便振替)(7.8%)」「キャリア決済(5.4%)」「ID決済(5.2%)」となった。
クレジットカードの利用率がトップである点は変わらないものの、その割合は79.0%から71.4%にやや減少し、「後払い決済(コンビニ払いなど)」の順位が「代金引換」「電子マネー決済」を逆転。初めて利用するECサイトでは、後払い決済の利用率が相対的に高くなることがわかっている。
その背景として挙げられるのが、初めてのECサイトで商品を購入する際は「届いた商品を確認してから代金を支払いたい」「決済時に入力する個人情報は最小限にしたい」というニーズが高まることだ。このことから、後払い決済の導入は新規顧客獲得につながると考えられる。
35%が「後払いができるとECサイトの印象が良くなる」
クレジットカードやスマホ決済などが浸透する中でも、根強い支持を集めている後払い決済。実際のところ、消費者は後払い決済に対してどのような印象を持っているのだろうか。
後払いができるとECサイトの印象が良くなるか聞いたところ、24.5%が「良くなる」、10.7%が「とても良くなる」と回答。計35.2%が「後払いができるとECサイトの印象が良くなる」と考えていることがわかった。
前項の結果を年代別に見ると、後払いができるとECサイトの印象が良くなると回答した人は若年層に多く、15~19歳では49.4%(とても良くなる:24.1%、良くなる:25.3%)、20~29歳では36.2%(とても良くなる12.7%、良くなる:23.5%)にのぼっている。
利用経験なしでも3割以上に後払い決済の利用意向あり
さらに、後払い決済を使用したことがない人を対象に、ECサイト利用時に後払い決済を使ってみたいと思うか尋ねたところ、10.4%が「思う」、22.0%が「やや思う」と回答。計32.4%に後払い決済の利用意向があることがわかった。
後払い決済を使う理由、「安心」「便利」
後払い決済を使ってみたいと思う人にその理由を聞いたところ、以下のような回答が寄せられた。
・クレジットカードを持っていないから(15~19歳女性)
・先に支払ったのに商品が届かないトラブルが減る(20~29歳男性)
・お金がすぐ用意できないときに便利だから(30~39歳男性)
・先に商品が受け取れるので、安心して買い物できる(40~49歳女性)
・クレジットカードの登録が不要だから(50~59歳女性)
また、実際に後払い決済を利用している人にもその理由を尋ねたところ、以下のような声が挙がった。
・商品が届いてからのほうが安心だから(15~19歳男性)
・利便性が高い決済手段だから(30~39歳男性)
・後払いだと好きなときにコンビニで気軽に払えて、しかも決済前でも商品が届くから(40~49女性)
・クレジットカードの番号は教えたくない。悪用される不安があるから(60歳以上女性)
上記の回答から、後払いを利用する/利用したいと考える背景に、「クレジットカードを持っていない」「クレジットカード情報の登録に不安がある」「商品が届いてから支払いたい」といった消費者ニーズがあることがわかる。
後払い決済の導入率は26.6%
これまでの調査結果から、消費者の後払い決済へのニーズは根強いことが明らかになったが、後払い決済の導入はEC事業者にとってどのようなメリットがあるのだろうか。実際に後払い決済を導入している事業者の声も踏まえて見ていこう。
ジャックス・ペイメント・ソリューションズが行った、ECサイトの運営に関わっている1,000人を対象とした調査において、運営に携わっているECサイトで導入している決済手段を聞いたところ、多い順に「クレジットカード(88.5%)」「銀行振込(郵便振替)(52.8%)」「代金引換(47.6%)」「電子マネー決済(36.6%)」「前払い決済(コンビニ払いなど)(34.4%)」「後払い決済(コンビニ払いなど)(26.6%)」「ID決済(24.5%)」「キャリア決済(16.3%)」となった。
後払い決済の使用率、「5割以上」が16.9%
続いて、後払い決済を導入しているECサイトの運営者を対象に、当該ECサイトにおける後払い決済の使用率を尋ねたところ、「5割以上」と回答した事業者が16.9%存在。さらに、そのうち15.3%の事業者において、後払い決済の使用率が「9割以上」を占めていることが明らかになった。
後払い決済を導入しているECサイトは少数派であるものの、後払い決済対応のECサイトでは後払いが活用されていることがうかがえる。
後払い導入メリットは「業務効率化」と「顧客獲得」
後払い決済を導入しているEC事業者に「後払い決済を導入して良かったこと」を聞いたところ、「未回収金や督促業務がなくなった(33.5%)」「入金確認の手間が減った(27.8%)」「若年層の利用が増えた(27.4%)」が高い回答割合を占めた。
「高齢者の利用が増えた」という回答も15.8%を占めており、後払い決済の導入は、クレジットカードを持っていない層や、商品が届いたことを確認してから支払いたいという層の獲得につながっているとみられる。
また、後払い決済の導入は、消費者ニーズに応えることでカゴ落ちを防ぐのみならず、EC事業者側の督促業務・入金確認等の業務負荷の軽減にも寄与していることがわかる。大きく分けて「業務効率化」と「顧客獲得」の2つが、後払い決済の導入メリットといえそうだ。
若年層・高齢者の利用増を狙う事業者にメリット大
希望する決済手段がないと6割以上が離脱するなど、今回紹介した調査結果から、改めてECサイトにおける決済手段の重要性を実感した人も多いのではないだろうか。
その中でも、近年欧米を中心に「BNPL(Buy Now Pay Later)」として利用者が急増している後払い決済は、日本においてもクレジットカードを持っていない層や、ECサイトでのクレジットカード情報の入力に抵抗がある層、商品が届いたことを確認してから支払いたい層を中心に根強いニーズがある。
後払い決済を導入しているEC事業者が「若年層の利用が増えた」「高齢者の利用が増えた」ことをメリットとして挙げているように、特に若年層や高齢者の利用増を狙う事業者は、導入のメリットが大きいだろう。
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