EC事業者が今押さえておくべきこととは?「青祭-AOSAI-」レポート

ECのミカタ編集部

ECプラットフォームのネクストエンジンを運営するNE株式会社主催の大規模オンラインイベント、「青祭-AOSAI-2022」が2022年10月14日に開催された。

「青祭-AOSAI-」は、EC事業者が理想と現実のギャップを乗り越えるための一歩を踏み出すきっかけとなる、発見と学びの場を提供するイベント。今回は売上アップ、越境EC、物流、マーケティングなどをテーマに12のセッションを用意。各セッションではテーマに精通したスペシャリストが、ノウハウや課題解決に関する情報など、EC事業者が今押さえておくべきことをわかりやすく解説した。

ここでは、3つの注目コンテンツに焦点をあてて、「青祭-AOSAI-2022」の内容の一部を紹介する。

現役コンサル2人が語る、売上を伸ばすために明日からできること

現役コンサル2人が語る、売上を伸ばすために明日からできることNE株式会社コンサルティング事業マネージャー峰拓也氏(左)、株式会社WACUL代表取締役の垣内勇威氏(中央)

開会直後の注目セッション「コンサルのガチンコ勝負!? 売上を伸ばすために明日からできることをお伝えします」には、株式会社WACUL代表取締役で『デジタルマーケティングの定石』(日本実業出版社)などの著書で知られる垣内勇威氏が登場。NE株式会社コンサルティング事業マネージャー峰拓也氏とパネルディスカッションを行った。

日頃から「ズバズバはっきりと物を言う」垣内氏のファンという峰氏。EC事業者が学べる内容が多く書かれた垣内氏の著書『デジタルマーケティングの定石』の内容を踏まえ、「事業成長のためのKPI設定」と「ECマーケティング業務はなぜ増えるのか」をテーマに意見を交わした。

「直の売上を増やすことがECのゴールになっている会社が多いと思うが、その必要がないEC事業部もある」と語る垣内氏。実店舗がある場合、ECは顧客が商品を買う後押しや、店舗では伝えられなかったコンセプトを伝えるカタログ的な機能を担っていることが多い。

「メーカーのECサイトはAmazonよりも売価が高いことがよくあり、ECの売上で直球勝負をすると(必ずしも)うまくいかないので、店舗送客や(購買の)後押しとして運用されるべきケースは多い。顧客が店舗に足を運ぶのは週1回、月1回だけど、ECサイトやショッピングアプリに入っていれば毎日接点を持てるので、商品を買う確率が上がります。これが典型的な来店誘導タイプのKPIになりますね」(垣内氏)

一見さんを獲得することがミッションに

一見さんを獲得することがミッションに株式会社WACUL代表取締役 垣内勇威氏

実店舗がないECだけの事業者のKPI設定については「多くのECサイトが思考停止してROAS(Return On Advertising Spend:広告の費用対効果)だけ見ていたり、購入数、売上だけを見ていたりするケースがよくありますが、それだと不十分。新規会員獲得、新規購入をKPIに設定する、つまり一見さんを獲得することをミッションにすべき」と垣内氏。

「いかに会員数を獲得するかの次は、いかにリピートさせるかがポイント。普段から少量を買っている人にアップセールスするのは簡単だが、滅多に買わない人は購入してくれる確率が低い。つまり、ちゃんと買い続けてくれる人をいかに増やすか、これが次のKPIですね。その後、本当にロイヤルなお客様に高額なものを買ってもらう、ファンマーケティングに近い施策を行い、新規、定期購入、粗利拡大を分けて運用していく」(垣内氏)

峰氏も、店舗全体のCVR(コンバージョン率)が低下することが一概に悪いことだけではないにもかかわらず、EC事業者の多くが店舗全体のアクセス、CVR、客単価の3つの数字をKPIに置くことは、本質からずれてしまいかねないと警告。1つの商品がメディアに出てアクセスが増加するだけで、店舗全体のCVRが一気に下がってしまうこともある。「リピート売上割合も大きければいいと考えられがちだが、実は新規の購買が下がっているだけということもあるので、店舗全体のアクセス、CVR、客単価をKPIに設定するのはおすすめできない」と話す。

フェーズ分けで組織を作る、KPIで組織を分ける

フェーズ分けで組織を作る、KPIで組織を分ける垣内氏の著書『デジタルマーケティングの定石』を手にする峰氏

ECマーケティング業務に携わる人のほとんどが常日頃から忙しそうに見える、という現役コンサルの両氏。業務改善するには「EC事業者は一般的に担当者の(受け持ち)領域が広いので、会議を減らす、やめる、メルマガも読者数が少ないなら止めるという判断を下すことも必要」(峰氏)、「短期的目標のもので必要ない仕事は止める」(垣内氏)とそれぞれ語った。その上で、垣内氏は「施策単位で組織を作っているから無駄な仕事が増える。SEOチーム、広告チームと分けてしまうと、それしか仕事をしなくなるので、『KPI単位』でチームを作って仕事をするのが正しい。例えば、新規チームだったら、あらゆることができるので、フェーズにもよるが、『伸びしろ』が大きいところから仕事をする。フェーズ分けで組織を作り、KPIで組織を分けるのがいい」と指摘。

峰氏も「マーケターはアクセスやCVR、客単価の下落などの数字の動きにとらわれすぎていて、解決するために問題点を探して、その対策をしようと考える人が多い。問題点よりも『伸びしろ』を意識の軸に置くだけで施策やアクションの優先度が変わってくるはず。悪いところばかり見ていくと気も滅入りますからね」と語った。

ディスカッション後は垣内氏が4社のECサイトを診断する「ECライブ診断」を実施。4社のサイトの長所短所を割り出し、垣内氏と峰氏がそれぞれ改善のためのヒントを開陳した。

辛口レビューから商品開発につなげる対応方法とは

辛口レビューから商品開発につなげる対応方法とはHamee株式会社のリレーションシップマネジメント部マネージャー 米山満彦氏

セクションBの中盤には、Hamee株式会社のリレーションシップマネジメント部マネージャーである米山満彦氏が登場。同社にてカスタマーサポート、商品の品質管理の現場監督を担当する米山氏が、辛口レビューから商品開発につなげる対応方法を語った。

低評価レビューは注目される

「レビューのチェックは基本的にすべてを対象に行う」と話す米山氏。レビュー対応をすることにより、2種類の改善があったという。「1つ目はレビュー単体の改善。元々低かった点数がお客様に寄りそった対応をすることにより、高い点数に修正されたり、お礼やコメントを追記してくださったりすることが多くなりました。2つ目はお客様から指摘された商品の不具合を改善することで、レビューの総合評価の改善にもつながりました」

上記2つの改善以外に、思わぬ副次的な効用もあったという。「『低評価レビューは注目される』という特徴があり、そこから得られる効果がありました。例を出すと、配送の日付指定をしたかったというお客様から低評価レビューをいただきましたが、そもそも注文された商品の配送方法が日付指定に対応していなかったのです。これは単純にお客様の勘違いだったわけで、購入上わからなかったことに対する低評価でした。ただ、ここで正しいサービス内容を返信してあげることで、この低評価レビューを見た他のお客様に対しても訂正内容を周知することができました」

各モールでのレビューの特徴は

各モールでのレビューの特徴はHamee社のレビュー対応フロー

①レビューをチェック
ECモールごとの優先度があり、Hameeの中で最も規模が大きく、レビュー内容が正確な楽天市場店を最初に確認。ヤフーのPayPayモールは高評価が多く、ハッキリした意見が少ない。また、Amazonは厳しい意見が入りやすいという傾向がある。この確認作業をデイリーの業務に組み込み、一日の中で決まった時間に対応する形にして確認漏れを防止した。

返信の順番も投稿者以外へのメッセージに

返信の順番も投稿者以外へのメッセージに

②お客様への対応
返品の場合は個人情報のやりとりが発生するので、連絡は基本メールで行うが、並行してレビューへの返信も行う。これは実際にお客様本人に対応していても、レビューを見た第三者からは放置されているように見えてしまうため。その際に大事にしていることは返信の順番。以前、高評価のレビューから対応していたら、他のお客様に低評価への返信を避けていると勘違いされてしまった。以降は、同時期に投稿されたレビューは、時間はかかっても低評価のレビューから対応するようになった。つまり、内容だけでなく返信の順番も投稿者以外へのメッセージになる。

高評価レビューには商品への有用な意見が多い

高評価レビューには商品への有用な意見が多いHamee社の社内連携図

③社内担当部門への連携
お客様からいただいた意見を、顧客サポート部門から品質サポート部門、そして製造管理部門へつなげる専門のシートを用意。このシートは担当者が書き方に迷わないでスピーディに処理できるスタイルにしている。この際に注意すべきは、高評価レビューには商品への有用な意見が多いということ。実は高評価レビューのほうが製品への意見が正確で、なおかつ(商品への)希望が多くあった。低評価のレビューは、届くのが遅かったなど(商品そのものよりも)サービスへの不満が多い。商品改善につなげるには、高評価のレビューをくまなくチェックすることが必要となる。

余裕を持ってレビュー対応を

米山氏は、顧客対応・品質管理の工程の改善には、余裕を持ってレビュー対応をすることを推奨する。「送り先住所のチェック工程を自動化するような、ひと工夫して作業時間を削減することが重要。つまり、出来るだけ無駄を省くことで余裕が生まれる」と話す。一度は悪い印象を持ったお客様も、その後の対応でファンになることがあるので「すべてのレビューを見ることが何よりも大切」と強調し、セッションを締めくくった。

北の達人・木下社長が語るマーケティングの「考え方」

北の達人・木下社長が語るマーケティングの「考え方」北の達人コーポレーション代表取締役社長 木下勝寿氏

3つ目は株式会社北の達人コーポレーション(以下、北の達人)の代表取締役社長である木下勝寿氏が登場。一代で時価総額1000億円企業に育て上げた国内有数の経営者であり、トップマーケターでもある木下氏が、NE株式会社のコンサルタント宮本篤氏、堀内大輔氏とともに北の達人の成長率や商品力について語った。

代理店依存から自社運用に変えて成長

健康食品・化粧品の通信販売を行う北の達人は、木下氏が北海道に移住し、コネもツテも一切ない状況から創業した会社。2002年の創業から売上、利益ともに伸ばし続け、22年には東京証券取引所上場企業(プライム市場)になった同社は、2017〜18年で売上が急激に伸びていったという。その時の施策について「様々な要素が絡み合っているが、新規の集客を代理店依存から自社運用に変えたのが大きい」と話す。

「例えば化粧品の場合、eコマース自体が成長市場だったので代理店は多くあった。シミ対策用、美白対策用クリームなど、代理店では数多くの商品を扱っているので、どうしてもひとまとめで『化粧品』として運用する。これだと商品一つ一つの良さが伝わりにくく、競合との差別化が図りにくかった。代理店の広告運用は効率一辺倒だったため、自分たちでもう一回やっていこうと決め、商品ごとに戦略を立てて、この商品はこういう商品でこのターゲットに刺さるみたいなことを考えて、きっちりクリエイティブを作ることで、売上が伸びていきました」

よい商品を生み出す基準は

よい商品を生み出す基準はNE株式会社のコンサルタント宮本篤氏(左上)、堀内大輔氏(左下)

「びっくりするほど良い商品ができた時にしか発売しない」が開発ポリシーの北の達人。元々は北海道の特産品であるメロンを売っていたが、同じく特産品の甜菜(てんさい)からできるオリゴ糖を売り始めると顧客からの反応が良く、それが自社製品の開発のきっかけとなった。その後、信頼性の高い健康食品を目指し、試作を開始。商品の品質を重視するため、開発は2〜3年で1商品となっている。

「商品力は『品質と市場性』の2つあると思います。どれだけ市場性があっても、品質が悪くては商品力は上がらない。我々は品質に関して、自信を持って薦められるか、お客様が満足してリピートしてくれるかを重視しており、社内の製造工程に設けた約800のチェック項目を通過しないと商品化しません。商品化まで1、2年かかるのは普通で、完全に品質優先。一方でどんなにいい商品を作っても市場性がなければ、見込みがないとも思っています」(木下氏)

木下氏は、品質は「リピート率」に反映されるといい、品質が悪ければリピート率が低くなり自転車操業になるともいう。「1回買って終わりではなく、購入し続けていただけるものになるまで品質をブラッシュアップしていくことが重要です」

今後の展望は

Webマーケティングを駆使し急成長を遂げた同社だけに、「あくまで手段」としながらも「Webマーケティングを使ってグローバルメーカーになることを目指したい」と木下氏。「日本発のグローバルメーカーはリアルの流通から始めた会社が多い。我々はインターネットから始めた企業としての、日本初のグローバルメーカーになりたい。そのために日本でトップのWebマーケティング集団になりたいし、頑張ればなれると思っています。是非、仲間に加わってくれる方を募集しています」と語り、セッションを締めくくった。

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