配送ドライバーの52.4%が1日あたり12時間以上労働[207調査]

ECのミカタ編集部

207株式会社(本社・東京都目黒区、代表取締役・高柳慎也、以下「207」または「同社」)は、同社が提供する、無料で使える配達効率化アプリ「TODOCUサポーター」の利用者を対象とした配送員の就労状況の実態調査を行い、物流現場の労働状況についての結果を公開した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

▶調査期間:2022年12月12日(月)〜12月25日(日)
▶調査機関:自社調査
▶調査対象:TODOCUサポーターアプリを利用中の配送ドライバー
▶有効回答数:361
▶調査方法:webフォームによるアンケート調査

副業で配送を行う人が多数

副業で配送を行う人が多数

配送業務を本業とするか副業とするかについて調査したところ、本業で働く人に対して副業で働くのは16.1%という結果だった。副業として配送を行う人が運ぶ荷物は、EC荷物(BtoB)、宅配(CtoC)、フードデリバリー、スポット・チャーター便といったものが挙がった。

同社は、近年、フードデリバリーや荷物を送りたい人と配送する人を繋ぐプラットフォームによって単発の仕事を受ける「ギグワーカー」と呼ばれる働き方にも注目が集まっており、空いた時間を有効活用して副業として活躍するドライバーも増加傾向にあると分析。その上で労働力不足を補う一手になれる面に期待も寄せられているが、これには配送品質の低下も懸念されるとしている。

52.4%が1日あたり12時間以上労働

52.4%が1日あたり12時間以上労働

週での勤務日数について調査を行なったところ、週6日で勤務すると回答した人が半数を占めた。さらに週6日勤務している配送員が1日にどのくらいの時間勤務しているか注目すると、半数以上の52.4%もの人が12時間以上労働している現状がわかった。

同社は、時間外労働時間が年間960時間を上限とする法改正が適用された後は、現在雇用されているドライバーの稼働が制限されることになり、その穴埋めとして個人事業主ドライバーへの負担はさらに増加するものではないかと分析している。

増え続ける荷物とドライバーの高齢化

増え続ける荷物とドライバーの高齢化

配送会社は通常、一定数の人材を確保しておくことで365日荷物の配送を可能とする体制をとっており、さらに教育・研修によって質の高いプロの配送を行なっている。しかし、物流業界の仕事はいわゆる3K「きつい・給料安い・帰れない」といったイメージを持たれやすく、人材の確保は容易ではない。

荷物数は、多様化するライフスタイルとともに電子商取引(EC)が急速に拡大し、年々増加傾向にあり、2021年までの直近5年では取扱個数が約9.3億個増加し、2021年度の取り扱いは約49.5億個と、5割以上増加と急速な伸びを示している。

その一方で、日本の生産年齢人口は中長期的に減少傾向にあり、 宅配ドライバーの高齢化が進んでいる現状がある。現状、配送業務は長い労働時間や業務負荷と比較的体力を必要とするため、労働環境の厳しさから65歳以上のドライバーが働き続けることは難しく、ドライバー人材不足は今後急速に深刻化する見込みだと同社は分析している。

サマリー

ワークライフバランスの重視から労働時間の削減を目指して働き方改革を行う企業が増えているが、業務特性上、長時間労働の傾向がある物流業界でも労働時間削減を目指した働き方改革関連法の施行時期が迫っている。

2024年4月1日以降、働き方改革関連法により自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限される。正社員・契約社員として働くドライバーの労働環境が改善される反面、時間外労働の上限規制による運送物流会社の売上やドライバーの収入減少、労働力不足に起因する「2024年問題」が指摘されている。

上限規制により、現在雇用者として活躍するドライバーの労働環境が改善することが期待される一方で、労働時間が削られ、朝から夜の時間帯指定や繁忙期の配達に対応するためには、個人事業主として稼働するドライバーへの委託が増加するのではないかと予想される。個人事業主の場合は労働時間の管理が不要なため、中には長時間労働を続ける事業者もいると言われており、軽貨物配送全体の慢性的な長時間労働や人材不足といった点は引き続き課題となっている。

荷物量が増加する一方で物流を支える配送ドライバーの人手不足は深刻であり、現状ペースで宅配需要の増加が続けば、“運ぶモノはあっても運ぶ人がいない”という需給インバランスが早晩発生し、私たちが当たり前のように利用している「配送無料」や「当日・翌日配送」といった対応は、"当たり前" ではなくなる日も近いのかもしれない。

また年々増え続ける荷物に対応するためには、ドライバーの人材確保をしなくてはならないが、運賃の高騰や配送の品質低下は避けたいところだ。そのためには、テクノロジーによる配送業務の効率化や、賃金・勤務時間といった労働環境の改善、未経験ドライバーや女性、高齢者等あらゆる人材が活躍できるよう、業界全体のさらなる健全化と対応が求められそうだ。

ECのミカタ通信23号はこちらから


記者プロフィール

ECのミカタ編集部

ECのミカタ編集部。
素敵なJ-POP流れるオフィスにタイピング音をひたすら響かせる。
日々、EC業界に貢献すべく勉強と努力を惜しまないアツいライターや記者が集う場所。

ECのミカタ編集部 の執筆記事