楽天市場の成長のカギ握る楽天モバイル 新春CFで三木谷氏

ECのミカタ編集部

2023年1月26日、多くのEC事業者が見守る中、「楽天新春カンファレンス2023」で代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏による講演が行われた

楽天グループ株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長兼社長:三木谷浩史)が2023年1月26日に「楽天新春カンファレンス2023」を開催。同カンファレンスは楽天市場の店舗事業者向けに、楽天市場の戦略を共有し、店舗運営に役立つ学びの提供や店舗間の交流を深めることを目的としたもの。会の冒頭では代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏による講演が行われ、楽天市場の発展における楽天モバイル、楽天エコシステム(経済圏)の成長について触れられた。

モバイルユーザーの流入によりEC流通総額49%増を実現

楽天市場の出店者にとって、楽天モバイルと楽天市場の相関関係は気になるところだ。同じグループ内の別事業ではあるが、楽天モバイルの成長により、楽天エコシステム(経済圏/※1)に新たな巨大プラットフォームを構築し、楽天市場へ送客することでグループ全体の流通総額の増加を目指しているからだ。

2020年4月に正式にサービスを開始したモバイル向けの通信サービス楽天モバイルは、「携帯ネットワークの技術革新」を掲げ、新技術を投入し安価なサービス提供に努めてきた。

楽天グループ株式会社の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏によると「楽天モバイルが楽天市場の購買額増加に貢献している」という。同社によれば、1年以上の楽天モバイル利用顧客による2022年の1年間のEC流通総額は、契約前と比べ49%増と大きく拡大しているという。

こうした追い風を受け、同社によれば2022年の楽天市場の国内EC流通総額は、前年比11.2%増の5.6兆円に成長。2023年1月1日の楽天市場の利用は、89.3%がモバイル端末経由となっており、ECにおけるモバイル端末の存在の大きさが明らかになった。


※1:「楽天エコシステム(経済圏)」とは楽天独自の経済圏のこと。Eコマースをはじめ、国内外の多岐にわたる分野で70以上のサービスを提供する同社が、こうしたサービス各種を楽天会員を中心としたメンバーシップを軸に有機的に結び付けることで形成している。

携帯市場の民主化へ大容量・低価格・高品質なモバイル通信を提供

モバイル端末に目を向けると、モバイル経由でのデータ通信量の推移は、5Gの普及とともに大容量のニーズが増加。こうした大容量通信が当たり前となる「100GB時代」の到来に備え、誰もがデータ容量を気にせずに楽しめるスマホ市場の開拓が急がれると三木谷氏は話す。

一方、「携帯市場の民主化」をミッションに掲げる楽天モバイルは、あらゆる機器がワイヤレスでつながる5G・IoT時代に求められる、「大容量」「低価格」「高品質」なモバイル社会の実現を目指し、仮想化・自動化・OpenRANという技術革新に取り組んできた。

具体的には、これまでのモバイル通信が巨大なハードウェアを活用することで運用してきたのに対し、楽天モバイルではほとんどのシステムをクラウド化。専門的なハードウェアから、汎用的なハードウェアへ移行することで、設備投資や運用費といったコストを大幅に削減し、そのコスト削減の恩恵をユーザーに積極的に還元しているという。

楽天モバイルの料金プランは20GB以上はどれだけ使っても2980円と、他キャリアと比較して圧倒的にリーズナブルだ。実際に楽天モバイル契約後のユーザーの1カ月の利用データ量は18.4GBで、これは携帯3キャリア平均(9.3GB)の約2倍。これは低価格、高品質な通信サービスがあってこそこそだろう。4G回線エリアも2022年10月には人口カバー率98.0%に到達しており、今後は衛星ネットワークサービスを実現することで、日本全国どこにいても回線につながる環境の構築を目指す。

多くのEC事業者が見守る中、三木谷氏は楽天エコシステムにおける楽天モバイルの重要性を話した

エコシステムの基軸である楽天モバイルの成長を目指す

そしてこの安定的な楽天モバイルの通信サービスが、楽天エコシステム全体の流通を拡大させているという。

同社によれば、2022年のポイント発行数は約6,200億でポイント失効率は約2%。貯めたポイントを利用するユーザーが多く、それだけ楽天エコシステムに還元しているユーザーが多いということにもなる。これを楽天モバイルユーザーに絞ってみると、楽天サービスの利用数は契約前と比べて平均で+2.58サービス多く、楽天市場への創客効果も認められる。

三木谷氏は、楽天モバイルに関し、2000万人の加入を目標に掲げており、これにより楽天市場での累計流通総額2.5兆円規模増加の効果が期待できるという。モバイルユーザーの利用拡大の施策として、2023年1月30日から法人プランを開始。通話かけ放題で5Gも利用可能だ。

「楽天エコシステムの成長が楽天市場の店舗の発展に貢献する」と三木谷氏は強調。楽天モバイルユーザーの拡大は、楽天ブランドのロイヤリティの上昇につながるだけでなく、ユーザーの利用データが蓄積し、競合に対しての新たな戦略につなげていく。「世界にまれに見るEコマースの実現に向け、楽天モバイルを基軸とした投資を続けていく」と語った。

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